9月24日、富山・立山町芦峅寺では立山信仰にまつわる行事「布橋灌頂会(ぬのばしかんじょうえ)」が、6年ぶりに例年並みの規模で行われた。
死後の世界を“疑似体験”
霊山・立山に登れば極楽往生できると信じられていた時代、女性は山に入ることが禁じられていたため、代わりとして行われていたのがこの儀式だ。富山テレビの矢野美沙アナウンサーも女人衆の1人として、極楽往生を願って「布橋」を渡った。

矢野美沙アナウンサー:
極楽往生を願う儀式、布橋灌頂会に今回初めて参加します。早速着付けていただいたんですけれども、着物が左前なんです。布橋はこの世とあの世の境界。死後の世界を疑似体験できるというわけなんです。すでに身が引き締まる思いです

立山信仰の里、立山町芦峅寺で24日に行われた「布橋灌頂会」。富山県内外から約60人の女人衆が集まり、その中には俳優の南野陽子さんの姿もあった。
江戸時代の立山信仰では霊山・立山に登れば極楽往生できると信じられていたが、当時女性は山に入ることが禁じられていたため、代わりとして行われていたのがこの儀式。

女人衆はまず「閻魔堂(えんまどう)」と呼ばれるお堂に入り心身を清めた。

そしてかさをかぶり、目隠しをしていよいよ橋渡りの儀式へ。

この世とあの世の境界とされる長さ約45メートルの布橋。女人衆は、橋に敷かれた白い布の上を手を合わせながら進む。

6年ぶり有観客で開催
「布橋灌頂会」は近年は3年ごとに開催されているが、新型コロナウイルスの影響で延期や縮小となり、今回は6年ぶりに例年並みの規模での実施、観覧客も大勢集まった。
矢野美沙アナウンサー:
視界が遮られることで、一歩歩くごとに感覚が研ぎ澄まされていくような感じがしました。川のせせらぎや風で草木の葉が擦れ合う音、さわやかな空気など…なんだか心が癒やされました

その後、橋の先にある「遙望館(ようぼうかん)」に入り念仏を唱えたあと、目隠しを外した女人衆の目の前には、信仰の山・立山の姿が現れた。中には涙ぐむ人もいた。

再び橋を渡り、「この世」に戻ってきた女人衆。「生まれ変わり」を遂げた。
参加者は「このようなイベントには、ぜひ一度親子で参加したいなと」「橋を渡る前は緊張していたが、無事に渡れてとてもうれしかった」「心洗われる気持ちと、『このあとがんばれよ』という声が聞こえてきて。エネルギーをもらった気がする」と、それぞれ感想を語った。

南野陽子さん:
とってもすがすがしい気持ちに。独特の雰囲気がある中スタートしたんですけれども、今生からあの世に行って、そして戻ってきて。参加してよかったなと。ただのイベントとしてとらえてはいけないような。全国の方に知ってほしい行事だと思いました
(富山テレビ)