音楽配信サービスでチャートインするなど注目されるミュージシャンが愛媛にいる。実はまだ小学6年生の男の子。その感性から紡ぎ出される楽曲は、大人のプロのジャズシンガーもうならせている。夢は「セッションミュージシャン」。日々の音楽活動を追った。
注目の小学生ミュージシャン その素顔は
ゆったりしたリズムと表情でギターを弾くのは石崎陽琉(はる)さん(崎は「たつさき」)。ミュージシャン「the bloom」として活動する愛媛・松前町の小学6年生だ。

石崎陽琉さん:
「この曲すごい!」って言われたときは「やったー!うれしい!」自分が一生懸命作った曲をほめてもらうことはすごくうれしい

陽琉さんが6月に発表した新曲「cocoa」は、音楽配信サービス大手アイチューンズストアのサイケデリック部門で1位にランクインした。
今、注目の愛媛の小学生ミュージシャンの素顔は…。
石崎陽琉さん:
ただいま~
夕方、小学校から自宅に帰ってきた陽琉さん。帰宅後にまずやることは宿題。
石崎陽琉さん:
好きな科目は、歴史に興味を持って社会が好きになりました

ーー今、授業で習っているのは?
石崎陽琉さん:
聖徳太子が出てきて小野妹子みたいな
宿題が終わり私服に着替えると、早速ギターを手に取り弾き始めた。ここからはミュージシャンモードだ。

陽琉さんが得意とする音楽のひとつが「チルアウトミュージック」と呼ばれるジャンル。「チルアウト」とは「リラックスする」という意味で、ブラックミュージックを軸とした心地よいスローテンポな楽曲が特徴。近年はカフェやバーなどで流れる「おしゃれな」BGMとして人気のジャンルだ。
石崎陽琉さん:
自分の頭の中に大体のコード進行をグループ別に覚えさせていて、そこから新しいもっと格好良いものを弾いている
デジタルネイティブ世代ならではの音楽づくりも
陽琉さんがギターを始めたのは小学3年生の時。コロナ禍がきっかけだった。

石崎陽琉さん:
外に出る機会が減って部屋で何をしようかってなった時、父に「ギターやってみない」と誘われて。だんだんと自分で思うように弾けるようになってきて、やりたいことが自由にできるうれしさを感じた
小学4年の1月には「the bloom」として音楽配信をスタート。これまでにシングル8枚、アルバム2枚を発表している。そんな陽琉さんの曲作りはスタジオではなく、自宅のリビングで行われている。
石崎陽琉さん:
今録ったやつ…これを今、収録してある音と合わせる

音楽制作ソフトを使い、別々に収録したギターやベース、キーボードなどさまざまな楽器の音を重ねて曲を作っている。そんなイマドキの曲作りではこんな驚きの方法も!
石崎陽琉さん:
福岡の今度のライブ、曲はどうやってするんやったけ?

陽琉さんが画面越しに話しているのは、福岡県のヴォーカリストで中学1年生のCocomiさん。2人はSNSを通じて知り合いコラボを重ねている。ただ音源はデータでやりとりしているため、実際に会ったことはない。デジタルネイティブな世代ならではの音楽づくりだ。

Cocomiさん:
(the bloomの音楽は)格好良いし、すごいオシャレな曲をいっぱい作っているので、一緒に音楽をやれて楽しい
夢に向かって「努力を楽しむ」
陽琉さんが将来目指しているのは、楽器の演奏を専門とするプロの「セッションミュージシャン」。レコーディングやライブなどで活動し、高度な演奏力はもちろん、音楽の幅広い知識が求められる。

陽琉さんが2022年の夏休みに書いた「目標達成シート」には、「セッションミュージシャンになるために何が必要か」、技術や人間性など具体的な項目を挙げ、日々の練習や行動の基盤としている。
石崎陽琉さん:
音楽だけじゃなく人との関わりがないと夢にはいけない。そこを今鍛えています
音楽の仲間で、松山在住のプロのジャズシンガー・溝田麻美さんも、陽琉さんの音楽の才能を高く評価している1人だ。

溝田麻美さん:
すごい指運びもうまいし音選びのセンスもあるから、いろんな音楽を聴いてないと思いつかないフレーズだったりするので
溝田さんの自宅では陽琉さんがギターを響かせている。

溝田麻美さん:
五線譜の楽譜だと3枚になる楽譜。これを自分でコードにしたらこれだけで終わる。これが作れたら次こっちも作らないといけない
溝田さんは陽琉さんに、セッションミュージシャンを目指すなら楽譜の読み書きを学ぶようアドバイスしている。
溝田麻美さん:
渡された楽譜に音符が書いてあった時「譜面読めない」はそれだけチャンスが減る。あと譜面が書けること、自分の表現したい音楽を楽譜に落とし込めるか
譜面が書けることは、自分の音楽を他の演奏者に的確に伝えることも、プロのミュージシャンに欠かせない重要なスキルだ。

7月2日、陽琉さんは松前町のお寺で開かれた音楽イベントに出演した。人前で演奏することで表現力を高めたいと、ライブ活動にも積極的に取り組んでいる。
ライブを見た陽琉さんの友人:
陽琉っぽくなかった。なんかいつもと違ってすごかった。輝いてました。オーラが出てるような。いつもはあんな感じ

ライブを聴きに来た友人のそばでは、演奏を終えた陽琉さんは小学生らしいおどけた姿を見せていた。

石崎陽琉さん:
聞いてる人から拍手をもらったりするのはすごいうれしい。自分の音楽を聞いてくれてたんだって
「セッションミュージシャン」という夢に向かって一歩一歩。努力を楽しむ愛媛の12歳。
今後の活躍に注目だ。
(テレビ愛媛)