福島県に“日本一辛い村”があることをご存知だろうか?
福島・平田村にある「道の駅ひらた」では、“日本一辛い村”をうたい、村で栽培した激辛唐辛子“ハバネロ”を使った商品を次々と発売しているのだ。

例えば、ハバネロパウダーをトッピングしたソフトクリーム「ハバネロソフト」や、ハバネロで激辛に仕上げたレトルトカレーの「ハバネロ戦隊カラインジャー 生地獄カレー」などがある。
そんな中でいま、5月27日に発売された新商品「ハバネロポテトチップス」が人気となっているのだ。平田村産のハバネロパウダーが刺激的な辛味となり、口に広がるのだそう。

道の駅のオンラインショップでは「おやつの主役としてそのまま召し上がってヒーヒーいっちゃうはもちろん、砕いてスープのクルトンとして、サラダにパラッとかけてピリ辛アクセントに。パスタやピザ、グラタンのトッピングにすれば名脇役にもなれます」と食べ方を紹介している。
1袋70グラム入りで税込み378円。「道の駅ひらた」で販売されたものだけでも、発売から約1カ月で1400袋以上売れているという。

そもそも平田村は、標高500メートルの阿武隈高地にあり、アスパラ、自然薯など良質の農産物が生産されている地域。しかし、2011年の東日本大震災の後、風評被害により野菜が売れなくなってしまったという。
こうした中、駅長の高野哲也さんが、一部の農家が生産していたハバネロに注目し、商品化を開始。定期的にハバネロの新商品を出し、トライアンドエラーを繰り返しながら看板商品を増やしてきたのだ。また、ハバネロの生産量も2012年度は20キロだったが、2022年度には3トンを超えたという。

「日本一辛い村」をうたい、ハバネロを使った村おこしがうまくいっているようだ。しかし、ここで気になるのが「うちのほうが日本一辛い村だ」と言ってくる自治体がなかったのかということだろう。
また、他にどんなハバネロ商品がオススメなのだろう? 「道の駅ひらた」駅長の高野哲也さんに詳しく話を聞いてみた。
駅長「言ったもん勝ちで名乗っちまえ!」
――「日本一辛い村」プロジェクトとはどんなもの?
令和2年(2020年)から始まった新型コロナウィルス感染症パンデミックは、平田村にも大きな影響を及ぼし、当駅の売上も大きく減少しています。道の駅ひらたではハバネロ生産者や取引先さまと連携体制を組み、アフターコロナに向けた取り組みを始めました。それが「平田村日本一辛い村プロジェクト」です。
道の駅ひらたでは、生地獄カレーやハバネロソフトを発売した平成29年(2017年)頃から、「ここまできたらいっそ“日本一辛い村”をめざそう」と“日本一辛い”を自称してきました。とはいうものの、“日本一辛い”の定義が曖昧で、何を根拠に自称しているのかと問われると答えに窮します。
そこで、定義はともかく実質的に“日本一辛い村”になるべく継続的努力をすること、また商品開発力を高め、販路を拡大し、さらに発信力を高めるために、他業種との連携体制を構築することにしました。
――「うちの方が日本一辛い村だ」と主張してきた自治体はなかった?
今のところはありません。そもそも「日本一辛い村」の定義は何でしょう? 私が初めてそれを自称したときも、その部分が曖昧だったので、なかば冗談、シャレのつもりで「どうせここまで来たからには、言ったもん勝ちで名乗っちまえ」が真相です。どこかに怒られたら「ごめんなさい。」と取り下げようと。ですから、「自称」とか「を目指す」とかを付記することが多いです。
ハバネロポテチ、6割が「想像より辛かった」
――ハバネロポテチがヒットしていることをどう思う?
大変うれしく思います。今までいろいろなものを開発してきましたがここまで売れているものは無かったので。ただ一時的なヒットよりロングセラーになることを期待します。
――食べた人からの声は?
地元の人からは、「想像より辛かった」「想像より辛くなかった」「想像より旨かった」がだいたい6:2:2くらいの割合で来ています。
――ハバネロポテチは30番目の商品ということだが、それまでポテチの商品化はしてこなかった?
実は構想は2年前からありました。おそらくポテチのメーカーで多くの方が思いつくだろう大手メーカーに企画を持ちかけました。ただし、コロナ禍の中、直接出向いてお願いすることができず、メールや電話でのやりとりでした。
結論を言えば、3社に持ち掛けましたがすべて失敗に終わりました。無念の思いはありましたが、それならばといきなり大手ではなく地元の小さな企業とコラボでやろうとなったわけです。幕張メッセや東京ビッグサイトで開催される大型国際展示会などで、大手メーカー、大手問屋と交渉はするのですがなかなか甘くないです。
駅長「生地獄カレー、なぜ売れるのかわからない」
――ちなみに、駅長おすすめのハバネロ商品は?
一番売れているものではなく、私のおすすめですと「ハバネロ味噌」です。一番売れているものは私には辛すぎて食べられません。例えば「ハバネロ戦隊カラインジャー 生地獄カレー」はウチのレトルトカレーの中で一番売れてますが、なぜ売れるのかわかりません。
「このカレーが駅長おすすめですか?」としばしば聞かれますが、きっぱりと「おすすめしません。文字通り生き地獄を味わえます」と答えます。たまに何かの番組でしぶしぶ食べさせられるのですが、何か得体のしれない辛い塊が口から食道、胃へと落ちてゆき五臓六腑へしみわたっていくのを感じます。
「ハバネロ味噌」はそれでも辛いのですが、ラーメンや、チャーハンの隠し味、鍋もののタレのちょい足し、マヨネーズと和えてサラダにと量を加減して応用できます。


――次に発売を予定している商品は?
2点あります。1点は今年の夏から秋ごろに。もう1点は来年春ごろの発売が目標ですが、作ることより売ることの方が大変なので、今年発売したハバネロオリーブオイルとハバネロポテチの販売を軌道に乗せる方を優先するつもりです。
ハバネロポテチの売り上げは好調のようだが、この後も、販売を軌道に乗せることが重要なようだ。激辛好きの人は、福島県の「道の駅ひらた」に立ち寄った際には、いろいろなハバネロ商品を試してみるのもよいかもしれない。