国の内外で活躍するジャズプレイヤーたちが集う祭典「今治ジャズタウン」がこの夏、惜しまれながら四半世紀の歴史に幕を下ろした。街がジャズ一色に染まる港町・今治の特別な2日間、最後のステージに密着した。
「夏が来れば今治ジャズタウン」の25年間
今治の夏を彩る「今治ジャズタウン」は、2日間かけて開催されるビッグイベントで、初日のタウンステージではミュージシャンが市内の飲食店など4カ所へ出向き、生セッションを披露する。
タオルメーカーの社員食堂も、ライブハウスに様変わり。
1999年に、しまなみ海道の開通イベントとして始まった今治ジャズタウン。
国の内外で活躍するミュージシャンたちが集うジャズの祭典として親しまれてきた。
20年以上出演 トロンボーン奏者・向井滋春さん：
みんなの熱意でジャズファンたちが集まって、自分たちの力で運営してすごい。今治にジャズがなじみ深くなっている
1999年から出演 ジャズピアニスト・栗田敬子さん：
ずっと出演させていただきました。夏が来れば今治ジャズタウン、今治ジャズタウンが終わると夏が終わるという25年間でしたね
観客からは、「良い演奏が聞けて感動」、「一体感があって今治が元気になる」といった声が聞かれた。
運営の高齢化、人手不足…実行委員長との別れも
アーティストや地域に愛されてきた「今治ジャスタウン」だが、運営メンバーの高齢化や人手不足などにより、2023年、四半世紀の歴史に幕を下ろすことになった。
今治ジャズタウン実行委員会・山本昌司委員長：
来てくれる観客の反応が本当に楽しそうなんです。毎年ジャズタウンを楽しみにしているのを、体でひしひしと感じる
山本さん自身もサックス奏者で、市内の社会人ジャズバンド「スウィングキッスジャズオーケストラ」に所属。このバンドのメンバーらが中心となって、ジャズタウンを運営してきた。
今治ジャズタウン実行委員会・山本昌司委員長：
われわれが立ち上げたのは、今治をジャズが似合う素敵なおしゃれな街にしようと。ジャズっておもしろい、決して難しいものじゃない、楽しいもの。それがだんだんと一般の人にも理解され、受け入れられてきた気がしますね
25年の集大成を飾ろうと、ジャズタウンの準備を進めていた矢先、山本さんらバンドメンバーに突然の別れが訪れた。
ジャズタウンを立ち上げ、長年実行委員長を務めてきた平尾史郎さんが、2023年3月に急逝したのだ。
今治ジャズタウン実行委員会・山本昌司委員長：
彼に、「ジャズってこんなに楽しいんだよ」、「心豊かにしてくれるんだよ」っていうのを学びました。だから、その気持ちは自分だけでなく、まわりの人、今治市民や、もっともっと大きな人たちに伝えていって、みんな幸せになれば良いのかなと思います
“最後のジャズタウン”初のメインステージで感謝を
今治ジャズタウンの2日目は、出演アーティストが一堂に会する「メインステージ」。
リハーサル中の会場を覗いてみると、ステージには山本さんら「スウィングキッスジャズオーケストラ」のメンバーの姿が。
最後のジャズタウンのメインステージで、初めて演奏することになったのだ。
今治ジャズタウン実行委員会・山本昌司委員長：
来場された方に感謝の気持ちを伝えたいので、へたな言葉よりも、われわれの音楽で「ありがとうございました」を伝えたい
スウィングキッスのメンバー：
ガチガチ。クタクタになりながら練習を重ねてきたので、それが全部出せたら
スウィングキッスのメンバー：
惜しみなく出しましょうよ。頑張ろう
本番前には、小さな声で円陣を組むメンバーの姿があった。
今治ジャズタウン、最後のステージがいよいよ始まった。
地元の来場者：
わたし9回目なんです。きょうが最後だから絶対来たくて
地元の来場者：
最高でした。阿川さんが素敵で
埼玉からの来場者：
感激！市民がそろって集まって楽しい思いをする、大変素晴らしいこと
フィナーレは、出演者全員で「Sing, Sing, Sing」を演奏。
今治ジャズタウン実行委員会・山本昌司委員長：
ジャズは感性に訴える。感動したら、あしたからまた頑張ろうとなる。これがジャズの魅力だと思います
今治ジャズタウンは今回で最後となったが、実行委員会は今後も存続するということで、山本委員長は「また新しい形で今治ジャズタウンを始めたい」としている。
（テレビ愛媛）
