広島工業大学が2022年、世界で初めて開発した“屋内版GPS”とも言えるシステム。それを使って遠隔操作で自由に動かせるロボットを発表した。衛星の信号が届きにくい「屋内」にも新たな可能性が広がっている。

ロボットを防災センターから遠隔操作

広島市佐伯区にある広島工業大学。ここで、これまでにないシステムで動くロボットがお披露目された。

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システムの説明を受ける人々の視線を集めているのは、カメラを搭載した警備ロボット。

警備カメラを搭載したロボット
警備カメラを搭載したロボット

広島工業大学 建築保全業務ロボット研究センター長・杉田洋 教授:
通常ロボットは非常に高価だが、それはロボットの中に自己位置を推定するための非常に高額なセンサーがたくさん詰まっているからです

広島工業大学は2022年、“屋内版GPS”とも言える位置情報を共有するシステム「BPS」を世界で初めて開発。衛星の信号が届きにくい「屋内」でも、衛星のかわりに建物に取り付けたセンサーによって位置を把握できるようにした。

さらに、BPSを使って遠隔操作で自由に動かせるロボットを開発したのだ。

現在、屋内で動くロボットは“事前に覚えさせられたルート”などに従って動いているという。

広島工業大学 建築保全業務ロボット研究センター長・杉田洋 教授:
ロボットを動かすためには、その動きをティーチングしないといけないんですね。このエリアをこう動きなさいというティーチングをして、それをトレースする形でロボットが動く。しかし、新しく開発したこのロボットは防災センターから遠隔で移動させることができます

安価な導入で“人手不足”解消へ

取材した記者が、試しにロボットを操作してみる。

画面で指示した場所へロボットを操作
画面で指示した場所へロボットを操作

鈴木崇義 記者 :
警備ロボットを別の場所へ移動させようと思います。どれくらいタイムラグがあるのか…。(操作キーを押す)あ、すぐ移動しますね

タイムラグなく、指示通りに動くロボット
タイムラグなく、指示通りに動くロボット

ロボットを操作する仕組みはこうだ。屋内に設置されたセンサー3点とロボットが位置情報を常にやりとり。防災センターからはWi-Fiを使って指示を出す。

するとロボットは屋内センサーの点を変えながら移動。つまり、ロボットが動ける範囲は屋内センサーの設置を増やせば増やすほど広くなる。

BPS以外にロボットに搭載する機能は、清掃センサーや警備カメラなどアレンジ可能。実用化されれば、建物に設置するセンサーは1つ1万5,000円ほど、ロボット1台あたりの費用も現在の3分の1ほどで導入できるという。

安価な導入だけでなく、人手不足の解消にも期待がかかる。杉田教授が例に挙げたのは、大学の機械室の点検。運転時間や冷却水の温度など多くの点検項目があり、1日4回、目視で点検を行っている。これをロボットがやってくれたら…

広島工業大学 建築保全業務ロボット研究センター長・杉田洋 教授:
今、世の中どこでも言われている人手不足。人間がやるよりもロボットがやったほうが確実性の高いものも世の中にはたくさんあると思う。今後はロボットに助けてもらいながら人間とロボットをどう協働させていくか。その部分について、仕組みづくりなどの検討を進めなくてはいけないと思っています

人間とロボットの協働…。その理想を現実にするため、技術開発はまさに日進月歩である。

(テレビ新広島)

テレビ新広島
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