2023年で終戦から78年となる。岩手・大船渡市では8月11日、世代を超えて戦争の記憶を語り継ぐ交流会が開かれた。中心となっていたのは、高校時代に地方の戦争証言を記録する団体を立ち上げた大学生の女性だった。

戦争の記憶を後世に…活動続ける若者

2023年3月に大船渡高校を卒業した立教大学1年の小林友香さん(19)は、戦争の体験談を語り継ぐ活動を行う学生の団体「peace&voice」の代表だ。

peace&voiceの代表、小林友香さん
peace&voiceの代表、小林友香さん
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peace&voice代表・小林友香さん:
玉音放送が流れて「終戦になりました」となった後に「誰も敗戦について語らなかった」という話をしていた

11日に大船渡市でセミナーを開催し、自らが聞き取った太平洋戦争の体験談を約50人の前で講演した。

peace&voice代表・小林友香さん:
学校で寄生虫を殺す殺虫剤が配られて、それを飲み薬として飲んでいたという話があった

団体の活動をする上で小林さんが大切にしているのは「地方での戦争体験を聞くこと」。知られざる生の声を多くの人に語り継ぎたいと考えているからだ。

peace&voice代表・小林友香さん:
「地方にも戦争被害が確かにあった」と伝えたいと思って、あえて地方の人に話を聞くようにしている

4年前に亡くなった曾祖母の戦争の体験談が、今の活動に結びついているという小林さんは、大船渡高校の2年生だった2021年に「peace&voice」を立ち上げた。現在は同じ志を持つ全国の大学生と高校生14人のメンバーで活動している。

「peace&voice」は、これまで約10人の戦争経験者と対談し、その内容をSNSなどで発信。こうした活動が認められ、2022年11月には、岩手県ユネスコ連絡協議会の活動奨励賞を受賞した。

peace&voice代表・小林友香さん:
戦争経験者が年齢的に少なくなっているというのがあり、託されているというか、「自分たちの思いを後世に」というのをすごく感じる

戦争経験者が伝える“悲惨な過去”

地方の戦争体験を知ってもらうため、この日の講師に招かれたのは大船渡市内に住む田村長平さん(86)。2022年の「peace&voice」活動として体験談を聞き取った人物だ。

語られたのは、田村さんが8歳のころに目の当たりにした大船渡の空襲だった。

田村長平さん:
私は飛行機に乗ってアメリカ人が盛駅を攻撃するのを目視していた

終戦間際の1945年7月15日と8月9日、現在の大船渡市では米軍による空襲を受け、合わせて9人が死亡。田村さんは7月に空襲を受けた際に山に避難し、飛行機から身を乗り出した米兵が機関銃でふるさとを攻撃し続ける残酷なさまを見ていたという。

田村長平さん:
細浦湾の入口の石油タンク、綾里湾、ここを攻撃されたことが後でわかった

また、この日は共にセミナーを主催した「岩手・戦争を記録する会」が所有する大船渡の空襲に関する資料が紹介された。米軍の飛行士が報告のために残した大船渡湾とみられる手書きの地図には、7月の空襲で複数の船を沈め、さらに鉄道や造船所、灯台を攻撃したことなどが英語で記録されている。

田村さんはこうした資料や自分たちの言葉が物語る戦争の記憶を、小林さんたちの世代につなげてもらいたいと話す。

田村長平さん:
peace&voiceができてすごくうれしいし良かった。年を取るのが早いから跡継ぎを作っていきたい

未来へつながる“平和へのきっかけづくり”

この日、小林さんは戦争の被害を伝え続けることの大切さを改めて実感していた。

peace&voice代表・小林友香さん:
今後もメンバーと協力しながら、地方の戦争を経験した人の声を一つでも多く集めて、その声をつないでいくことで、若い人たちが関心を持つとか、平和にしていきたいと思うきっかけづくりをしたい

過酷な時代を生き抜いた経験者が若者に託すメッセージ。平和を願う、その一つ一つの声を小林さんが未来につないでいる。

(岩手めんこいテレビ)

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