自民党の派閥研修会がラッシュだ。しかし、人事をやっても、支持率回復は難しいとされている。

自民党の派閥研修会ラッシュについて、政治部・福井慶仁記者がお伝えする。
党内の“派閥研修会”がラッシュ
まず岸田内閣の支持率だが、ここ3カ月下がり続けていたものの、先週末に行ったFNNの最新の世論調査では、7月より0.2ポイントUPとわずかながら上がり、41.5%という結果になった。
これは支持率が下げ止まったということなのだろうか。

形の上では下げ止まりだが、自民党内からは「小康状態だ。この先どうなるかはわからない」と、依然として岸田政権の今後を、心配する雰囲気がある。
その自民党内で、今ラッシュを迎えているのが各派閥の“研修会”だ。

自民党には現在、最大派閥の安倍派、麻生派、茂木派、岸田派、二階派、森山派、そして、派閥より結束の緩やかな谷垣グループと、6派閥1グループが存在している。

この派閥の研修会が佳境を迎えていて、麻生派と茂木派は横浜で、安倍派と谷垣グループは軽井沢ですでに開催した。このあと、二階派が軽井沢、岸田派は山梨、森山派は鹿児島で開催する予定だ。
研修会は避暑地や地方で開くケースが多いが、どんなことをするのだろうか。

例えば8月20日に、軽井沢で行われた安倍派の研修会は、軽井沢プリンスホテルで開かれたが、会場に長テーブルを並べた着座形式だった。
そして、座長に就任したばかりの塩谷元文科大臣の挨拶で始まり、選挙戦略の専門家の講演、AIの専門家の講演と続き、約3時間で終了した。
研修会の醍醐味は“夜の懇親会”
研修会の醍醐味は、この座学の後に行われた懇親会にあった。

みんなで食事をしてお酒を飲むわけだが、この日も、一部の議員は2次会はもちろん、3次会まで行ったということだ。

こうした研修会“夜の部”の目的について、ある議員に聞いてみたところ「同志の結束を確認し、普段できない様々な情報交換を行うには、絶好の機会だ」と答えた。
さらに、「研修会終了後に、人事の希望を提出することが多いから、お互い被らないように確認することもある」という人もいた。

秋に行われることが多いのは、人事の直前という意味合いもある。そこで、研修会の場を通して、人事に向けた派内調整を行う狙いもあるようだ。
では、2023年の人事は、どうなるのだろうか。

岸田首相は、9月中旬を軸に内閣改造・自民党役員人事を行う方向で検討していて、19日、人事についてこう述べた。
岸田首相:
先送りできない課題に取り組み、そして、答えを出していく。そのための適材適所。こういった考え方に徹して判断してきたい。
このように「適材適所」で判断したいと強調した。
改造人事をやっても“支持率回復”は難しい
岸田首相は、目玉人事と言えるような、思い切った人事をやりずらい状況に追い込まれていた。

その理由の一つは「大物が多すぎて、代えづらい」という点だ。

通常、目玉人事を行う際に注目されるのは、自民党側では副総裁、幹事長、政調会長といった役員クラス。内閣では、要の官房長官などが挙げられる。
ただ、麻生副総裁はお世話になりすぎてて代えられない。茂木幹事長も54人の議員を抱える派閥のトップで、外せば、その支持を失ってしまう。
では、政調会長と官房長官はというと、100人の最大派閥・安倍派の“5人衆”と言われる幹部のうちの2人が務めている。いまだ後任の会長が決まらず、この“5人衆”と言われる幹部が、100人の派閥がバラバラにならないよう、絶妙な力関係で維持している。
仮に、そこの2人を代えてしまうと、この絶妙なバランスで保っている安倍派からの支持も崩れる恐れがある。そのため、皆「外しにくい」状況が、できてしまっている。

中には、総理が党内でより広い支持を得るため、現在は非主流派とされつつも、大きな影響力を持つ菅前総理や、世論調査で「次の総理に一番ふさわしい」として名前が挙がる、石破元幹事長の重要ポストでの起用を推す声もある。
しかし、支持率が下がっている今の状況で、麻生副総裁や茂木幹事長といった党内の安定を捨ててまで、非主流派を取り込む人事をやる余裕はないと言える。

さらに、もう一つは「改造はリスクを伴う」ということだ。
1年前の内閣改造では、起用した閣僚に旧統一教会問題が浮上した。結局、辞任ドミノが起きて支持率がガタ落ちした。
あまり奇をてらった人事や、大幅に人を代えると、それだけその閣僚に不祥事が起きるリスクが出てくる。

総理の周辺からはすでに「人事をやったからといって、支持率への影響は限定的」だと、過度な期待への予防線を張る声が出ている。
ただ、少しでも何とかしたい岸田首相が、党内の重鎮からも推す声がある小渕優子組織運動本部長を人事で起用するか、この辺りが注目だ。
(「イット!」 8月23日放送より)