ジャニーズ事務所は2日、故ジャニー喜多川氏による性加害問題について2度目の会見に臨んだ。出席者は東山紀之社長(57)と、関連会社「ジャニーズアイランド」の井ノ原快彦社長(47)と弁護士2人。会見のポイントをまとめる。
「ジャニーズ事務所を解体」新会社は「SMILE-UP.」
東山紀之社長は社名を10月17日付けで変更すると表明した。新たな社名は「SMILE-UP.」。東山社長は「ジャニーズ事務所を解体する」と話し、タレントのマネジメントと育成事業から撤退し、「SMILE-UP.」は被害者への補償に専念すると宣言した。
この記事の画像(7枚)また藤島ジュリー景子前社長は文書で、現在の会社に100%株主として残り、被害者への補償とタレントの心のケアに専念し、それ以外の業務には一切あたらないと述べた。
会見に出席しなかった理由については、母親であり事務所の幹部でもあったメリー喜多川氏について話す際に、「過呼吸にならずに話す自信が無い」と説明した。
藤島前社長は、「母メリーは私が従順なときは優しいですが、少しでも違う意見を言うと気が狂ったように怒り叩き潰すようなことを平気でする人でした。20代のときから私はときどき過呼吸になり、倒れてしまうようになった」と記した。
さらに、メリー氏の生前、メリー氏からの命令で取締役にされていたが、経営に関する権限はなく、新社屋が完成してから一度もジャニーズ事務所には足を踏み入れた事がなかったという。改革をしようとしたり、社員の環境を整えようとしたことで、メリー氏を怒らせたことが発端としていて、メリー氏との関係が悪化していたことを明らかにした。
また心療内科医から「メリーさんはライオンであなたはシマウマだからこの状態から逃げるしかない」と言われていたという。
その上で、「叔父と母が作った物を閉じるのが加害者の親族である私の償い」とし決意を綴った。
現在100%保有しているジャニーズ事務所の株式については「有利な条件での買収も持ちかけられたが、法を超えた補償を実現するために株を保有し事務所に残る」としている。
「補償が完了した際には、代表権を返上し、納めるべき税金を支払い、会社を終わらせる」と記し、廃業すると明言した。会社を終わらせる事については、「ジャニー喜多川の痕跡をこの世から一切無くしたい」と強い言葉で表現した。
新会社は「エージェント会社」社名は公募
東山社長は、ジャニー事務所から社名変更する「SMILE-UP.」が被害者の補償などを担う一方で、タレントのマネージメントや育成を行う新たな会社を1カ月以内に設立すると発表した。
新社名は「公募で決める」としていたが、その選考は新会社に参加するタレントとの対話で決めるという。
東山社長は公募する新会社の社名の選考方法について、所属タレントと対話して、ふさわしい名称を検討していきたいと述べた。
また新会社については、「希望するタレント個人や、グループが設立する会社と個別で契約をむすぶエージェント(※代理人)会社といたします」と述べた。具体的には「すべてを会社に委ねたり縛られたりすることなく、タレント自らが方向性に応じて、自分自身で活躍の場を求めていくことになる。新会社は彼らとエージェント契約を締結し、お互いの知恵を出し合いながらタレント活動を最大限サポートしていく」と説明した。
また若手タレントについては、代理人契約だけでなく、新会社に所属することもできるという。
またこの新会社の副社長には井ノ原快彦氏が就任する。井ノ原氏は「エージェント会社に来てくれる人がいるなら、彼らを担当する新会社の副社長としてやっていく」と述べた。自身の芸能活動については、「タレントをやめるつもりはありません」と話した。
井ノ原快彦氏は新会社に参加するタレントは現時点で何人いるのか聞かれたが、「エージェント契約のタレントは、ファンクラブのファンに先にお伝えしたい。のちのち発表したい」と答えた。
また事務所に対して退所の意思を示しているタレントが何人くらいいるのか聞かれると、「聞いておりません」と答えたが、「この発表を聞いて(タレント本人が)どう思うのかは自由。見守って頂ければ」と述べた。
関ジャニ∞などグループ名変更へ
東山社長は、関ジャニ∞など「ジャニーズ」やそれに類似する表現が入っているグループ名について聞かれ「沢山のファンの方に愛された名前。本人たちも葛藤はあると思う。やはり変えていくというのは聞いております。本人たちも苦渋の決断をした」と述べ、「全てジャニーズと付く物はなくなります」と強調した。
また「ジャニーズ エンタテイメント」など「ジャニーズ」やそれに類似する表現が入っている関連企業名についても「全て変わる」と明言した。
補償を求めたのは325人
また会見では、被害補償の受付窓口には478人から申し出があり、325人が補償を求めている事も明らかにされた。478人の中には、意見を申し入れしたいファンなども含まれているという。実際に補償を求めているのは325人であり、そのうち約150人についてはジャニーズ事務所に在籍していた事が確認されているという。
東山社長は「11月から補償をスタートさせていきたい。今後は臨床心理士などにご協力いただき、寄り添う形をきちっと作っていきたい」と述べている。
被害者は「廃業は正直驚き」
ジャニー喜多川元社長から性加害を受けたとするジャニーズ性加害問題当事者の会の副代表・石丸志門さんは、会見を受け、ジャニーズ事務所が廃業するということに対し「廃業するという判断は正直驚きました。そこまで考えていたんだなというのは、驚きましたね。廃業するという前提で話が進んでいるなら、補償救済について少し希望が持てる」と述べた。
一方、補償について具体的な内容出ていないことを聞かれると、「時効の点を考慮しないというだけで、補償額については法の下に検討すると聞こえました。はたしてそれで被害者が納得するのか。もちろん金額の問題ではないけど、大きな懸念の部分ではあります」とも述べた。
東山社長が3人の被害者と対話をしたということに関しては、「会っていないよりはいいと思うんですが、少なくとも当事者の会は誰もそういう機会はない。1日も早く当事者の会のメンバーも会っていただきたいと思うところです」と希望を述べた。