40年前の1983年、島根県西部で死者・行方不明者107人を出した「昭和58年7月豪雨」。浜田市では、災害が起きた7月23日、最大1時間降水量91ミリを記録。1日の降水量は331.5ミリに達した。実は最近の研究で、当時浜田市付近に「線状降水帯」が発生し、この大雨がもたらされたことが分かってきた。

7月は3.8倍!増加する集中豪雨

気象庁気象研究所・加藤輝之部長:
集中豪雨の発生頻度を過去45年間で調べた所、年間では集中豪雨の発生数は2.2倍、梅雨時期の7月に関しては3.8倍というように、集中豪雨の発生頻度は増えている

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集中豪雨や竜巻などの発生メカニズムの研究の第一人者として知られる、気象庁気象研究所の加藤輝之部長。国内各地で発生した大雨災害の分析・研究にあたり、1983年7月23日、島根県西部を襲った「58豪雨」についても、その記録的な大雨のメカニズムを分析している。

「58豪雨」でも「線状降水帯」が発生

気象庁気象研究所・加藤輝之博士:
対馬海峡から暖かく湿った空気が入ってくるという気圧配置になっている。まさしく島根の豪雨の記録的大雨の第一要因だった

西日本の北に伸びた梅雨前線に南西から暖かく湿った風が流れ込んで発達した雨雲が、この記録的な大雨をもたらした。加藤部長によると、この状況こそが今でいう「線状降水帯」だという。

気象庁気象研究所・加藤輝之博士:
積乱雲がちょうど海上の西で次々と発生して、それがつながって「線状降水域」を形成していることから考えて、まさしく「線状降水帯」だったと考えられる



当時、浜田市付近に「線状降水帯」が発生していたと指摘した。

「線状降水帯」の名付け親

実は、この「線状降水帯」を定義したのが、加藤部長。いわば名付け親だ。国内各地の豪雨災害の分析の過程で、前線に暖かく湿った空気が大量に流れ込むと、積乱雲が連続して発生し、線状の降水域が生まれることに気づき、2007年、これを「線状降水帯」と定義した。

「58豪雨」についても、加藤部長は気象データを細かく分析。積乱雲が発生する条件を満たした地点が、被害が大きかった浜田市、益田市と重なっていることがわかった。

「線状降水帯」発表最大30分前倒し

大雨災害発生の危険度が急激に高まる恐れのある「線状降水帯」。
最近も7月8日、島根県東部に発生し、松江市や出雲市で、住宅の浸水や土砂崩れなどの被害があった。

こうした大雨災害に備えるため、気象庁は、2023年5月から、「線状降水帯」の発生を伝える「顕著な大雨に関する情報」を最大30分程度前倒しして発表。
災害への危機感をいち早く伝える取り組みを進めているが、現状では、その予測には限界があると加藤部長は指摘する。

予測困難も…半日前予測目指す

気象庁気象研究所・加藤輝之博士:
「線状降水帯」は、確度は2~3割というところなので、予想するのはとても難しい現象。気象庁も、2030年に、市町村単位で線状降水帯の「半日前予測」を出すことをめざし、精度を上げようと努力していく

気象庁は、2030年には、発生の半日前に市町村単位で危険度が分かる精度の高い情報を提供できるよう研究を進めています。そのうえで、情報を受けた時の対応が重要だとしています。

リスク高いところは早めに避難!

気象庁気象研究所・加藤輝之博士:
情報を受けた時に、自分がどういう行動をすべきか重要になってくる。リスクが高いところに住んでいる人は、レベルが低い情報であっても早めに避難など対応することが大事

あらかじめ自治体ごとに提供される「ハザードマップ」を確認して、住んでいる地域の危険度を知っておくこと。そして、危険を知らせる情報を受け取ったとき、どのような行動を取るか考えておくこと。

こうした災害への日ごろからの備えが、被害を抑えることにつながる。

(TSKさんいん中央テレビ)

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