2022年8月、福井・南越前町では県内史上最多の雨が降り、未曽有の水害が発生した。あれから1年、現地を訪れると水害に遭った住宅は更地になり、17人の小規模集落から5人が去っていた。区長は「大雨は30分間、でも復旧には数年」と肩を落とす。
豪雨から1年 被災地の今
2022年8月5日、かつてない豪雨が南越前町を襲った。24時間降水量は405.5mmと県内史上最多となり、今庄地区では川が氾濫した。

その上流にある大桐(おおぎり)区は橋が崩落したため車両が入れず、一時、孤立状態に陥った。当時12世帯17人が暮らしており、住宅5軒が床上浸水。断水は1週間余り続いた。
この大雨は復旧費用を国が負担する「激甚災害」に指定された。あの日から1年。当時、この地区の取材を続けた佐橋嬉香アナウンサーが、現地を訪ねた。

佐橋嬉香アナウンサー:
大雨で橋脚が崩れ落ちましたが、今もパイプがむき出しのままとなっています。重機が入り工事が進められていることは分かりますが、復旧にはまだ時間がかかりそうです

橋の復旧はいまだ続いており、地区住民は1年たった今も迂回路での片側交互通行を余儀なくされている。南越前町によると、工事は少なくとも2年はかかり、2024年秋ごろの完了を予定している。
大雨を教訓に新たな整備も
艸分(くさわけ)英治区長はこの1年、集落の復旧作業や新たな防災対策の取り決めなど対応に追われてきた。「水害に遭った家は2023年3月にすべて取り壊され、今は更地となった」と説明する。新しく家を立て直す住民がいる一方、5人がこの集落を離れたという。

艸分英治区長:
別の場所に家を建てた人もいるし、娘の家に行った人もいる。さびしいが、去年の被害を考えればやむを得ない

大雨の爪痕は今も消えることはない。地区内には氾濫した川から流れてきた流木や、積み重なった土砂が、いたるところに残っている。

艸分英治区長:
橋がまだ通れないので、大型車が入れず一挙に運び出せない。すべて運び出すまでには1年半から2年かかると言われた

大雨を教訓に、新たに整備したものもあった。地区住民が話し合い氾濫した川に「避難判断ライン」を定めたほか、南越前町でも監視カメラや水位計の設置を決めている。ただ計器については、世界的な半導体不足の影響で2023年秋ごろの設置を見込んでいる。

艸分英治区長:
30分間の大雨の被害でこんなにきついのか。ボランティアが来てきれいにしてくれて、それで終わりなら楽だが、それ以後が苦痛です…。なかなか前に進まない。思うようにはいかないのが現実
(福井テレビ)