従来の小学校と中学校の境をなくし、義務教育の9年間を同じ学びやで子どもたちが過ごす「義務教育学校」。少子化の流れを受け、鹿児島県内の地方で増えているが、県庁所在地の鹿児島市でも計画が進みつつある地域がある。子どもたちの「新たな学びの場」について考える。

1年生から9年生まで「絆が深まる」

東シナ海に面した南さつま市坊津町。港を望むのどかなロケーションにあるのが義務教育学校、坊津学園だ。

いわゆる「中学1年生」の教室
いわゆる「中学1年生」の教室
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英語の授業が行われている教室の入り口には「7年教室」と書かれている。13人が学ぶこちらは「中学1年生」の教室だ。

坊津学園は南さつま市坊津町の4つの小学校と2つの中学校が統合され、県内初の義務教育学校として2017年に誕生した。6歳から15歳までの114人が同じ学びやで過ごしている。

坊津学園の「4年生」:
「絆の日」で1年生から9年生で遊ぶ日があり、絆が深まりとてもいい。上級生は丁寧でとてもやさしい

坊津学園の「7年生」:
行事などで交流があると、いろいろな学年に友達ができて、どんどん増えるのはいいと思う

義務教育学校は、小学校と中学校を一体化した学校のことで、子どもたちは義務教育期間の9年間を過ごす。少子化を背景に、鹿児島県内には2017年以降、南さつま市や県北部の出水市などに設置され、現在、10の義務教育学校がある。

「適正な学校規模」満たない学校も

実は県都・鹿児島市にも義務教育学校設置の動きがある。

鹿児島市は1980年代を境に子どもの数が減少していて、鹿児島市教委は2018年、学校の適正な規模を新たに定めた基本方針を策定した。その基準に示された学級の数は、少なくとも小学校で12学級、中学校で9学級。2023年5月現在で、小学校79校のうち31校、中学校39校のうち12校がこの基準を満たしていない。

鹿児島のシンボル・桜島は鹿児島市に属している。その桜島にある桜峰(おうほう)小学校。200分の1の縮尺の模型を見ながら、子どもたちが夢をふくらませていた。

桜島では、義務教育学校の設置を地域が要望、住民らの会合が定期的に開かれ、校名や校歌なども今後、協議が進められる。そして2026年、島内5つの小学校と3つの中学校が統合され、鹿児島市初の義務教育学校が誕生する。

桜島地域における整備検討委員会・竹ノ下武宏さん:
桜島は火山を抱えていて、京都大学という一流の火山センターがあるので、その辺もいろいろな力をもらい、学校にしっかり関わってもらえると、私たちが目指す学校ができていくのではと思う

小中一貫校化に慎重な意見も

一方、鹿児島市中心部に近い明和地区でも動きが。

団地や住宅が立ち並び、約8,000人が暮らす明和地区。1980年代、ここにある明和中学校の生徒数は2,000人に迫っていた。その後、近隣に新たな中学校ができ、生徒数が半減。その後も減少を続け、2023年の生徒数は200人を切った。

「明和まちづくり協議会」などが提出した要望書
「明和まちづくり協議会」などが提出した要望書

2023年3月、「明和まちづくり協議会」などが鹿児島市教委に要望書を提出した。他校区の中学校との統廃合は「地域の分断につながる可能性がある」として、協議会では明和中と隣り合った明和小との小中一貫校化を求めている。

明和まちづくり協議会・伊地知紘徳会長:
この校区は、一等地のど真ん中に広大な敷地の小学校、中学校が存在しているという特性がある。地域浮揚の一策としての学校の在り方を模索するのは妥当なことだと思う

ただ、地域の住民は一枚岩とは言えない。6月3日に開かれた「希望に満ちた明和を作る会」の勉強会を取材した。会の川野恭司さんは「統合しか学校は残せないのか。少なくとももっと慎重にやってほしい。この問題は」と熱い口調で語った。

明和地区の課題を考えるため2020年に立ち上げられたこのグループは、小中一貫校化には慎重な立場だ。

希望に満ちた明和を作る会・川野恭司さん:
小学校は小学校の育ち。中学校は中学校の育ちという今までの学校体系は、それなりにいいところがいっぱいあったから、他のところは、わざわざ義務教育学校にしようとしていない

7月1日に開かれた小中学校の保護者や住民を対象とした意見交換会では、市教委が義務教育学校の設置を前提とする方向性を示したものの、住民の受け止め方もさまざまだった。

地域住民:
正直言って判断は難しい。要望書が出されているが、話し合いが進んでいく中でどう変わるのか注視したい

地域住民:
こうしたらいい、ああしたらいいという見通しがスパッと見えるものではないので「小中一貫校をしてよかった」と思えるような結果が得られたらと切に願う

今後も少子化などを背景に県内各地で起こり得るこうした動き。学校の主役である子どもたちを念頭に置いた議論の深まりが何より求められている。

(鹿児島テレビ)

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