島根・松江市役所旧庁舎の屋上にあった天文台は、「市役所の天文台」のシンボルとして、長年市民に親しまれてきた。。
2023年5月に松江市役所の移転にともない、旧庁舎の屋上にあった天文台も閉館され、設置されていた大型望遠鏡も役目を終えることになった。しかし実は意外な持ち主のもとへ旅立っていた。

“市役所の天文台”が60年の歴史に幕

松江市役所旧庁舎の屋上にあった天文台は、1962年の庁舎完成と同時に開設され、全国でも珍しい「市役所にある天文台」として話題となった。

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長さ2.4メートル、直径15cmのレンズを備えた大型望遠鏡を使って天文教室も開催され、子どもから大人まで多くの市民を星の世界へ誘ってきた。

しかし、庁舎の建て替えにともなって旧庁舎は取り壊されることになり、2023年5月に天文台も閉館、望遠鏡も取り外された。

望遠鏡は次の持ち主へ

天文台の閉館から約3カ月がたった8月。望遠鏡は松江市から40kmほど離れた出雲市大社町にあった。

「望遠鏡はこちらにあります」と案内してくれたのは、望遠鏡の新たな所有者である竹内幹蔵さん。自宅の和室に、あの望遠鏡がバラバラに解体され置かれていた。

竹内幹蔵さん:
望遠鏡自体はいいものですので、誰も使わないのであれば欲しいなと思った

望遠鏡を運び出す作業中の竹内さんと友人たち
望遠鏡を運び出す作業中の竹内さんと友人たち

望遠鏡は長さ2.4メートル。しかしパーツに分けられると、そこまで大きく感じられない。とはいえ、重さは合わせて100kg以上。友人7人に協力してもらい、市役所から運び出した。

長年市民に親しまれ、宇宙への思いも詰まった大型望遠鏡を廃棄するのはもったいないと、松江市は民間に譲渡することを決め、競争入札にかけた。

購入時(約60年前)の価格は約104万円だったという望遠鏡。竹内さんが落札した金額は…。

竹内幹蔵さん:
1万120円です。本来は、松江市民の方にもらっていただくのが一番だとは思っていたんですけど、たまたま私の額が一番高くて

“60年モノ”とはいえ、手入れがしっかりされていて、良好な状態だったそうだ。

竹内幹蔵さん:
昔の望遠鏡は長いんですね。なので倍率が出やすく、月とか惑星を見るのに向いている

「気軽に星を見れる場所を作りたい」

その後も、落札した大型望遠鏡の特徴をこと細かに教えてくれた竹内さん。あふれんばかりの望遠鏡への愛着が伝わってくる話しぶりだが、それもそのはず、大田市にあるミュージアム「三瓶自然館サヒメル」の学芸員で、天文教室も担当しているのだ。

「退職した5年、10年先くらいに、望遠鏡を大社町に設置して楽しみたい」と望遠鏡を落札。学芸員として培った知識を生かし、だれでも気軽に星を楽しめるような場所をつくりたいと考えている。

竹内幹蔵さん:
皆さんに星を見せていた望遠鏡なので、自分1人で楽しむだけではなくて、いろいろな人に見に来てもらって楽しんでもらいたい

多くの松江市民を星の世界へ誘った市役所天文台の望遠鏡。新天地でも多くの星の輝きを追いかけることになりそうだ。

(TSKさんいん中央テレビ)

TSKさんいん中央テレビ
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