廃業により取り壊される運命にあった老舗の“木桶”に再び光が当たった。新庄の漬物文化を100年近く支えた木桶を、後世に残す取り組みを追った。
歴史ある新庄市の漬物店が廃業
この日、行われていたのは廃業した店の解体。片づけをしていたのは、山形・新庄市の漬物店「キッコーセン醤油醸造」の3代目・大泉さんだ。

キッコーセン醤油醸造・大泉礼二さん:
この桶があったから、みそやしょうゆを仕込んで100年近く商いをやってきた。ご苦労さま。お疲れさまでした。ありがとうという感じ

1928年(昭和3年)、新庄市の中心部に創業したキッコーセン醤油醸造。地元の大根やキュウリを秘伝のみそに漬け込んだ「新庄漬」は、最上地域を代表する名産品となった。

しかし、需要の減少と新型コロナの影響で業績は落ち込み、2021年に93年の歴史に幕を下ろした。
先人の技術が詰まった「木桶」
店の解体が進む中、大泉さんが唯一、廃棄するのをためらったのが木桶だ。

造り酒屋で50年以上酒の仕込みに使われていた10個を先代がもらい受け、大切に使い続けてきた。さびるのを防ぐため鉄くぎは使わず、竹くぎだけで組み上げられた桶は、使い込むほどこうじ菌がスギ材に浸透し、強度が増すという江戸の職人たちが極めた匠の技が見られる。

キッコーセン醤油醸造・大泉礼二さん:
200年使った桶を実際に目にする機会はあまりないと思う。いろいろな人が、いろんなアイデアで生かしてもらえないかと
大泉さんの呼びかけに友人たちが駆けつけた。

クリタ園芸・栗田哲人社長:
捨てられると聞いていたので、廃棄はもったいない。今これだけの材料はまずない。これだけの大きさの桶を造るところもない
新庄市で花の生産を手掛ける栗田さんは、10個のうち2つをいったん分解して持ち帰った。

クリタ園芸・栗田哲人社長:
部品の使い方・組ませ方…昔の人の知恵はすごい。板材がぴっちりくっついてる。昔の技術でこの精度の高さはすごい

残りの8つは最上町の建設会社と造園会社が引き取った。すでに3つが川の駅のオブジェに姿を変え、残りはこの秋オープンする「道の駅」の陳列棚などに活用できないか検討されている。
木桶が伝える“新庄の歴史”
栗田さんはというと…。

クリタ園芸・栗田哲人社長:
ベンチや装飾品に生かしたい。「新庄にこういうものがあった」と伝えられるものにできればと
受け継がれて200年。新庄の漬物文化を支えた木桶は、これからも新たな役目を担い生き続ける。
(さくらんぼテレビ)