広島の平和公園と旧日本軍の攻撃で被害を受けたハワイの真珠湾の公園が、姉妹協定を締結したが、被爆者からは否定的な反応が出ている。

広島市とアメリカ政府間の姉妹公園協定

この協定は、平和公園とハワイのパールハーバー国立記念公園を姉妹公園とするもので、6月29日に広島市とアメリカ政府の間で結ばれた。

エマニュエル大使と松井・広島市長
エマニュエル大使と松井・広島市長
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東京のアメリカ大使館での調印式には、広島市の松井市長とエマニュエル駐日大使が出席し、協定書にサイン。

広島市によると、G7サミット前の4月に、アメリカ側からサミットを契機に姉妹公園協定を結びたいとの打診があったとのこと。

パールハーバー国立記念公園(英語ではPearl Harbor National Memorial)は日米開戦時に旧日本軍の攻撃で沈没した戦艦アリゾナなどの記念館がある。

2016年6月に当時のオバマ大統領が平和公園と原爆資料館を訪問した後の12月に、安倍首相がオバマ大統領とこの記念館を訪れている。

広島市は、G7サミットで採択された「広島ビジョン」の実現に向けた第一歩に繋がるとして、この申し出を受け入れ、姉妹公園協定の締結となった。

姉妹公園協定締結についてエマニュエル大使と松井市長は…。

エマニュエル米駐日大使:
かつては対立の場であった、これらの公園が和解の場となった。互いの歴史を学び、世界をより良くしようというインスピレーションを感じてほしい

広島市・松井一実市長:
平和を願う市民社会の総意が為政者の心に届き、武力によらず平和を維持する国際社会を実現する大きな一歩になると確信しています

広島市とアメリカ側は協定の締結によって、双方の公園の資料を活用した企画展の開催や、若い世代に向けた平和教育などの連携が期待されるとしている。

この協定をどのように受け止めたのか、原爆資料館の元館長で被爆者の二人に話を聞いた。

「市民の思いを聴くべき」「憎しみは消えてない」

6歳の時、広島駅で両親と被爆した体験を持つ原田浩さんはこう語る。
原爆資料館9代目館長・原田浩さん:
未来志向の考え方は非常に必要なことだと思います。

原田さん:
けれども過去の歴史をきちっと検証することからスタートしないと同じことを繰り返すのではないかという気がします。もっと多くの市民の思いを聴いたうえで姉妹提携ということに走っていくべきではなかったかなと思います

また、父親を原爆で亡くした胎内被爆者の畑口実さんは…。
原爆資料館10代目館長・畑口実さん:
原爆の被害を受けて、今もって父を殺されたと思っているので、まだアメリカに対する憎しみは消えていませんし、どう整理し、結び付けたらいいか、私には整理できていない。わだかまりを持ったままでの姉妹公園、提携になっていくと思う。

畑口さん:
「忘れろ」「乗り越えて友好」というのは、なんとかそうしたいけど、被爆者の多くは、そうできない気持ちが心の中にあるというのはわかってほしい

この姉妹協定、それぞれの公園の所属から、一方は広島市、一方はアメリカ政府で、不釣り合いな協定と言えなくもない。

この協定は、G7サミットで、各国首脳の原爆資料館見学が検討されていた4月にアメリカ側から広島市に打診を受け、双方でやり取りを続け、6月に決まったようだ。

被爆者団体「核兵器禁止条約」への参加を政府に改めて要望へ

一方、広島の被爆者7団体は、岸田首相が出席する8月6日の平和記念式典終了後に、「核兵器禁止条約」の批准を改めて政府に求めることにした。

7団体はロシアのウクライナ侵攻や核による威嚇に触れ、核兵器は戦争を抑止できないとしたうえで、岸田首相が目指す「核兵器なき世界へ」の道筋作りは「核兵器禁止条約」でしか実現できないとしている。

G7サミットの「広島ビジョン」は事実上、核抑止論を肯定する内容で、被爆者団体はこれに反発している。

広島県被団協・箕牧智之 理事長:
核兵器があるから大丈夫という核抑止論、そういうところはぜひ改めるべき。被爆者としては強く訴えていかないといけない

これとは別に、広島市議会は、「日本が核兵器国と非核兵器国の橋渡しを努めるなど、核兵器禁止条約の実効性を高めるために主導的な役割を果たすことを強く要請する」という意見書を全会一致で採択している。

(テレビ新広島)

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