「グッとくるお葬式」。どんなお葬式なのか気になるところだが、開発した広島の葬祭業者によると、故人の遺志と家族、参列者の故人への思いを共有して「元気を与える」お葬式ということだ。その「グッとくる」内容を取材した。
3Dプロジェクションマッピングで演出 故人の人となりを映像で紹介
木村仁美アナウンサー:
新しい葬儀とは、どんなものなのですか?
さいき葬祭・柚木力社長:
3Dプロジェクションマッピングを使って演出した“グッとくるお葬式”です

葬儀の開始前に流す映像は故人の人となりがわかる内容になっている。


さいき葬祭・柚木力社長:
普通の葬式に参列すると、その人を想うような間もなく、式が始まって1時間たって、結局どんな方の葬式だったのか分からないということがあり、心に引っかかっていた

さいき葬祭・柚木力社長:
なので、葬式が始まる前に、その人がどういう人だったのかが、わかったり、家族の方がもう1度思い出して、気持ちを集中して葬式に入ってもらう。この映像は葬儀の開式前に流すものなのです

この斎場は、新たな葬儀を実現するために7月末にリニューアルされた。

さいき葬祭・柚木力社長:
グッとくる葬式をどうしても作りたいので、今まで通りの当たり前がそこにあったら、感動もなければグッとくることもない。だからグッとくるために変えようと

柚木社長のこだわる「グッとくるお葬式」。
実は、同じ時期に全く同じことを考えていた人がいた。
広島マツダ・松田哲也会長兼CEO:
故人の遺志や遺族の想いとか、来てくれた方の故人の生前の想いの共有みたいなものが、どうしても感じられない部分を変えたかったというのはあります

自動車を販売する広島マツダでは、映像を生かした新しい葬儀の形としてビジネスをスタートしたが…

広島マツダ・松田哲也会長兼CEO:
みなさん、話だけは「いいね」と「これからの時代だね」と言ってくれるのですが、やっぱり伝統と歴史を覆すこと、既成概念を破ることがなかなかできなくて、受け入れてもらえる企業がなかった。今回柚木社長と話をしてその思いを伝えた時に「いいね。いいね」と言ってくれるんですが、まさか本当に共鳴してくれるとは思わなかった

2人の気持ちが1つになって、ついに7月、「広島マツダ」の優れた技術力を活用して、「さいき葬祭」が新たな葬儀をプロデュースする協定を締結。
こうして「新たな葬儀のカタチプロジェクト」が誕生した。

さいき葬祭・柚木力社長:
1つ目は故人を追悼する。次は感謝する。3つ目に元気を与える

広島マツダ・松田哲也会長兼CEO:
真心をもっと追求したような葬儀の仕方なので、受け入れられるのではないかと思う

しかし、この「グッとくるお葬式」には実は大きな問題があった。
終活の一環として本人に営業をかける
さいき葬祭・柚木力社長:
今までの葬式の主体はなんだかんだと言っても子供さんだったり送り手側だった。今回は主体がご本人

木村仁美アナウンサー:
本人に営業をかけるということは「あなたもうすぐですよね」ってことになりますよね。難しいですよね?
さいき葬祭・柚木力社長:
営業の方法は終活セミナーをします。終活セミナーを実際にして、そこで訴えていく

すでに、終活セミナーを独自に開催していて、企業経営者を対象にしたセミナーには20数社が参加。経営者らにとって、最後のシーンでメッセージを残すことは大切な仕事の1つといえる。

さいき葬祭・柚木力社長:
事前に会員になってもらうと、ここで流す映像を撮影することは無料でさせてもらう。撮っておくのが動画になる。保存しておいて編集もできるようにしておく

さらに、柚木社長にはもう1つ、以前から気になっていたことがあった。
最後の晩に家族で鍋を囲み「グッとくる」お通夜
木村仁美アナウンサー:
豪華ですよ。葬儀場のご飯とは思えない
さいき葬祭・柚木力社長:
これが美酒鍋です

今回の斎場リニューアルに合わせて、2階にはお通夜に特化したレストランを作った。

さいき葬祭・柚木力社長:
お通夜の晩というのはすごく大事な「グッとくるポイント」だと思っている。お通夜の時間はとても大事じゃないですか。家族みんなで最後にお父さんとお母さんとご飯を食べているというところを提供したくて。まるで家のように仕立てて食べてもらう

柚木社長の思いを詰め込んだ「グッとくるお葬式」。
そこには、葬儀のプロが考え抜いた将来の葬儀の在り方への深い思いがあった。

さいき葬祭・柚木力社長:
今から残っていく葬式は、結婚式などと一緒で、いかに感動したかが必要だと思います。ただ、人が亡くなられたことで感動することは不謹慎じゃないですか。でもやっぱりグッとくる。そして一生記憶の中に残るので、亡くなった方は、一生記憶からなくならない。そういう葬儀をやりたい

木村仁美アナウンサー:
「従来の葬儀を否定するわけではないけど、新しい選択があってもいいのではないか?」という考え方。取材を通じて「葬儀って何だろう」と改めて考えさせられました

コメンテーター:広島大学大学院・匹田篤准教授:
非常に興味深い。お葬式は故人をしのぶもの。故人がプロデュースしたものは一段とグッとくる。確か、坂本龍一さんが自分のお葬式で流す曲を自分で選んでいる。そういうことは徐々に広まっていくと思う

葬儀をあらかじめ自分でプロデュースする。やってみたいという人は、意外に多いのではないだろうか。
(テレビ新広島)