「生き残った!3年後は俺」?

自民党総裁選で安倍首相が3選されたが、石破さんも健闘した。

結果が出た後の2人の表情をじっと見てみた。
安倍首相は淡々とした穏やかな顔つき。

 
 
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石破さんはやや興奮しているがホッとした様子。

 
 

表情から2人の心中を察すると、安倍さんは「とりあえず勝って良かった。でも党員票もう少し欲しかったな」
石破さんは「生き残ったぞ。3年後は俺だ」という感じではないか。

党内融和はやめてくれ

 
 

この結果は、安倍さんの今後の政権運営に、どんな影響があるのだろうか。

実は両氏の政策に大きな違いはない。
石破さんが最も言いたいことは「強引な政権運営はやめてくれ」「俺たちの意見も聞いてくれ」ということだろう。

ということは安倍さんは今後、党内融和をはかるということか。

ただこの「強引な政権運営」というのは、野党や一部メディアや有識者と称する人達が、面白がって言ってるだけで、安倍さんという人は、同じ長期政権の小泉さんや中曽根さんに比べると、独断専行ははるかに少ないと思う。

だから安倍さんが党内融和に向かえば、ものすごくつまらない政権になると思う。
従って党内融和はやめて頂きたい。

3年後のポスト安倍は?

 
 

3年後のポスト安倍はどうだろう。

今回の健闘で石破さんはポスト安倍の1番手になった。
石破さんを軸に戦いは行われる。
一方で安倍さんや麻生さんたちは死に物狂いで「石破つぶし」に走る。
禅譲狙いの岸田さんや、主流派に残りたい二階さんをどう引き止めるかが、安倍さんの勝負どころだ。

そして最大の関心は憲法。
ただ党員票が55%対45%ではすぐに改正を行うのは難しいかもしれない。
とりあえず参院選後に先送りするのではないか。

こう書いていくと、安倍さんは3選したものの、今後は色々手足を縛られて思うように動けなくなる、ということだろうか。
それはおかしい。
石破さんたちの意見を聞いて、最大公約数的な政策を決めても面白くもなんともない。
それでは誰が首相になっても一緒ではないか。

エッジの効いた政策を

 
 

やはり安倍さんには、エッジの効いた政策を、自民党内の反対も押し切って実行してもらいたい。
自民党議員や党員だけでなく、一般の国民もそれが嫌だったら、3年後に石破さんに首相になってもらって、違う政策をやってもらえばいいではないか。

 欧米の民主主義国家が何年かに1度政権交代をしているのは、変化によって国を活性化させることが最大の目的だ。
どの政権も同じようなことをやっていては、国は国際社会の変化についていけず、滅んでしまう。
 

「いじめ」問題への過剰な反応

 
 

今回の選挙戦で残念だったのは、斎藤農水大臣へのいわゆる「いじめ」問題への過剰な反応だ。

首相サイドから「石破さんを応援するなら辞表を書け」と言われたというのだが、60近いオヤジがその程度のことで被害者面するか?
斎藤さんのことを被害者呼ばわりした石破さんも情けなかった。

 総裁選で「ネタ」がなかったメディアがこれに飛びついて、結構な騒ぎになったため、斎藤さんも石破さんもそれに巻き込まれた形だが、野党も喜んで、反安倍政権、反自民キャンペーンに使ったので、自民党としてものすごくマイナスだった、と思う。

 ただ石破さんはこれで党員票を増やした。
そういう意味で斎藤さんは殊勲賞かも。
でも衆院選の比例票を見ると自民党は決して強い政党ではない。
たまたま今は安倍さんが強いだけだ。
このようなネガティブキャンペーンは自民党を分断し、野党や左翼勢力を利するので、今後はやめた方がいいと思う。

「石破小泉連合」への期待

 
 

最後に小泉進次郎さん。
石破さんに投票したが、事前に意思表明せず、石破小泉連合も作らなかった。
従って応援もしなかったので、安倍さんにとっては許容範囲。

ただこの時点での石破さんへの投票は、「反安倍」の姿勢を鮮明にしたと取られる。ちょっと早すぎたと思う。

だが形はできてしまった。
本人の意思と関係なく世間は期待する。
今後は石破小泉連合が、たとえば政策決定の場で、どこまで安倍さんに「抵抗」するか、それに対して党内がどう反応するか注目だ。

そして来年の参院選でもし自民党が負けた場合、2人が「安倍おろし」に向かうのか、これが最大の見どころだ。

(執筆:フジテレビ 上席解説委員 平井文夫)
(イラスト:さいとうひさし)

平井文夫
平井文夫

言わねばならぬことを言う。神は細部に宿る。
フジテレビ報道局上席解説委員。1959年長崎市生まれ。82年フジテレビ入社。ワシントン特派員、編集長、政治部長、専任局長、「新報道2001」キャスター等を経て現職。