2024年1月に閉店する島根・松江市の一畑百貨店。雇用や地域経済への影響に加え、「跡地」の活用も閉店後の課題のひとつに挙げられる。3年前、全国で初めてデパートが「空白」になった山形県の例などを参考に、この課題について考える。

全国初“デパート空白県”では…

山形市でフリーライターとして活動する渡辺大輔さん。2020年に閉店したデパート「大沼」(山形市)の関係者に取材を重ね、山形の商業史を振り返る著書「さよならデパート」を2022年に出版した。

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フリーライター「さよならデパート」著者・渡辺大輔さん:
デパート側も消費者側も、これまでのデパート像、あるべきデパートの姿と決別していかないと。どちらも生き残れない

一方でデパートの跡地は、市民が心を寄せる場所になってほしいと、渡辺さんは話した。

フリーライター「さよならデパート」著者・渡辺大輔さん:
デパートに何かしら、みんな楽しい思い出を持っているはずなので、新たに作り変えるとなったら、自分たち、子どもたちに、楽しい思い出が作れる場所になってほしい

山形県では、2020年当時、県内唯一のデパートだった「大沼」が閉店。全国で初めて“デパート空白県”となった。

閉店から約3年がたち、「大沼」の跡地は山形市の公社が取得したが、建物は解体されず今もそのままだ。跡地の整備について、市の担当者に聞いた。

山形市まちづくり政策部・佐藤一大次長:
「大沼」のあった場所の西隣に「山形市立病院済生館」という病院がある。現地で建て替えるには、「大沼」の敷地が有効に活用できるのではということで、市が関与している

隣接する市立病院の建て替えにあわせて「大沼」の建物を取り壊し、商業と福祉の複合施設として整備する方針だ。

閉店した百貨店のその後

全国の都市や商業の問題に詳しい「都市商業研究所」によると、近年地方では閉店した百貨店を取り壊して、低層階に商業ゾーン、高層階に居住ゾーンを持つ複合型施設として再開発されるケースが目立つという。

一方で、行政が主導して整備した市役所や公共スペースなどを備えた複合型施設も多くみられるが、石川・七尾市では、運営を担った第3セクターが経営破綻。長野・岡谷市では、核となるテナントのスーパーが数年の間に撤退を繰り返すなど、活用がうまくいっているとは言えない例も少なくない。

山形市まちづくり政策部・佐藤一大次長:
済生館の法定耐用年数が令和12(2030)年までなので、1つの目標として、そこをめがけて進めていきたい

跡地の再整備が長期にわたることも課題だ。山形市の場合も、少なくとも7年かかると見込んでいる。

しかし、大分・別府市では、2008年のリーマンショックで高層マンションの計画が頓挫。計画変更の末、2023年、ホテルとしてようやく完成する予定で、ここまで約30年を要したケースも出ている。

松江市の新たな「街の顔」として、「跡地」をどのように生かすか。これまでの例にとらわれない発想、そして、スピード感が求められている。

(TSKさんいん中央テレビ)

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