残暑で寝苦しい夜も続くが、皆さんは日々の睡眠に満足しているだろうか?実は日本は、先進国33カ国の中で、睡眠時間が一番短く、慢性的な睡眠不足が課題と言われている。
 
こうした中で一般社団法人ウェルネス総合研究所は、「睡眠の日(9月3日)」に合わせて、全国の10~60代の男女1200人を対象に「睡眠に関する意識と実態調査」を8月に実施し、その結果を公表した。
 
この調査で、まず「睡眠に関する悩み」について質問したところ、全体の約7割(68.1%)が何かしら「悩みがある」と回答。そして、この悩みの1位は「日中、眠たくなる」(26.8%)で、2位が「眠りが浅く、熟睡感が得られない」 (24.1%)、3位が「寝ても疲れが取れない」 (23.0%)と続いた。

睡眠の悩みが「ある」は約7割(提供:一般社団法人ウェルネス総合研究所)
睡眠の悩みが「ある」は約7割(提供:一般社団法人ウェルネス総合研究所)
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結果について、調査の監修を行った睡眠コンサルタントの友野なおさんは、以下のように考察している。

睡眠の質に影響を与える悩みを多くの人が抱えているようです。特に項目に挙げた睡眠の悩みは、“ノンレム睡眠の中でも深い睡眠である深睡眠とレム睡眠、この2つのバランスが乱れる”ことによって睡眠の質を低下させます。

悩みの種類の項目が、1つでも当てはまった人は睡眠バランスの乱れ予備軍、2~4つの人は要改善軍です。5つ以上の場合は1度睡眠外来などで気軽に専門医にご相談ください。

また、睡眠に関して悩みがあると回答した817人に「睡眠の質を高めるために過去・現在行ったことがある対策方法」を聞いたところ、対策したことが「ある」と回答した人は全体の約半数(56.4%)という結果になった。

一方で、「残りの半数の人は自覚があるにもかかわらず、特に対策を行っておらず、“見て見ぬふり”をしている状態だということがうかがえる」としている。

「睡眠対策の経験がある」約半数(提供:一般社団法人ウェルネス総合研究所)
「睡眠対策の経験がある」約半数(提供:一般社団法人ウェルネス総合研究所)

「睡眠の質が良い/悪い」という話を聞くことがあるが、そもそも、「睡眠の質が良い」とは、どのような睡眠の状態を指すのか? また、「睡眠の質」を上げるためには、どうすればいいのか?

今回の調査の監修を行った、睡眠コンサルタントで「株式会社SEA Trinity」の代表取締役・友野なおさんに“睡眠の質を上げるための具体策”を聞いた。

2つの睡眠のバランスが重要

――今回の調査結果をどのように受け止めた?

今回の調査で上位だった「日中眠たくなる」「眠りが浅く熟睡感が得られない」「寝ても疲れが取れない」は現代の睡眠の3大悩みです。

これらはいずれも、ノンレム睡眠の中でも一番深い「深睡眠」と「レム睡眠」のバランスが乱れ、質の低い睡眠によって起こる傾向があり、複数の悩みが当てはまる場合は一度睡眠外来などで専門医に相談することをおすすめしています。

また、睡眠に悩んでいるにもかかわらず、「見て見ぬふり」をしている人の多さにも改めて驚きました。

睡眠の質を改善する機能性表示食品やスリープテックも広がりつつあり、睡眠に対するリテラシーがあがってきていますが、睡眠に対する意識や認識・実態(質を上げるための実践)が相関していないことに課題を感じています。

まずは、自分の睡眠と向き合うことが重要です。質の高い睡眠の条件である「ノンレム睡眠」「レム睡眠」という2つの睡眠の重要性を知り、そのバランスを整えることで、少しでも多くの方が質の良い睡眠をとれるよう、「睡眠バランスの重要性」について、より多くの方々に知っていただけたらと考えています。


――改めて、「ノンレム睡眠」と「レム睡眠」の意味は?

睡眠には脳波によって判別される「ノンレム睡眠」と「レム睡眠」の2種類があり、それぞれに役割が分担されています。

「ノンレム睡眠」は、成長ホルモンが分泌されて新陳代謝や免疫を高め、脳や身体の疲労回復などを行っています。眠りの深さによって3つのステージに分かれており、「深睡眠」が最も深い状態です。

「レム睡眠」は、一般的に眠りが浅いといわれる状態です。主に記憶や感情の整理を担当しており、情報を統合したり、過去の経験とつなげたりするとともに、創造や問題解決の作業をするのも「レム睡眠」の時です。また、「レム睡眠」は記憶の固定に関わっていると考えられています。

およそ90分のサイクルで交互にあらわれる「ノンレム睡眠」と「レム睡眠」には、異なる重要な働きがあるので、両方の睡眠をバランスよく確保することが重要です。

「ノンレム睡眠」と「レム睡眠」(提供:一般社団法人ウェルネス総合研究所)
「ノンレム睡眠」と「レム睡眠」(提供:一般社団法人ウェルネス総合研究所)

――そもそも「睡眠の質が良い」とは、どのような睡眠の状態を指す?

「ノンレム睡眠」と「レム睡眠」の時間が十分に確保されていることが重要です。一般的に、ぐっすり深く眠れれば、質の高い睡眠だと思いがちですが、実はそれだけでは不十分です。

スッキリ目覚めるためには、睡眠の後半に現れる「レム睡眠」の時間が確保されていることが重要です。ノンレム睡眠中にあらわれる、深く眠っている「深睡眠」をとれているはずなのに、レム睡眠が不十分だと、朝、スッキリ起きられないということも起きる可能性があります。

睡眠時の後半にみられる「レム睡眠」は、脳の整理を行いながら、目覚めるための準備(覚醒)に向かっていきます。そのため、後半に「レム睡眠」の時間が十分にとれていると、スッキリ目覚められるということです。

したがって、ぐっすり眠る「ノンレム睡眠」だけでなく、スッキリ起きる「レム睡眠」の2つがメリハリをもって、それぞれのバランスがとれていることが、質の高い睡眠につながります。

「ノンレム睡眠」と「レム睡眠」のバランスが大切(提供:一般社団法人ウェルネス総合研究所)
「ノンレム睡眠」と「レム睡眠」のバランスが大切(提供:一般社団法人ウェルネス総合研究所)

――「深睡眠とレム睡眠のバランスが乱れることによって睡眠の質を低下させる」。これはなぜ?

「深睡眠」と「レム睡眠」のどちらかに偏りがあったり、両方が足りていないなどバランスが乱れていると、眠りが浅くなってしまったり、朝すっきり起きられないなどの睡眠の悩みにつながります。

質の低い睡眠の状態の代表例として、以下のようなパターンが挙げられます。

(1)朝すっきり起きられない人の状態
深睡眠とレム睡眠の出現に一定性のリズムがなく、朝方にかけて体や脳が起床するための準備が整いにくい状態。

朝すっきり起きられない人の状態(提供:一般社団法人ウェルネス総合研究所)
朝すっきり起きられない人の状態(提供:一般社団法人ウェルネス総合研究所)

(2)眠りが浅く、熟睡感が得られない人の状態
寝付くまでに時間がかかっているうえ、ノンレム睡眠のステージ1~2をさまようようなメリハリのない浅い眠りが続く。

眠りが浅く、熟睡感が得られない人の状態(提供:一般社団法人ウェルネス総合研究所)
眠りが浅く、熟睡感が得られない人の状態(提供:一般社団法人ウェルネス総合研究所)

(3)夜中、何度も目覚める人の状態

深い眠りに入れず、何度も中途覚醒が起き、目覚めてしまっている。

夜中、何度も目覚める人の状態(提供:一般社団法人ウェルネス総合研究所)
夜中、何度も目覚める人の状態(提供:一般社団法人ウェルネス総合研究所)

――「睡眠の質」を上げるためには、どうすればいい?

大切なのは自分の睡眠を正しく知ることです。最近は自宅でも自分の睡眠時の状態を測ることができるデバイスも登場しているので、そういったものも活用しながら、自分の睡眠と向き合うことが、はじめの一歩として重要です。

「睡眠の質」を上げるための具体策

――たとえば、どのようなことをすればいい?

たとえば、「朝すっきり起きられない人」には、以下の対策がおすすめです。

【起きる時間を一定に】
生活のリズムが乱れがちな人に多い睡眠サイクル。体内時計のリズムを整えるために、毎日同じ時間に起きるということが重要。

【起きたら15秒間、空を見上げる】
たとえ天気が悪くても、窓際1メートル以内に立ち、15秒間、太陽の光を浴びること。そうすることで、眠りを促すホルモン「メラトニン」の分泌がストップし、日中の意欲的な活動を後押しするための、「セロトニン」の分泌が始まります。

さらに、再び、約15時間後に眠くなるように「メラトニン」の予約のスイッチが押すという働きもあるため、ぜひ習慣化していただければと思います。

(画像はイメージ)
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――「眠りが浅く、熟睡感が得られない人」におすすめの対策は?

「眠りが浅く、熟睡感が得られない人」には、以下の対策がおすすめです。

【ストレス対策】
疲れが溜まっている夜間は、日中よりもメンタルが敏感な状態です。

夜、寝る前に、暗い情報を見ないようにしましょう。疲れている夜は、スマホをチェックせず、気分が落ち込むようなことや、不安になる要素を取り除くことをおすすめします。

【適度な運動】
科学的に、運動を取り入れることで睡眠の質が向上すると言われています。理想は毎日30分ですが、週に3回からのスタートでも問題ありません。

階段を駆け足で上がる、家事をするときにもスクワットをしながら「ながら運動」をするなど、いつもの動作に少しだけ負荷を加えることから始めてみてください。

(画像はイメージ)
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――「夜中に何度も目が覚めてしまう人」におすすめの対策は?

「夜中に何度も目が覚めてしまう人」には、以下の対策がおすすめです。

【寝具の環境を見直す】
自分に合った靴を選ばないと、靴ずれをして足を痛めてしまうように、寝具が体にあっていないと、体がしびれたり痛んだりし、目が覚めてしまう人もいます。

それぞれ寝具には寿命があり、一般的にマットレスは10年、まくらは1.5~3年と言われています。この年数を目安に見直していただくのもおすすめです。

また、パジャマを着ることも重要です。パジャマにはスムーズな寝返りを促進する効果があります。また、寝返りは睡眠サイクルがリズム良く進むためのスイッチの役目もあるので、パジャマを着て寝ることで「ノンレム睡眠」と「レム睡眠」のバランスをととのえる手助けをしてくれるでしょう。

(画像はイメージ)
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睡眠に関して、何かしらの悩みがある人は、まず、自分の睡眠が、質の低い睡眠のパターンのどれに当てはまるか、確かめてみてほしい。そのうえで、パターンにあわせて、「睡眠の質」を上げるための具体策を試してみてはいかがだろうか。

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。