まだまだ残暑が続くが、少しずつ運動しやすい季節になってきた。

スポーツイベントも多く開催されると思うが、その際には名前や番号を周囲が識別できるゼッケンがおなじみだ。しかし、その裏では「安全ピン」が使い捨てになっているという課題がある。

そう訴えるのは、ランニング用品を取り扱う、株式会社RECOLTZ(岩手・盛岡市)。担当者によると、ゼッケンは安全ピンで留めるのが主流で、マラソン大会などではセットで配られることが多いという。

しかし、安全ピンは運動による汗でさびてしまうため、大会のたびに多くが廃棄されてしまっているというのだ。ホックや磁石で留めるタイプの「ゼッケン留め」もあるが、普及は進んでいない現状もある。

針を使わない「BIB-IT.」を開発

この状況を解決しようと、開発したのが「BIB-IT.」(ビブイット)。ホック式のゼッケン留めを改良したもので、プラスチック素材のパーツでゼッケンとウェアを挟んで着用する製品だ。

BIB-IT.の構造、着用の様子(提供:株式会社RECOLTZ)
BIB-IT.の構造、着用の様子(提供:株式会社RECOLTZ)
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使い方は、四隅に穴が開いたゼッケンにトップパーツ(表側)を差し込み、ウェアと重ねて、バックパーツ(裏側)の穴に突起を差し込むだけ。針なしで固定できるという。サイズは3種類あり、価格は4個セットで330円から。公式サイトや通販で販売している。

安全ピンの回収もしている(提供:株式会社RECOLTZ)
安全ピンの回収もしている(提供:株式会社RECOLTZ)

株式会社RECOLTZでは、SDGsの取り組みとして、安全ピンを回収してリユースする活動を行っている。BIB-IT.の普及と合わせることで、無駄な廃棄をなくしていきたいとしている。

安全ピンが廃棄されているというが、ゼッケン留めの普及が進んでいないのはなぜだろう。BIB-IT.はどんなところを改良したのか。担当者に聞いた。

「運動中に外れる」「擦過傷」の原因に

――BIB-IT.を開発したのはどうして?

私はマラソンが趣味なのですが、安全ピンは大会のたびに多くが使い捨てにされています。従来品のゼッケン留めもなかなか普及しないため、機能性やデザインにこだわったものを作れば、安全ピンの廃棄をなくせるのではと思いました。

BIB-IT.(提供:株式会社RECOLTZ)
BIB-IT.(提供:株式会社RECOLTZ)

――ゼッケン留めはなぜ普及が進んでいない?

ゼッケン留めはウェアとゼッケンを挟み込んで装着しますが、従来品は運動で外れたり、突起部が長時間肌に擦れることで擦過傷になることもありました。競技中に外れたらという心配もあって、安全ピンに戻ってしまう方が多いのです。

BIB-IT.の特徴(提供:株式会社RECOLTZ)
BIB-IT.の特徴(提供:株式会社RECOLTZ)

――BIB-IT.の開発でこだわったところは?

ゼッケン留めを普及させるには、安全でしっかり装着できることが条件になると考えました。パーツの形状や素材にこだわり、「外れるのでは」という不安感を抱かせないよう、試作を繰り返しました。

大きな違いはバックパーツにあり、他社製品は板状で厚みが薄めですが、BIB-IT.は形状をドーム型にして厚くしています。突起部を差し込む、十字の切り込み部分も試行錯誤しました。これにより、肌とウェアが擦れることを防いでいます。装着時のパチンという音と手応えで、安心感も意識しました。

表面にプリントすることも可能

――BIB-IT.ならではという特徴はある?

BIB-IT.は一般的なゼッケン留めより、大きいサイズもあります。ロゴなどをプリントできるので、大会の記念品にしたり、広告を入れることもできます。また、紛失防止にもなる専用ストラップを用意しています。こちらもプリント可能です。

ロゴなどを入れることができる(提供:株式会社RECOLTZ)
ロゴなどを入れることができる(提供:株式会社RECOLTZ)

――BIB-IT.が使えない素材、条件はある?

伸縮性のある薄手のウェアへの使用が前提のため、伸縮性のない、厚手のウェアでは使用できないことがあります。ただ、ピンの先端はヤスリなどで削ると調整できるので、取り付けが難しい場合はお試しいただければと願います。また、四隅に穴が開いていないゼッケンだと、穴を開ける必要があるので、穴あけ用のパンチが必要になることもあります。

着用するには穴が必要(提供:株式会社RECOLTZ)
着用するには穴が必要(提供:株式会社RECOLTZ)

――実際はどんな場面で活用してほしい?

ゼッケンを使用するスポーツ、お子様の競技など、さまざまなシーンでお使いいただけます。利用者からは、自転車競技、卓球、テニスなどの激しい運動でも取れることなく安心して使えたと好評でした。小さなお子様をもつ親からも、安全ピンの危険性を心配せずに使えるという声をいただいています。

将来的には安全ピンから移行できれば

――これからに期待したいことは?

将来的には安全ピンの配布を止め、繰り返し使えるゼッケン留めになれば、サステナブルな大会運営に近づくことができると考えています。ランニングファッションのひとつとして、ゼッケン留めを楽しむ時代がくるのではとも期待しています。



BIB-IT.は、2023年8月に特許も取得したという。安全ピンが好まれているのにも理由があったが、使い捨てにならないような取り組みが求められるのかもしれない。

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。