バスやトラックの運転手不足が深刻化している。路線バスの運転士は高齢化し「若手が入ってこない」のが現状だ。決定的な解決策が見いだせない中、公共交通機関維持のため「自動運転」導入を検討する自治体も出てきた。

低賃金で不規則…高齢化も

佐賀市交通局業務課・相島尚徳副課長:
雇用する側からすればかなり厳しい状況になりまして、今以上に運転士の方は不足していくと考えております

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公共交通機関として地域に欠かせない存在のバス。その運転士の不足が全国的な課題となっている。そして、2024年4月の法改正では、運転士の時間外労働の上限が制限されることになっていて、さらなる人手不足の深刻化が懸念されている。

九州運輸局によると、バス運転士の賃金は男性で月約28万5,000円と全産業の平均37万円と比べると低い傾向だ。一方で平均年齢は高くなっていて、運転に必要な免許を保有している県内の約1万人のうち、50代以上の割合が9割を超えている。

佐賀市交通局業務課・相島尚徳副課長:
ローテーションで朝早い勤務や夜遅い勤務を回しているような状況になっておりますので、働く側からしてみれば不規則な勤務になっているのも、なり手不足の一因かと思っております

佐賀市営バスを運行する佐賀市交通局も運転士の不足に頭を悩ませている。通年で募集しているものの、応募者は少なく、慢性的に不足している状況だという。なり手不足に加えて、佐賀市営バスの運転士の平均年齢は53歳だ。(8月1日段時点)

佐賀市交通局業務課・相島尚徳副課長:
今後のことを考えると高齢化が進んでいくような状況になりますので、若い人たちにバスの運転士になっていただくっていうところを目指しております

若手確保へ免許取得費を負担

若返りを図ろうと支援制度も取り入れている。

佐賀市交通局業務課・相島尚徳副課長:
大型二種免許を取得する自動車学校での費用相当分を佐賀市交通局で負担するような制度となっております

普通運転免許をもっている人がバスの運転に必要な大型二種免許を取るのにかかる費用は約50万円。大型二種免許のない人でも運転士になれるよう、その費用を交通局が負担しているという。

同じような支援は祐徳バスや昭和バスでも行われている。

支援制度を使って大型二種免許を取得した石川静樹さん
支援制度を使って大型二種免許を取得した石川静樹さん

「バスを降りるときにお客様から「ありがとう」というその一言がとてもうれしいです」と話すのは、支援制度を使って大型二種免許を取得した石川静樹さん30歳だ。

千葉県出身の石川さんは東京の人材派遣会社で5年ほど働いていましたが、2年前に佐賀市交通局に転職した。

佐賀市交通局・石川静樹さん:
妻の実家が佐賀市にありまして、妻の佐賀に戻りたいという気持ちを尊重して自分も東京の仕事を辞めて佐賀に来た。小さいときからバスの運転手になりたいという気持ちが心の中にあった

家庭の事情と昔からの憧れで運転士になった石川さん。職場の環境についても良いと話す。

佐賀市交通局・石川静樹さん:
先輩方も気さくに話しかけてくれる。仕事の時は真剣にお客さまの命を預かっているので目的地までしっかりとお届けして、オンとオフを切り替えて楽しく仕事しています

支援制度のほかにも、佐賀市営バスは、2023年5月から車両の前面などに取り付けられた「行先表示器」に、「運転士募集」と表示して走らせている。客を乗せていない回送中のバスが対象で、前面や側面などで運転手の募集を呼びかけている。

また、民間も含めた県内のバス事業者で行う求職者への合同説明会にも積極的に参加しているという。

「公共交通機関」維持が困難に

佐賀市交通局業務課・相島尚徳副課長:
公共交通機関として今の路線を維持することは大切なことだと考えていますが、それ自体がちょっと見直さなければならないような状況にもなりかねない。人材の確保、運転士の確保は非常に重要なことだと思っています

都市経済学や交通について詳しい佐賀大学の亀山嘉大教授は人手不足を解消する難しさを「高齢化が進んでいる中で若手が入ってこない。入ってこないっていうのはひとつやはり賃金が低いっていうことと、仕事に対する魅力みたいなのが若手に訴求されてないのという気もします。賃金上げても人は集まらない可能性もありますし、それに加えてこの先ずっと人は減っていく」と話す。

今後、人口が減っていく中で公共交通機関を維持するためには、新たな仕組みを考えることも必要だという。

解決策は「自動運転」しかない?

2023年8月26日に開業した宇都宮市のLRT(次世代型路面電車)
2023年8月26日に開業した宇都宮市のLRT(次世代型路面電車)

佐賀大学経済学部・亀山嘉大教授:
人をつかわないような仕組みを作っていくしかないのかなと。ひとつは簡単に言ってしまうと自動運転。栃木県宇都宮市のLRT(次世代型路面電車)のような軌道系に変えていく必要もあるのかなと。軌道系に変えると自動運転もやりやすくなる

県と佐賀市は2023年10月20日からの1週間、JR佐賀駅の北口と「SAGAサンライズパーク」の間、約1.6kmの区間で、自動運転バスの実証実験を予定している。

今後、全国的な運転士不足が懸念されている中、自動運転バスは実用化が進めば公共交通機関の維持につながると期待されていますが、決定的な打開策がないのが現状だ。

(サガテレビ)

サガテレビ
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