チャットGPTなど「生成AI」は教育現場でどう活かすのか。現在も様々な議論が行われている。そんな中、「進研ゼミ」などで知られる株式会社ベネッセコーポレーションが、この夏に小学生向けの生成AIサービスを提供する。

(出典:ベネッセ)
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ベネッセが開発したのが「自由研究お助けAI」。小学生の学習向けにカスタマイズし、AIキャラクターとのやり取りと通じて自由研究のアイデアやテーマをみつけるためのヒントを提供するという。

例えば、以下のような形でAIとやり取りをしていく。

(AIとユーザーのやり取りの例)

あなた:
きょうりゅうの生態ついて調べようと思います。 どのように進めればよいでしょうか?

AI:
「きょうりゅうの生態」について自由研究をするのは素晴らしいアイデアです!まずは「きょうりゅうの生態」について調べてみましょう。食べ物や生息地、生態系など、興味のあることを深く掘り下げてみると面白いですよ。また、自分でイラストや模型を作ってみるのも楽しいですよ。

あなた:
どのようにまとめるのがよいですか?

AI:
まとめ方は自分でアレンジすることができますが、例えば以下のようにまとめると良いでしょう。
1.きょうりゅうの種類や大きさ、生息地などの基本的な情報
2.食べ物や繁殖についての詳細な情報
3.きょうりゅうの特徴や進化についての情報
4.実際に見たり、模型を作ったり、絵を描いたりして感想や発表をする
このように順番にまとめると、自分が調べたことをわかりやすく伝えることができます。

答えを提示するのではなく、例えば「読書感想文を書いて」と指示した場合、「自分なりの感想を書いてみましょう」という答えが返ってくるとのことだ。

(出典:ベネッセ)
(出典:ベネッセ)

安全性にも配慮しており、利用には保護者のメールアドレスが必須で、使う前は必ず「必ずおうちのひとといっしょに使おう」などの「使い方の5か条」を表示し、情報リテラシーを学ぶようになっている。

使い方の5か条(出典:ベネッセ)
使い方の5か条(出典:ベネッセ)

なお、入力した内容はAIの再学習には使わないほか、自由研究のサポート以外の質問をすると警告メッセージを表示したり、1日の質問回数を制限するなどの設計にしているという。しかし同社は、このような設計でも現在の技術では誤情報を完全に排除することはできないとして、保護者と一緒に使うように案内している。

「自由研究お助けAI」は、7月25日から9月11日まで提供する予定で利用は無料。進研ゼミの会員でない人でもパソコンやスマホなどで公式サイトにアクセスして使うことができる。

(出典:ベネッセ)
(出典:ベネッセ)

ところで、小中学校での教育現場における生成AIの使い方に関して、文部科学省が暫定的なガイドラインを7月4日に公表した。

ベネッセの「自由研究お助けAI」は、このガイドラインに則った使い方ができるものなのだろうか?そもそもなぜ、小学生向けの生成AIサービスを始めるのか?

ベネッセグループを統括するベネッセホールディングスの担当者に聞いた。

未来を生きていく子どもたちの学びに活かしてほしい

――なぜ小学生向けの生成AIサービスを提供するの?

現在、生成AIの登場により、利便性が向上する一方で、子どもたちの思考力が損なわれるのではないかという懸念から、教育サービスにおける活用については慎重に議論されています。

ベネッセが独自に小学生親子に行った「ChatGPTの利用に関する意識調査」においても保護者の約6割はChatGPTの利用に肯定的である一方で、「ChatGPTを利用してほしくない」と考える保護者も一定数存在しており、その約半数が「自分で考えなくなりそうだから」といった思考力低下に関する懸念を持っていることが明らかになりました。

ベネッセの「進研ゼミ」は、これからの未来を生きていく子どもたちに、安心・安全な環境の中で生成AIに早くから触れ、学びに活かしてほしいと考えています。そこで「進研ゼミ小学講座」は、小学生向けに安心・安全に配慮し、子ども自身の思考力の向上や興味関心を広げるため、夏休みの自由研究をテーマに、ベネッセが学習向けに独自にカスタマイズした生成AI「自由研究お助けAI」を開発しました。


――「自由研究お助けAI」は、どんなカスタマイズをしている?

個人情報やプライバシー保護など、セキュリティ観点への配慮のため、記述内容をChatGPTが学習しないようにさせています。危険、公序良俗に関する内容にかかわるNGワードを設定し、そうした入力を受け付けないようにしています。

また質問の文字数および回数を制限し、複雑な質問への回答はしない機能にしています。制限する文字数や回数は現在検討中です。


――開発で最も苦労した点は?

生成AI利用のリスクを考慮しながら、安心・安全に配慮した仕様をつくるところが苦労しました。


――「自由研究お助けAI」は、文科省が公開した生成AIのガイドラインに則っている?

ガイドラインの原案に記載されている「情報活用能力の重要さ」などは、私たちも重要と考えています。また今回の企画は、保護者の方と一緒に使用しながら、お子さまの考える力を引き出し、情報リテラシーも同時に学ぶことを意図しています。


――生成AIを小学生などの子どもが使うことを、どう捉えている?

慎重な議論はもちろん大事ですが、未来を生きる今後の子どもたちにとって、AIとのかかわりは避けて通れないことと考えており、その使い方を指導することもまた、教育であると考えています。

安心安全には最大限配慮しつつ、子どもの好奇心を否定せず、その気持ちに蓋をしないよう、知ろうとする力を育み、新しいアイデアや考え方を広げる機会となることを意図しています。

(画像はイメージ)
(画像はイメージ)

子どもの自由研究を、どう指導したらいいのか、どこまで手伝ったらいいのか迷っていた親にとって、このようなAIは頼もしい味方にもなるかもしれない。AIが当たり前になるこれからに向けて、子どもと一緒に使ってみても良いことだろう。

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。