名古屋場所で大関昇進と初優勝を決めた豊昇龍。千秋楽当日に歓喜のインタビューをしている最中、豊昇龍の電話が鳴った。電話口から開口一番聞こえてきたのは「オメデトー!!」という威勢の良い声。そう、叔父である第68代横綱・朝青龍さんからの祝いの電話だった。

超新星・伯桜鵬との「にらみ合い」
名古屋場所で大関取りに挑んだ豊昇龍。12勝を挙げれば「3場所連続三役の地位で33勝以上」という目安をクリアできる状況で、今場所に臨んでいた。
順調に勝ち星を重ね、14日目を終えて11勝3敗。あと1勝で大関昇進目安に届くという状況で迎えた千秋楽の相手は、今場所旋風を巻き起こした超新星・19歳の伯桜鵬。
大関昇進をかけた運命の大一番。取組前にはお互いにらみ合う一コマも。

「にらんできたね、向こうが先だった。『俺もにらむぞ』と『俺もにらみ負けないぞ』という気持ちでした。」
にらみ合いで一歩も引かなかった豊昇龍は、勢いに乗るホープを圧倒し豪快な上手投げで完勝。見事、大関昇進目安をクリアし大関昇進を確実なものに。さらに、優勝決定戦でも本割で敗れていた北勝富士に勝利し初優勝。ダブルの歓喜に酔いしれた。

千秋楽で大関昇進と初優勝を劇的に決めた豊昇龍。プレッシャーのかかる中でも驚異的な勝負強さを発揮できたのはなぜなのか。そこには、大横綱である叔父からの、ある「言葉」があった。
叔父・朝青龍の言葉「自分を信じろ」
実は、名古屋場所の前にモンゴルに里帰りしていた豊昇龍は、そこで叔父からこんな言葉をもらっていたという。
「『自分を信じろ、体はできているからあとは自分を信じるだけだ』と言われました。(今場所敗れた)琴ノ若と北勝富士との一番の後にも電話で、『大丈夫だよ』、『自分を信じていけ』と言われ、言われた通り自分を信じていってよかったと思います。」

三役に上がってから勝ち越しは続けているものの、思うような成績が挙げられない日々が続いた。その間に同郷で仲の良い霧島が先に優勝と大関昇進を果たし、少なからず悔しい思いを抱えていた豊昇龍。
自信を失ってしまってもおかしくない、そんな時に、誰よりも相撲を知り、誰よりも自分を見てきてくれた人が言ってくれた、「自分を信じろ」という言葉。偉大な叔父のエールが彼の背中を押していた。

叔父・朝青龍「今日は泣いた」
まさに、そんな話をしている時、豊昇龍の電話が鳴った。冒頭のシーンだ。そこから叔父は、まるで自分のことのように喜びを表現する。
「久々に見て今日は泣いた。勝てるんだよ、絶対勝てるから、俺見ていてわかるんだから、自信持っていけ。まずは集中、集中したら敵はいないよ。久々に家内と一緒に泣いちゃったよ。今日は人生で忘れられない思い出だから、今日は目一杯楽しんでくれよ。」

その後も、叔父の喜びは止まらない。
「俺も名古屋場所で十両に上がったし、大関昇進したし、再び歴史が動いた感じ。すごく嬉しくて、喉が痛いくらい大声出しちゃったよ。自分は緊張しないけど、君の相撲見て緊張しちゃった。」
しかし、さすがは大横綱。甥・豊昇龍へのアドバイスも忘れない。

「名古屋場所の15日間はハラハラした。負けたのは集中力が足りなかったんだよ。もっと集中すれば星を伸ばす可能性は十分あった。自分の相撲を忘れずに、初日から千秋楽までの相撲を1個ずつチェックして見て。それがあなたの今後の活躍に対して大きな財産になる。お酒はほどほどにして、おじさんは相当飲んだけど。」
そして最後に、「大関・豊昇龍、かっこいいな!」と叫んで電話を切った。
まさに、嵐のような時間だった。
「さっき見たら目が赤かった。確かにモンゴルに帰った時に話して、『優勝したら泣くぞ』って言われていて。本当に泣いてらっしゃいました。」
そう話す豊昇龍の目にも、少しだけ涙が溢れていた。

偉大な叔父へ「ちょっとでも近づきたい」
実は、ことあるごとに叔父と比べられ、メディアから叔父に関する質問をされるのが嫌だったという豊昇龍。「なんで叔父さんのこと聞くんですか?」「別人だから!」と嫌悪感を隠さないこともしばしばあった。
偉大な叔父の存在は、憧れであり重圧にもなっていた。それでも必死にもがき、「大横綱の甥」というプレッシャーを跳ね除けて、大関まで辿り着いた。残すは叔父と同じ「横綱」のみ。
「すごい人だったんで、今でもすごいですけど。越えられないけど、ちょっとでも近づきたいですね。」

四文字に込められた豊昇龍の思い
26日に行われた大関昇進伝達式では、「気魄一閃(きはくいっせん)」という言葉で口上を述べた。この言葉には「どんなことがあっても、力強く立ち向かう」という意味があるのだという。叔父からもらった、「自分を信じろ」という言葉と重なる部分があると思うのは、私だけだろうか。
「自分を信じろ」
叔父からもらった大切な言葉を胸に、彼はこれからも龍のように駆け昇っていくことだろう。
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