今年の夏も厳しい暑さが続いているが、少しでも和らげるにはどうすればいいのか。

暑熱リスクと色彩の関係性を調べている、国立研究開発法人国立環境研究所(茨城・つくば市)の一ノ瀬俊明さんによると、服の色もポイントだという。

一ノ瀬さんたちは2019年6月26日、色だけが異なるポロシャツ9枚(赤・白・青・深緑・灰・黒・紫・黄・緑)を屋外の日向に並べて、表面温度の変化を比較する実験を行った。

ポロシャツを日向に並べた実験の様子。画像の下半分は、約5分後の表面温度(提供:国立環境研究所)
ポロシャツを日向に並べた実験の様子。画像の下半分は、約5分後の表面温度(提供:国立環境研究所)
この記事の画像(5枚)

約5分後にサーモグラフィーカメラで表面温度を計測したところ、「白・黄」「赤・灰」「青・紫」「深緑・黒・緑」の順番で熱を持ちにくかった。

場所によって多少の温度差はあるが、黒や深緑のシャツでは50℃近くまで熱くなったのに対して、白のシャツだと30℃前後でとどまったという。※気象庁のデータによると、この日、実験場所の近くの観測地点(つくば・館野)の最高気温は29.9℃

色によっては20℃ほどの差が出たことになるが、この違いはどうして生まれるのか。

色でエネルギーの反射率・吸収率が違う

一ノ瀬さんに聞くと、太陽が放射するエネルギーと色の反射・吸収が関係しているという。

太陽はエネルギーを放射している(画像はイメージ)
太陽はエネルギーを放射している(画像はイメージ)

太陽はエネルギー(可視光線や近赤外線など)を放射しているが、このエネルギーの反射率や吸収率は物体の色によって異なる。そしてエネルギーは吸収されると熱に変わる。そのため、服の色で熱の持ちやすさも違ってきて、吸収率が高いほど熱を持ちやすいと考えられるという。

実験で色の吸収率を調べたところ、深緑(87%)、黒(86%)、青(84%)、緑(84%)、紫(82%)、赤(78%)、灰(75%)、黄(70%)、白(63%)となっていて、表面温度の差とも整合性が取れたという。※波長域350nm~1050nmにおける吸収率。

それでは、暑い時期の衣類はどう選べばいいのか。

暑い日の衣類は何色を選べばいい?

一ノ瀬さんによると、一般的な衣類や帽子などであれば、色と熱の持ちやすさは実験結果と同様に考えていいという。暑くなりそうなら、深緑、黒、緑などは避けつつ、吸収率が低い(反射率が高い)色を選ぶといいかもしれない。

暑い日は服の色を意識してもいいだろう(画像はイメージ)
暑い日は服の色を意識してもいいだろう(画像はイメージ)

一ノ瀬さんは「白色ばかりだと汚れやすい、趣味に合わない人もいるかもしれません。その他の色なら、黄色や灰色、赤色くらいまでが無難だと思います」とアドバイスしている。

ただ、特殊な染料を使ったり、生地の繊維を加工したりすることで、吸収率が高い色でも、熱を持ちにくくすることもできるという。深緑や黒などが好きだという人は、そうした衣類を探してみてもいいかもしれない。

熱中症にも注意(画像はイメージ)
熱中症にも注意(画像はイメージ)

また、一ノ瀬さんは「日向で太陽に向かって静止しているような状況にならないことが重要です」とも注意喚起している。熱を持ちにくい色の衣服でも、熱中症には注意してほしい。

暑くなりそうと思ったら、白色、黄色、灰色、赤色。衣類選びの参考にしてはいかがだろう。

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。