11月に入り山形県内でのクマの目撃が“過去最多”を更新し続けていて、猟友会のハンターの負担が大きくなっている。FNNが行った調査によると、支払われる報酬は自治体によってそれぞれ異なり、その差が大きいことがわかった。

自治体によって報酬の“支給方法”異なる

山形県によると、2025年の県内のクマの目撃件数は2386件・捕獲件数は969件と、いずれも過去最多となっていて、猟友会のハンターへの負担はこれまでになく大きくなっている。

山形県内での目撃件数2300件超え・1000件に迫る捕獲数は過去最多
山形県内での目撃件数2300件超え・1000件に迫る捕獲数は過去最多
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FNNでは11月10日~20日にかけて、県内の全市町村に対し「ハンターへの報酬」についてアンケートを実施し、35市町村中31の市町村から回答を得た。

報酬の支給方法は、「時給」「日当」「捕獲1頭あたりの報酬」など市町村によって異なる
報酬の支給方法は、「時給」「日当」「捕獲1頭あたりの報酬」など市町村によって異なる

クマ捕獲・駆除の“報酬額”にも差

猟友会・ハンターへの報酬の支払い方を具体的に見てみると…。

「時給」換算で報酬を支払っているのは、山形市・天童市など14の市町村
「時給」換算で報酬を支払っているのは、山形市・天童市など14の市町村

ハンター1人あたりの時給が最も低いのは鶴岡市で956円。

米沢市・舟形町・大蔵村が最も高く2000円で、米沢市は緊急対応時に時給を3000円に引き上げている。

「日当」として報酬を支給しているのは、新庄市・尾花沢市など5つの市町村
「日当」として報酬を支給しているのは、新庄市・尾花沢市など5つの市町村

金額は1人あたりで、新庄市4000円、東根市8200円と倍の差がある。
金山町は最大で1万円としている。

時給・日当ではなく、猟友会の“活動”に対し「単価」を設定して支払っているのは12の市と町
時給・日当ではなく、猟友会の“活動”に対し「単価」を設定して支払っているのは12の市と町

具体的には、クマの捕獲1頭ごとの報酬や、箱わなの設置・見回り費などで「単価」を設定しているという。

捕獲1頭あたりの報酬を見ると、戸沢村の5000円に対し南陽市は3万円と6倍の差がある。
上山市は、1頭の捕獲でも3頭の捕獲でも“1件”として10万円を支払っている。

また大江町は捕獲のほかに、「被害現場の確認費」や「箱わな設置後の見回り費」など細かく6つの項目を設定して支払っている。

「時給」「日当」+「捕獲報酬」と、組み合わせて支払っている市町村が9つ
「時給」「日当」+「捕獲報酬」と、組み合わせて支払っている市町村が9つ

山形市・飯豊町など9つの市町村は「時給」「日当」の支給に加え、捕獲1頭あたりの報酬を支払っている。

負担増受け“報酬増額”検討する自治体も

このように、自治体がさまざまな形で報酬を設定する中、2025年度、大幅に増額したのが舟形町だ。

時給を1000円から2000円に倍増。
さらに、これまでは捕獲報酬がなかったが、捕獲1頭あたり2万円の報酬を新たに設けた。

時給倍増・捕獲報酬新設で猟友会の負担増に応えようとする舟形町
時給倍増・捕獲報酬新設で猟友会の負担増に応えようとする舟形町

舟形町農業振興課・斎藤雅博課長は、「猟友会のみなさんはクマ対策の先頭に立ち命がけで活動している。負担は非常に大きく、猟友会員は高齢化・人数が減少している。金額的な支援も、猟友会・ハンターの話を聞き、必要なものを講じ寄り添っていきたい」と話す。

クマ被害・目撃の急増を受け、舟形町以外の市町村でも報酬増額が検討されている
クマ被害・目撃の急増を受け、舟形町以外の市町村でも報酬増額が検討されている

「クマ被害の急増を受けて報酬などを引き上げた」と回答したのは8つの市町村。
また、「報酬の増額を検討している」と回答したのは20の市町村だった。

2025年度に報酬を引き上げたばかりの舟形町も、日々増え続ける猟友会への負担を目の当たりにし、さらなる増額の検討を始めている。

不可欠なのは国からの交付金増額

しかし、報酬の増額を実現するために不可欠なものとして「国からの交付金の増額」が挙げられる。

猟友会の負担増を考えると、捕獲1頭あたり少なくとも3万円の報酬が必要と考える舟形町
猟友会の負担増を考えると、捕獲1頭あたり少なくとも3万円の報酬が必要と考える舟形町

舟形町農業振興課・斎藤雅博課長:
少なくとも3万円、1頭あたり3万円は必要。
国の対策で金額・単価が示されていないが、今の状態ではまったく足りない状況。
たくさん予算をつけ、単価の引き上げをお願いしたい。

アンケートに回答があった31市町村のうち28市町村が「交付金の増額を求めたい」としている
アンケートに回答があった31市町村のうち28市町村が「交付金の増額を求めたい」としている

FNNのアンケートで、「国からの交付金が不足している」または「将来的に不足するとみている」と回答したのは25の市町村。
「国に増額を求めたい」と回答したのは31市町村のうち28の市町村にのぼった。

クマ目撃多い鶴岡市は“ふるさと納税”活用も

2025年のクマの目撃件数が450件余りと、県全体の5分の1を占める鶴岡市もアンケートで「交付金の増額を求める」と回答している。

10月23日に市長に就任したばかりの佐藤市長。就任早々クマ対策に追われている
10月23日に市長に就任したばかりの佐藤市長。就任早々クマ対策に追われている

鶴岡市・佐藤聡市長:
猟友会は報酬が出るが、実質的にはボランティアという形で銃などを用意している。
それがいつまで続くかわからない、回数が多いと負担感もある。
命をかける厳しい現場に立ち会うということ。銃弾も今は報酬に含まれるという考え方のようだが、そこも何らかの形で負担するのが望ましい。

箱わなの設置・捕獲・駆除など、クマ対策は猟友会といえども1人ではできない
箱わなの設置・捕獲・駆除など、クマ対策は猟友会といえども1人ではできない

鶴岡市は会見で、猟友会によるクマ対策などの事業に充てる目的で「ふるさと納税」を活用する方針も明らかにしている。

報酬の問題に加え、今後、猟友会の高齢化による銃を扱える人材の育成・確保も課題に…
報酬の問題に加え、今後、猟友会の高齢化による銃を扱える人材の育成・確保も課題に…

各自治体とも、クマ対策の予算をどのように工面・確保するか、あの手この手で対応・苦慮している様子が伝わってきた。
クマの出没は12月以降も続くとの見方が強まる中、手探りでの対応はまだ続きそうだ。

(さくらんぼテレビ)

さくらんぼテレビ
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