子どもの食物アレルギーが、約20年間で20万人近く増加した。明確な原因はわかっていないが、専門の医師は「食べ始めの時期の変化」が要因の1つだと指摘する。効果的な予防法として「スキンケア」が重要だと話す。
子どもの食物アレルギーは年々増加傾向に
公益財団法人「日本学校保健会」が全国の公立小中学校を対象にした調査では、食物アレルギーがある子どもは2022年時点で52万6,705人いる。2004年は約33万人、2013年は40万人余りと、年々増加傾向にあることがわかる。

街の人に聞いてみると、「孫が卵アレルギー。卵はお弁当、料理にも欠かせないので困りました」「子どもにアトピーがある。パンを食べると湿疹が出る」「アレルギーに関してはすごく慎重にみている。いつ何が起こるかわからないので怖い」などアレルギーに対して細心の注意を持って対応していることがわかった。
福井大学医学部付属病院 小児科・大嶋勇成教授は、臨床の現場でも最近、食物アレルギーの患者が増えていると話す。

福井大学医学部付属病院 小児科・大嶋教授:
患者数は明らかに増えている。病院でアレルギーの専門外来を開くと、最近はほとんど食物アレルギーの患者さん。非常に社会的に問題になっているのが現状です
正しい時期に離乳食を食べることが重要
食物アレルギーとは、特定の食品によって引き起こされるアレルギー反応を指す。食物アレルギーの原因になる食品には、卵や牛乳、小麦など数多く存在する。

じんましん、下痢、ぜんそくなどを引き起こし、重篤な場合は、血圧の低下や意識障害といったアナフィラキシーショックを発症、死に至る危険性もある。
大嶋教授によると、「増加の原因は完全にわかっていない。ただ一時期、原因となりやすい物質を食べる時期を遅くすることが推奨されていた。それにより逆に増えたのではないかと考えられる」という。

乳幼児は、食事を通して徐々に身体が食べ物に慣れ、異物とみなさず消化できるようになる。しかし、食べ始め時期が遅れると、身体が慣れる前により吸収率の高い皮膚からアレルギーの原因物質が体内に取り込まれてしまう。これによりアレルギー反応を引き起こすリスクが高まるという。
そのため、正しい時期にさまざまな食材を離乳食で食べることで、体内に抗体をつくることが重要となる。
近年は、大人の食生活が変化し、「ある食品」のアレルギー患者が増えているという。ここでクエスチョン。その食品とは次のうちどれ?

① 卵
② ナッツ
③ 小麦
正解は②のナッツだ。

明確な理由はわからないが、国内に輸入されるナッツ製品の量は増えている。家庭での消費量が増えているのではないか。そのことによって、ナッツ成分がホコリやカスとして家中に広がり、それを子どもが口から取り入れるよりも先に皮膚から吸収してしまうことで、アレルギー反応を発症しやすくなるという。
アレルギーの予防には皮膚を清潔に保つ「スキンケア」
家の中を清潔に保つことが予防につながる。それに加えて注意が必要なのは「スキンケア」だ。

福井大学医学部付属病院 小児科・大嶋教授:
皮膚を清潔に保つことで、皮膚からアレルギー物質が吸収するのを防ぐことができる。乾燥肌で皮膚がカサカサになってしまう場合は、保湿剤を塗ってあげることが重要
大嶋教授は、子どもに食物アレルギーへの不安がある場合は、医師に相談して正しいアプローチをしてほしいと呼び掛ける。

福井大学医学部付属病院 小児科・大嶋教授:
症状の程度も原因となる食べ物も違うので、ネットに出ているような安易な除去の仕方はしないでほしい。早く治すには、自分の子どもがどういう食べ物で症状が出ているのかをきちんと診断することが大前提。判断したうえで、食べられる量を少しずつ食べていく。そのためにも、医師と良好な関係を作りながら進めていってほしい
(福井テレビ)