「合葬墓(がっそうぼ)」へのニーズが高まりつつあるようだ。

神戸市では、市立「鵯越(ひよどりごえ)墓園」の合葬墓に想定を上回る応募があり、急きょ、収蔵数を増やした。市によると、「合葬墓」とは、一定の広さの区域に親族関係に関わりなく、遺骨をまとめて収蔵し、慰霊碑を設けるなどしたもの。

18年度に募集開始も21年度に拡張工事

「鵯越墓園」の合葬墓は2018年度に募集を開始。当初は約1万体を収容可能で整備されたが、2021年度までの使用許可件数が約9000体を超える状況となったため、2021年度に拡張工事を行い、約2万体まで収容可能とした。

「一般の墓」の場合、当初の使用料が50万~100万円程度かかるケースが多いのに対し、「合葬墓」は1体5万円となる。しかも年間使用料は不要だ。

また神戸市によると、鵯越墓園を含む4つの市立墓園では2015年度から現在まで、新たな墓地の「許可」数よりも、墓じまいなどによる「返還」数が上回っているという。2021年度は「許可」が211だったのに対し、「返還」は689だった。

さらに市が実施したアンケートで、「お墓を守っていこうと考えている」を希望する方の割合は2015年には60%だったのに対し、2022年は28%となり、大幅に減っているとのことだ。

「合葬墓」への申し込みが増えているということだが、これにはどのような背景があるのか?
また、「一般の墓」から「合葬墓」へ、という流れは、今後さらに加速していくのか?


神戸市の担当者に聞いた。

担当者「墓に対するニーズの変化を感じる」

――改めて「合葬墓」とは?

従来の多くのお墓は、「○○家之墓」のように、家族単位、あるいは個人単位で土地の一定区画を区切り、その区画内に墓石を立てたものです。仮に「一般墓」と呼びます。

これに対して、一定の広さの区域に親族関係に関わりなく遺骨をまとめて収蔵し、慰霊碑を設けるなどしたものを「合葬墓」と称しています。


――神戸市が「合葬墓」をつくったのは「鵯越墓園」の合葬墓が初めて?

神戸市立の「西神墓園」で「区画型合葬墓」をパイロット事業として整備し、2011年~2013年度に募集を行いました。西神墓園の「区画型合葬墓」は132区画中127区画が使用中で、受付は終了しました。


――「鵯越墓園」の合葬墓、2018 年度に募集を開始した理由は?

「西神墓園」のパイロット事業を開始した後も、合葬墓に対するニーズが高まっていたためです。このパイロット事業の結果も踏まえながら、2015年度にはネットモニターのアンケート調査を実施し、2016年度から新たな合葬墓の設計・整備を行い、2018年度に設置しました。

「鵯越墓園」の合葬墓(提供:神戸市)
「鵯越墓園」の合葬墓(提供:神戸市)
この記事の画像(3枚)

――「合葬墓」への申し込みが増えていること、どのように受け止めている?

当初、想定を上回る応募数があり、収蔵数の増加に対応するため、増設工事も行っています。お墓に対するニーズの変化を感じています。


――背景としては、どのようなことが考えられる?

少子高齢化の進展や、弔う意識の変化により、子どもや孫に自分や祖先の墓を引き継がせる必要は無いと考える方や、子どもなどの親族がいない方も増えており、多様な墓のニーズとして、合葬墓への申し込みも増えているものと考えています。


――「鵯越墓園」の合葬墓は、どのような人がどのような理由で申し込んでいる?

応募の理由などは伺っていませんが、相談や受付に来られる方の状況を拝見すると、親の葬儀や自身のお墓について考えるようになるシニア層(50~60歳前後)の方が多いように見受けられます。

後世に墓の面倒をかけたくない人が増加

――新たな墓地の「許可」数よりも「返還」数が上回っていること、どのように受け止めている?

「一般墓」の新規募集に対しては、現在でも2倍近い、お申し込みがあり、これまでのお墓に対するニーズも一定あるものと考えています。

返還数の増加については、いわゆる墓じまいが進み、合葬墓や納骨堂など、後世に墓の面倒をかけたくない方が増えているように感じています。


――「一般の墓」から「合葬墓」へという流れは、今後さらに加速していく?

最近の応募状況からは、そのようなトレンドが見て取れますが、今後も同様に進むかは分かりません。


――墓のあり方は、今後、どのように変化していくと思う?

合葬墓のほか、樹木葬や散骨など、様々な形態による埋葬が行われています。弔う意識の変化だけでなく、技術革新とともに、今後、多様に変化する可能性があるものと考えています。

「鵯越墓園」の合葬墓(提供:神戸市)
「鵯越墓園」の合葬墓(提供:神戸市)

神戸市のケースから、ニーズの高まりを感じる「合葬墓」。お墓を守っていこうと考えている人の大幅な減少を踏まえると、「合葬墓」を希望する人は、今後ますます、増えていくのかもしれない。

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。