「宿泊・飲食サービス」過去最低を更新

7月1日に発表された6月の日銀短観では、景気が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」を引いた業況判断指数は、代表的な指標の「大企業・製造業」でマイナス34となった。
前回3月調査から26ポイントの低下。
これは、リーマンショック後の2009年6月以来、11年ぶりの低水準で、悪化幅は過去2番目の大きさとなった。
また、「大企業・非製造業」もマイナス17と前回から25ポイント低下。こちらの悪化幅は過去最大となった。
特に「宿泊・飲食サービス」はマイナス91と過去最低を更新。自粛要請の影響が直撃し、全業種で最も低い数字となった。

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唯一改善したのは、巣ごもり需要を取り込んだ「小売」(9ポイント改善)だったが、それ以外の全ての業種で、新型コロナウイルスの感染拡大による景気悪化の現状が浮き彫りになった。

‟先行き“は改善…しかしその翌日に

一方、先行きの業況判断指数は、改善している。
「大企業・製造業」は7ポイント改善のマイナス27、「大企業・非製造業」は3ポイント改善のマイナス14となった。
6月短観は「底」となるのだろうか?

日銀幹部:
先行きについては、感染第2波を懸念する声、新型コロナウイルス感染症の長期化を懸念する声も多く聞かれたが、早期収束を期待する声がいくぶん上回った。
自動車販売生産の緩やかな持ち直しを期待する声が自動車関連業種から幅広く聞かれたほか、「宿泊・飲食サービス」などからは営業再開に伴って徐々に持ち直していくことを期待する声が聞かれた。

しかし、短観が発表された翌日の7月2日、都内で新たに107人が新型コロナウイルスに感染していることが確認された。
感染者が100人を超えたのは5月2日以来2か月ぶり。
ここに来て感染者数は増加し、特に「夜の街」関連での感染が目立っている。
小池都知事は緊急記者会見を開き、夜の街への外出を控えるよう呼びかけた。

希望持ち、踏ん張って来たものの…」

帝国データバンクによると、7月2日までに新型コロナウイルス関連の事業停止と法的整理を合わせた倒産は310件。
業種別では「飲食店」が49件と最も多く、次に「ホテル・旅館」が45件、「アパレル・雑貨・靴小売店」が21件と続く。
ここに来て飲食店の倒産が加速しているという。

帝国データバンク:
5月25日には全国で緊急事態宣言が解除されたが、「夜の街」(バー、ナイトクラブ)を中心とする感染者数の報道が続くことも影響してか、飲食店業界の現状は経営者が期待・想定していた解除後の客足・売り上げには程遠いと言える。
それゆえ、「緊急事態宣言が明けるまでは…」と希望を持ちながら踏ん張って来たものの、厳しい現実を目の当たりにすることで事業継続断念を意識する経営者は増え、さらなる件数増加につながる可能性がある。

日銀短観で改めて浮き彫りになった「宿泊・飲食サービス」の厳しい現状。
ここに来ての感染者の増加は、経営者のマインドに強く影響しているようだ。
第2波への懸念は根強く、手探りでの営業活動を迫られている。

(フジテレビ報道局経済部 土門健太郎記者)

 
土門 健太郎
土門 健太郎

フジテレビ報道局経済部 記者