あなたは朝と夜、どのタイミングでランニングをするのが向いているのか。

朝に走る場合、夜走る場合では、それぞれのメリット・デメリットがあるという。

フィジカルトレーナーの中野ジェームズ修一さんの著書『ミドルエイジからの“がんばりすぎない”ランニング』(扶桑社)から、“朝ラン”で得られるものと“夜ラン”で得られるものについて、一部抜粋・再編集して紹介する。

“朝ラン”は睡眠の質が高まる

早起きが苦にならない、朝のほうが運動する時間をとりやすいという人であれば、朝のランニングにはメリットが多いのでとてもおすすめです。

まず、朝起きて日の光を浴びると、網膜から入った光の刺激により体内時計がリセットされ、14〜16時間ほど経過すると脳内でメラトニンが増加します。

メラトニンが増えると、眠りにふさわしい体内環境が整い、自然と眠気を感じるようになります。つまり、朝のランニングやウォーキングを習慣化すると、生活リズムが整うと同時に、睡眠の質も高まるのです。

早起きして運動すると心身がオンの状態になる(画像:イメージ)
早起きして運動すると心身がオンの状態になる(画像:イメージ)
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また早起きして有酸素運動をすることで、交感神経が活発になり、体が活動モードに切り替わります。心身がオンの状態になるので、仕事や家事をスムーズに始めることができるはずです。

午前中、ボーッとしやすい人や集中力が高まらないという人は、朝の運動がスイッチを入れる助けになってくれるでしょう。

ただし、起床直後は、体内の水分がドロドロになっているので、水分補給はマストです。

また、筋肉や関節が硬くなっているうえ、体温も低めなので、ウォーミングアップの時間を十分にとるように心がけてください。

飲酒後のランニングは避けること

夕食はたっぷり食べたい、夕食後のデザートが何よりの楽しみという人は、血糖値を下げるため、夕食後にランニングをするといいでしょう。

スイーツは糖質をたっぷり含んだものが多いですが、ランニングをすることで余分な糖が脂肪になることを予防できます。

一方で、晩酌をする人は夕食後のランニングは絶対に避けてください。

「汗をかいてお酒をぬく」という人がいますが、アルコールの分解のほとんどは肝臓で行われており、汗をかくことでアルコールが体内から排出されることはありません。

むしろ飲酒後に運動をすることで筋肉に血液が集まってしまい、肝臓への血流も減り、アルコールの分解は滞ってしまいます。

飲酒後の運動は命に関わることもあるため避けること(画像:イメージ)
飲酒後の運動は命に関わることもあるため避けること(画像:イメージ)

また、アルコールには利尿作用があり、摂取した以上の水分を尿として排出してしまいます。

アルコールの分解に水は欠かせないものなのですが、そのうえ運動をして汗をかいたら、体内の水分不足は深刻なものになります。

また、飲酒をすると心拍数が上がります。ランニングをすれば、さらに心拍数が上がり、血圧も上昇するため、心臓への負担がかなり大きくなり、酔いの回りも早くなります。

最悪の場合、脳卒中や心不全といった命に関わる病につながりますし、酔って走れば転倒事故も起こりやすくなります。

深酒をしたときは、翌朝のランニングも控えましょう。お酒が大好きという人は、お昼前後に走るタイミングを設定するのがおすすめです。

“寝つきにくく”なったら朝・昼ランに

長時間のデスクワークや立ち仕事で、仕事を終えたころには脚がむくんでくる。

そんな人は、仕事終わりにランニングをすると、スッキリして眠りやすくなるでしょう。

脚がむくんで重たくなっていると、動くこと自体が億劫になってしまいがちですが、その原因は静脈還流(じょうみゃくかんりゅう・心臓から出た血液が動脈を通って体中に行き渡った後に、静脈を通って心臓に戻ること)が、スムーズに行われていないから。

だからこそがんばって運動をして、血流を促すと違いがでるのです。

夜ランは向き不向きがあるため適性の見極めを(画像:イメージ)
夜ランは向き不向きがあるため適性の見極めを(画像:イメージ)

仕事を終えて一日の締めくくりとして夜に走るのは、オン・オフの切り替えにも有効ですし、デジタルデトックスにもつながります。

やるべきことを終えてからのほうが気持ちよく運動に没頭できるという人は、夜のランニングが適しているかと思います。

もちろん、夜のランニングにも注意点はあります。運動には、自律神経のバランスを整える効果があります。

自律神経には体を活動モードにする交感神経と、休息モードにする副交感神経があり、状況に応じてどちらかが優位になり体の働きをコントロールしています。

通常は朝起きると交感神経が優位になって活動モードとなり、夜になると副交感神経が優位になることで眠りにつきやすくなります。

ところが自律神経のバランスが崩れると、夜になっても副交感神経が優位にならず、なかなか寝つけなくなってしまいます。

運動には自律神経のバランスを整えたり、ストレスを軽減する効果が期待できる一方で、運動中や直後は交感神経が活発になるため、夜にランニングをすると寝つけなくなってしまう人がいるのです。

夜に走ってみて、自分がそのタイプに当てはまると感じた人は、朝や昼のランニングに切り替えましょう。

『ミドルエイジからの“がんばりすぎない”ランニング』(扶桑社)

中野ジェームズ修一
米国スポーツ医学会認定運動生理学士、スポーツモチベーション最高指導責任者、フィジカルトレーナー協会(PTI)代表理事

中野ジェームズ修一
中野ジェームズ修一

米国スポーツ医学会認定運動生理学士、スポーツモチベーション最高技術責任者、フィジカルトレーナー協会(PTI)代表理事。心理学や精神分析学を基にした理論で、日本では数少ないメンタルとフィジカルの両面を指導できるトレーナーとして活躍している。マラソンの神野大地選手の個人トレーナーをはじめ、数多くのオリンピック出場者を指導する。
そして2014年からは青山学院大学駅伝チームのフィジカル強化も担当。自身が技術責任者を務める東京・神楽坂にある会員制パーソナルトレーニング施設「CLUB100」は、無理なく楽しく運動を続けられる施設として、幅広い層から支持されている。ベストセラー書および講演多数。