「2.3%」。この数字は、現在法律で定められている常勤労働者のうちの障がい者の雇用率だ。2024年度から「2.5%」に引き上げられることが決まっている。これに対し、宮城県内での雇用率は「2.21%」と全国38位と対応は遅れている。そんな宮城県である対策が始まった。
この記事の画像(10枚)宮城の雇用率「全国38位」
9月19日、仙台市青葉区で開かれた「障がい者就職面接会」。宮城県内の企業50社が参加し、就職を希望する障がい者の面接を行った。参加者からは「仕事をどこでどう探せばいいのか悩んでいる」といった声が聞かれた。
宮城労働局によると、宮城県内の企業で働く障がい者は2022年の時点で約6500人で13年連続で増加した。一方で雇用率は「2.21%」と、法定雇用率を下回る状況が続いている。
さらにこの数字は、全国38位。低い水準にあるのが現状だ。
そもそも、障がい者雇用率の算定は、雇用されている場所でなく雇用する企業の本社がある都道府県にカウントされる。全国的な企業が多い仙台市がある宮城のような都道府県は、雇用率が低い傾向があると言える。
こういった状況の中で、県が今回立ち上げたのが、雇用する側の企業や団体を、自治体や支援機関とつなぐネットワークだ。企業側が、障がい者雇用の実情を知る機会が少なく、「障がい者の働き方についてイメージできていない」ケースが多いのだという。
第一弾として8月に行われたのが、県南部の亘理町と連携した勉強会。地元企業などを招き、障がいがある人を雇用するときのポイントや悩みを共有することで、雇用促進につなげるのが狙いだ。
実際に勉強会では、「障がい者にどんな仕事を任せるか」といった声が挙がる。
清掃や運搬といった補助的な仕事をするスタッフを雇う中で、障がいがあるがゆえに、仕事を適度にステップアップさせられていない現状があるのだという。
任せられる仕事が限られる中で、雇用率を上げなければいけない…。一見矛盾しかねない課題が浮き彫りになっていた。
やりがいのある仕事
取材班は、県の障がい者雇用の現在地を知るべく、県内の社会福祉法人を訪ねた。この社会福祉法人が運営する老人ホームでは、障がいがある人を長く雇用している実績があるという。
取材に応じてくれたのは、視覚に障がいがあるという50代の男性。5年前からあん摩マッサージ指圧師として勤務している。
1年かけて手探りで構造を覚えた建物内は一人で移動できるが、狭い空間では誰かの誘導が必要。今では週に5日、施術を行っているが、20年前に病気で失明したばかりの頃は自宅に引きこもっていたという。
「『見えない人』に仕事ないと思っていた。障がい者が会社に出れば、迷惑かけるんじゃないか。きょうも迷惑かけるんじゃないかと、仕事に来るときに思ったりすると、大丈夫かな…と」
(老人ホームであん摩マッサージ指圧師として働く男性)
男性の上司に話を聞くと、男性と一緒に働くうえで最初にしたことは、「男性を理解すること」。どんな助けが必要なのか、まずは必要以上にサポートしたうえで、その後、本人と接していく中で、「サポートしすぎ」な部分を取り除いていったのだという。
実際、男性は仕事を続けてこられた理由について「やりがいのある仕事」と同僚の「ほどよい配慮」のおかげだと話してくれた。
障がい者も生き生きと働ける社会へ。企業や自治体だけでなく多くの人の知恵が必要となっている。
(仙台放送)