BSフジLIVE「プライムニュース」に河野太郎大臣が生出演。福島第一原発の処理水放出開始、そして国民の信頼を揺るがすマイナ保険証問題や日本のデジタル化における現状・展望について伺った。
処理水放出、科学的な説明を重ね中国や陰謀論者による風評被害を防ぐ
この記事の画像(9枚)長野美郷キャスター:
政府と東京電力は福島第一原発の処理水の海洋放出を始めた。これに関する岸田総理の発言。
岸田文雄首相(VTR):
トリチウム濃度は規制基準をはるかに下回っている旨を発表した。中国政府が日本産水産物の輸入を全面的に一時停止する旨を発表したが、外交ルートで即時撤廃を求める申し入れを行った。科学的根拠に基づいて、専門家同士がしっかり議論を行うよう中国政府に強く働きかける。風評被害をはじめ、水産事業者がALPS処理水の海洋放出によって損害を受けることがないよう万全の態勢をとる。
反町理キャスター:
河野さんは、閣僚として処理水の問題も担当するが。
河野太郎 デジタル相 消費者・食品安全相:
放出される処理水はさらに希釈をしたものだが、トリチウム濃度はWHOが定める飲み水の基準の恐らく7分の1程度。科学的に人体への影響はおよそ考えられない。科学的に問題がないことを日本国民の皆さんにご理解いただき、風評被害をなるべく出さないように。
反町理キャスター:
中国の反応は。
河野太郎 デジタル相 消費者・食品安全相:
中国は科学的にではなく政治的にやっている。消費者庁としては日本国内だけでなく近隣の国々の消費者にも安全性をご理解いただく姿勢だが、中国の場合は国民向けに発信してもブロックされる。これも中国政府が政治的にやっているので、外務省を通じ政治的に働きかける。また国際社会に「中国は日本が出す処理水の何倍ものトリチウムを平気で出しているが、自国の海でとれた魚は国民に食べさせており、合理性がない」と訴えていかなければいけない。
反町理キャスター:
国内で、福島の皆さんが一番心配されているのが食の安全に関する風評被害。ここへの対応は。
河野太郎 デジタル相 消費者・食品安全相:
継続的に科学的な説明を繰り返していくことに尽きる。ワクチンのときもだが、陰謀論のような発信をする人が一定数いる。面白がっているのか儲けようとしているのかわからないが、それがいかに非科学的かという説明をしていく。そうした発信が安心に繋がっていくと思う。
「マイナ総点検」終了の段階で、ミスはほぼゼロの状況にする
長野美郷キャスター:
マイナンバーカードの累計申請件数は8月13日時点で約9770万件、うちマイナ保険証としての利用登録は約6600万件。8月8日に公表された政府の「マイナ総点検」中間報告によれば、マイナ保険証に他人の情報が登録されていたケースは累計で8441件。公務員などの年金を運営する共済組合では、マイナンバーと年金情報のひも付けの誤りが118件。この要因は、氏名、生年月日、性別、住所の基本4情報で照会するのが原則であるところ、3つ以下の情報で照会をしてしまったこと。またマイナンバーの手入力によるミスが挙げられる。
河野太郎 デジタル相 消費者・食品安全相:
いくつか問題があったが、いずれも起きた原因は特定されており、対応もできている。マイナンバーという制度やシステムに影響はなく、一部に運用の問題があった。そこをご理解いただく。マイナポータルで自分の情報を確認できるのがデジタル化の大きなメリット。不安な方は自分の情報を確認していただくのがいい。また、とにかく速やかに間違いを是正している。総点検が終わる段階で間違いがゼロに近い状況にまで修正できる。
反町理キャスター:
なるほど。
河野太郎 デジタル相 消費者・食品安全相:
紛らわしかったのは、保険証へのひも付けが完了はしていなくともマイナポイントはもらえているということがある。それにより、ひも付けが完了したと誤解される方がいて、その点はお詫び申し上げなければならない。
反町理キャスター:
マイナポイント、河野さんは最初反対されていたが。
河野太郎 デジタル相 消費者・食品安全相:
反対というか、邪道だと。
反町理キャスター:
反対よりひどい(笑)。
河野太郎 デジタル相 消費者・食品安全相:
だが、やった結果、ここまで登録者数が増えた。邪道でも早道だったという気がする。また、登録者数が増えたせいでトラブルが増えたというのは、紐づけ手続きの問題とは無関係であり、誤り。
自治体間のデジタル格差解消のため、デジタル庁がバックアップ
長野美郷キャスター:
マイナ総点検の中間報告でトラブルの再発防止策として示されたのが、登録事務に関する横断的ルールの策定。氏名・生年月日・性別・住所の基本4情報で照会するようシステムを改修し、また人手ではなくデジタルでマイナンバーカードからマイナンバーを読み取る方法を年度内に普及させることなど。
河野太郎 デジタル相 消費者・食品安全相:
日本の場合は住所の表記ゆれがある。だが氏名と生年月日だけでは、同姓同名で同じ生年月日の人が結構いらっしゃる問題がある。そこで住所の表記ゆれにAIなどで対処する。また、人間がやると間違える可能性があるため、ICチップやQRコードを読み込むなどの方法をデジタル庁や所管官庁で開発し、配ることを目指していく。
反町理キャスター:
ワクチン接種のとき、デジタル化の進み方によって、自治体ごとにスピードに差ができた。今回のマイナンバーカードに関しても同様では。この不公平さはなんとかならないか。
河野太郎 デジタル相 消費者・食品安全相:
デジタルがわかっている人がいる自治体とそうでない自治体の格差はものすごく出る。例えば、早い段階から住民票のコンビニ交付をしていた熊本市などは、市役所では手数料が400円のところコンビニ交付なら10円。8割ほどがコンビニ交付になり、窓口業務の人員を企画立案や教育委員会などに回せる。そこまで考えている首長さんもいる。一方、どことは言わないが「俺は反対だから一切やらない」と首長さんが言う自治体では、コンビニ交付どころか何もできない。
反町理キャスター:
自治体名を言った方がいいのでは?
河野太郎 デジタル相 消費者・食品安全相:
名古屋市。自治体ごとの格差はそういうところからも出てくる。地方分権というとき、何をやるかはそれぞれの自治体で決めていいが、手続きの様式やバックオフィスの仕事の流れはある程度統一するほうが効率的。今回はバックアップのために、デジタル庁としてガバメントクラウド(政府共通のクラウドサービス)とパッケージソフトをいくつか用意する。自治体はどのソフトがいいかを決めて、そこへデータを入れてもらい、デジタル庁がそれをサポートするやり方にする。すると自治体の足並みが少しずつ揃ってくる。
反町理キャスター:
ワクチン接種のときは、当時の菅総理から夢に出るほど頻繁に電話がかかってきて、せっつかれたとのこと。マイナンバーに関して岸田さんはどうか。
河野太郎 デジタル相 消費者・食品安全相:
菅義偉という人はかなりせっかち。真夜中に電話をかけてきて、翌朝7時に議員宿舎の玄関で一緒になったら「昨日のあれはどうなった?」と。「夜中の電話でしたからあのあと寝ました」と言うと機嫌が悪くなる。岸田さんは菅さんに比べるとノーマル。たぶん誰も菅さんの域にはいかないと思うが。
反町理キャスター:
それ、褒めてます?
河野太郎 デジタル相 消費者・食品安全相:
褒めてます。
反町理キャスター:
わかりました(笑)。
「ぬくもりのある社会」のためにこそ、デジタル化へのチャレンジを
長野美郷キャスター:
河野さんは、デジタルを使って日本の社会をどう変えたいか。デジタル化した日本の社会に、私達は何を期待できるか。
河野太郎 デジタル相 消費者・食品安全相:
今、日本は急速に人口が減少している。2022年で約80万人、山梨県が毎年1個なくなるぐらいのペースで、世の中全体が高齢化している。その中で人が人に寄り添うぬくもりのある社会を地域社会で作っていくためには、人間がやらなくてもいいことはAIやロボットなどに任せて、人間がやらなければいけないことに集中していかなければならない。例えば過疎化が進んで、路線バスの本数が減ったり路線がなくなったというところがある。そこで、自動運転でバスやタクシーを走らせるなど、デジタル技術によって今まで人間がやっていた部分を補完する。町に診療所はあるが薬局はない場合に、薬をドローンで届けるなど。
反町理キャスター:
日本では、そんなチャレンジをしなくてもいいという雰囲気を感じるときがある。なぜこの国にチャレンジ精神が少ないか。
河野太郎 デジタル相 消費者・食品安全相:
ゼロリスクでなければダメだという意識がある。リスクと利益を考慮して利益の方が大きいから踏み出そう、という状況を作らなければいけない。今困っていないからいい、というのはやめて「こういうことが実現できるのならみんなで一歩踏み出そう」と。それができる世の中にしたい。
反町理キャスター:
次の総理についての世論調査の数字では、河野さんは2位の10.7%。話を聞いていると、石破さんや岸田さんがふさわしいと思う人と、河野さんを支持する人の間には質的な違いがあるのでは。
河野太郎 デジタル相 消費者・食品安全相:
気をつけて見ていきたい。ありがたい話。ご期待に応えられるよう、しっかりデジタルを頑張りたい。
反町理キャスター:
来年の2024年9月に自民党の総裁選があるが。
河野太郎 デジタル相 消費者・食品安全相:
来年のことを言うと鬼が笑いますから。
(BSフジLIVE「プライムニュース」8月24日放送)