XRがマンガの可能性を広げる。
マンガを“読む”ではなく“体感する”。
新感覚のマンガ体験イベント「マンガダイブ2023 夏 SHINJUKU」が、東京・新宿のLUMINE 0で、7月28日から8月23日までの期間限定で開催される。
リポート：
中に入ると、空間が立体的に動いているため、まさに自分がマンガの世界に入り込んだかのような体験ができます
会場内部には、12台のプロジェクターが設置されている。
マンガ原稿から独自に作り上げた3Dモデルを使い、壁面360°と床の全5方向に映像が投影される。
また、8個のスピーカーを音響システムと連動させることで、マンガの動きに合わせ、音を立体的に表現している。
マンガの力強い表現と、独自の没入感がある3D表現を組み合わせ、マンガに没頭する感覚をよりリアルに感じる新しい体験として提供している。
さらに、グッズにもある仕掛けが…
リポート：
こちらにQRコードをかざすと、マンガが動き出します
会場限定で販売されているのは、AR機能搭載のアクリルスタンドだ。
スマホをかざすことで、キャラクターが動き出すコースター（来場者限定特典）で“AR体験”できるなど、グッズでもマンガを体感できる仕掛けをしている。
集英社 XR プロジェクトリーダー・稲生晋之さん：
XRは作品の魅力を増していく翼だと思っています。ただ、あくまでも技術は技術として、大切なのは、作家という人間が作った作品のための新しい表現を作ることだと思っていますので、マンガが持つ世界観や、魅力を先端技術で新しく表現したいと考えています。
大好きなマンガの中に入り込む空間をご用意いたしましたので、作品ごと、名シーンごとたくさんの体験をご提供したいと考えております
今後は国内だけでなく、海外にも“新感覚のマンガ”を通して、日本のマンガという文化の魅力を広げたいとしている。
アニメ・マンガは海外で戦える“IP”
「Live News α」では、市場の分析や企業経営に詳しい、経済アナリストの馬渕磨理子さんに話を聞いた。
堤 礼実 キャスター：
今回の試み、どうご覧になりますか
経済アナリスト・馬渕磨理子さん：
好きなマンガの世界観に自分も入っていく「没入体験」の提案。ワクワクしますね。
いま、目で見たり、頭で考えるのではなく、カラダで感じる経験に、消費者は満足を感じるようになってきています。出版社も、マンガの読者だけではなく、マンガの世界観を体感するユーザーに満足を提供する今回の取り組みは素晴らしいです
堤 礼実 キャスター：
出版社のビジネスも変わってきていますよね
経済アナリスト・馬渕磨理子さん：
私たちアナリストの間で、「日本は何でこれから稼ぐのか」という議論をしたときに、世界で戦えるものとして、必ず挙がるのが「IPビジネス」、つまり「マンガやアニメを中心とした知的財産」です。そのアニメの原作となるマンガをおさえているのが、出版社です。
本が売れない出版不況と言われる中、集英社や講談社などの経営は絶好調で、その原動力となっているのがIPビジネスなんです
堤 礼実 キャスター：
そのIPビジネスの展開とは、具体的には？
経済アナリスト・馬渕磨理子さん：
例えば、「鬼滅の刃」や「SPY×FAMILY」などの爆発的なヒット作をもつ集英社の場合、売上高1951億円のうち、その半分以上はアニメ、ゲーム、グッズなどの展開から得られる事業収入が占めています。
なかでも、IPビジネスの核となる版権収入は、この10年ほどで約5倍の476億円に膨らみ、経営を支える成長ドライバーになっています
デジタル化は作者意思の尊重が必須
堤 礼実 キャスター：
今後、さらなる成長を遂げるための鍵については？
経済アナリスト・馬渕磨理子さん：
優れたIP。つまりは良い作品を生み出し続ける本質は、マンガを描く作家を大切にし、読者のニーズに答える事業運営です。
アニメ化やゲーム化、さらには今回のような超越現実・XRを展開する場合、マンガを描いている作者の意思を尊重していかないと、ビジネス展開そのものが難しくなってしまいます。
また、今回のXRは、ユーザーとの新しい接点として、これからアニメ、ゲーム、グッズに続く、第4の収益源として成長する可能性があります。
そのため今後は、原作マンガの世界観をデジタル上に再現するクリエイターとの関係強化も欠かせません
堤 礼実 キャスター：
今回はマンガですが、いま、映画なども「見る」だけでなく、「体験」する施設が登場しています。ビジネスとしてはもちろん、消費者としてもエンターテインメントの楽しみ方が増えるというのは、ワクワクしますよね
（「Live News α」7月27日放送分より）
