パートなどで働く人のいわゆる「年収の壁」の解消に向けて、厚生労働省の部会で本格的な議論が開始された。

厚生年金加入になる“106万円の壁”

現在の年金制度では、パートなどで働く人の年収が一定の額を越えると、配偶者などの扶養が外れ、社会保険料の負担が生じることから、いわゆる「年収の壁」と言われている。

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そうすると、働いても手取りが減ってしまうほか、年収の壁を超えないように、働く日数や時間を調節する働き控えもする人もいて、人手不足にもつながるといった問題も生じている。

21日の厚生労働省の部会では、パートなどで働く人のいわゆる「年収の壁」の解消に向けて、本格的な議論を開始した。

今回検討されている具体策を見る前に、まずは、あらためてパートやアルバイトの方が直面している2つの「年収の壁」について解説する。

夫が正社員として働き、妻がパートしている夫婦の場合、一つ目の壁は「106万円の壁」だ。

従業員が100人を超える(101人以上)企業の場合は、条件はあるが、年収が106万円を超えると「厚生年金」に加入する仕組みになる。

厚生年金に加入すると将来の年金額は増えるが、その分保険料が給与から差し引かれて手取りが減ってしまう。

この保険料は給与の18.3%と固定されていて、半分を会社が、もう半分を従業員側が負担している。106万円までは働いていた分、満額もらえていた手取りが、106万円を超えると、保険料を納める必要がある。

そのため、同じ手取りに戻すには収入が約125万円を超える必要がある。このゾーンで、働き損になってしまうことが問題視されている。

国民年金を払う“130万円の壁”

そしてもう1つは「130万円の壁」というものがある。

妻のパート年収が130万円以下の場合は夫の扶養家族になるので、「国民年金」を妻が支払う必要はなかった。ところが、年収が130万円を超えると夫の扶養から外れ、国民年金を自分で支払わなければいけなくなる。

2023年度の国民年金保険料は月額1万6520円、年間だと20万円近い金額を支払う必要があるため、年収130万円以下の時よりも手取りが減る逆転現象がここでも起きてしまう。

この2つの壁を超えないように、パートやアルバイトの方は勤務日数や労働時間を調整している人がいるという実態がある。

厚労省によると、配偶者がいる女性のパート従業員の「約2割ほど」が調整をしているという。

「働いたらお金を損してしまう」

働く人はもちろん、調整されて休まれると、雇っている会社やお店も困る。そこで、その実態をスーパーアキダイの秋葉弘道社長にお聞きする。

秋葉社長に、年収の壁は店に影響があるか尋ねた。

スーパーアキダイ 秋葉弘道社長:
はい。これはまさにありますね。私たちのグループで30人ほど年収の壁が関係する人がいます。スーパーではすごく忙しい日や暇な日があるので、忙しい日にはパートさんに残ってもらいたいと思っても、年収の壁があるため残れないという。そういう場面が結構多いです。

実際にパート従業員の方からは、どのような声が上がっているのだろうか。

スーパーアキダイ 秋葉弘道社長:
気持ちとしては協力したいけれど、厳しいと。働いたらお金を損してしまうというのは、誰でも嫌ですよね。

年収の壁には、働く側も雇う側も苦労している。21日行われた厚労省の年金部会では「106万円の壁」の解消に向けて、こんな具体策が出された。

「パート従業員の保険料を一律に免除する案」や「収入の増加に合わせて保険料を引き上げる案」、「従業員側の保険料負担を軽減する代わりに、会社側の負担割合を増加させる案」などが提示されたという。

「年収の壁」などの制度の改正については、再来年度の年金制度改革に向けて、今後も議論を進められていくという。
(「イット!」 9月22日放送より)