サッカーJ2・モンテディオ山形は、前節から後半戦に入った。7月1日は、勝てば一気に勢いがつく大一番、ホームでベガルタ仙台との「みちのくダービー」を控えている。
今シーズン、唯一すべての試合に出場し、攻守に渡って活躍しているボランチの背番号15・藤田息吹選手に話を聞いていく。
今季はチーム唯一22試合すべてに出場
藤田息吹選手は山形3シーズン目。サポーターの皆さんは知っていると思うが、改めてプロフィールを紹介する。

藤田息吹選手は、愛知県出身の32歳。藤枝東高校から慶應義塾大学に進学し、卒業後、当時J1の清水エスパルスに入団。その後、愛媛FCや松本山雅FCでプレーし、2021年にモンテディオ山形に加入した。
過去2シーズンは中心選手として30試合以上に出場した。今シーズンもこれまでチームでたった1人、22試合すべてに出場し、2ゴールを挙げている。

藤枝東高校時代は、冬の全国高校サッカー選手権で準優勝。慶應大学2年の時は、19歳以下の日本代表に選ばれた華やかな経歴の持ち主だ。
白田貴彦アナウンサー:
この時(大学2年の時のU-19)の日本代表には誰がいたんですか?
藤田息吹選手:
今の日本代表で活躍している遠藤航選手や宇佐美貴史選手、酒井高徳選手がいました
白田貴彦アナウンサー:
すごいメンバーですね。2023年でプロ生活11年目の藤田選手ですが、実はテレビ生出演はきょう(28日)が初めてということで、これまで機会はなかったんですか?

藤田息吹選手:
ありませんでした
白田貴彦アナウンサー:
ものすごく緊張している様子が伝わってきます。声が少し小さいですよ
藤田息吹選手:
緊張しています。声を出していきます
白田貴彦アナウンサー:
普段は口数が少ない藤田選手だそうですが、たくさんお話を聞いていきます
ボランチにサイドバックもこなす
今シーズンの藤田息吹選手の活躍を振り返る。

今シーズン、山形が5連勝した時のフォーメーションでは、藤田息吹選手は「ボランチ」に配置。簡単にいうと、ディフェンスの前、攻撃の底に位置するポジションだ。
白田貴彦アナウンサー:
改めて、藤田選手の役割を教えてもらえますか?
藤田息吹選手:
攻撃ではより前にスムーズにボールを運べるようにするのと、守備では自分たちが守るゴールに近づけさせないように、まわりを見ながらよく走ってプレーするのが特徴です
白田貴彦アナウンサー:
攻守両面ということで、視野の広さと運動量も求められると思いますが、その辺はいかがですか?

藤田息吹選手:
自分の特徴は運動量だと思うので、それを生かして頑張りたいと思っています
白田貴彦アナウンサー:
前節を見てもわかるように、サイドバックもこなすユーティリティさも藤田選手の魅力です。チームは序盤8連敗と苦しい時期がありましたが、そのあと5連勝、順位は現在13位。藤田選手から見て、チームの状況はいかがですか?

藤田息吹選手:
非常に苦しい序盤を乗り越えて、いま少しずつ上がってきている途中なのかなと思います
白田貴彦アナウンサー:
具体的にこんなところが良くなってきているというところはありますか?
藤田息吹選手:
ひとつは守備が少し明確になったこと。あとは、やり続けることで精度が上がってきて、それが実を結んでいるのかなと思います
同じくボランチの南秀仁選手とともに、まさに「縁の下の力持ち」の役割を果たしていると言える。
「パパ、きょうゴール決めてね」
白田貴彦アナウンサー:
そして、藤田選手には2人のお子さんがいらっしゃるということで、(写真を見ながら)これは蔵王ですか?

藤田息吹選手:
はい。蔵王の樹氷を見に行きました
白田貴彦アナウンサー:
ほかに、家族で行ったお気に入りの場所はありますか?

藤田息吹選手:
キャンプをよくするんですが、月山のキャンプ場には毎年行っています
白田貴彦アナウンサー:
いいパパぶりが伝わってくる写真ですね。息子さんはサッカーしているんですか?
藤田息吹選手:
はい、サッカー頑張っています
白田貴彦アナウンサー:
近くにいい目標・見本がいていいですよね。アドバイスはするんですか?
藤田息吹選手:
アドバイスはするんですが、なかなか聞き入れてもらえない。やっぱりお父さんに言われるのは、あまりうれしくないのかもしれないですね

白田貴彦アナウンサー:
そうなんですね。その息子さんから、試合前に必ず言われることがあるんですよね?
藤田息吹選手:
「パパ、きょうゴール決めてね」と言われます
白田貴彦アナウンサー:
ボランチはゴールを奪うポジションではないじゃないですか。それでも求めてくるのはゴールなんですね
藤田息吹選手:
やっぱり子どもにとっては、“ゴールを決める人がヒーロー”っていうイメージが強いと思うので
スーパーロングシュートを決めた大分戦
藤田息吹選手の息子さんが大喜びだったというのが、第16節・ホームでの大分戦。
前半19分、自陣でボールを奪ったモンテディオ山形は左サイドに展開。チアゴアウベス選手がキープし、追い抜いてきた國分伸太郎選手のクロスに合わせたのが藤田息吹選手だった。このシーンを振り返ると、奪ってすぐの藤田息吹選手のワンタッチパスで、完全に前向きにボールを握った。そして注目はこの後の走り。まさに藤田息吹選手の持ち味だ。
白田貴彦アナウンサー:
一生懸命走りましたね。このシーンを振り返ってみていかがですか?

藤田息吹選手:
自陣でうまくボールを回すことができて、チャンスになると思ったので、ゴール前まで走りました
まさに、藤田息吹選手から始まって、フィニッシュも藤田息吹選手という見事なゴールだった。
そして、この試合で藤田息吹選手はさらに魅せた。後半40分、前に出てきた大分のゴールキーパーに、横山塁選手がプレッシャーをかけ、こぼれてきたボールをハーフウェイラインから50メートル以上のロングシュートを藤田息吹選手が決めた。

白田貴彦アナウンサー:
この場面、キーパーがいなかったとはいえ、簡単ではないシュートでしたよね?
藤田息吹選手:
そうですね、蹴った瞬間「入ってくれ」と祈っていました
ボールがゴールの真ん中に行っているので、正確なキックでないと決められないシュートだ。
白田貴彦アナウンサー:
ハーフウェイラインからのロングシュートを決めた経験はあるんですか?

藤田息吹選手:
初めてです
白田貴彦アナウンサー:
ではご自身にとっても印象深いゴールになりましたね。この2ゴールを決めた後、息子さんの反応はいかがでしたか?
藤田息吹選手:
すごく喜んでくれて、DAZN(ダゾーン)で何度もゴールシーンを見返してくれていました
白田貴彦アナウンサー:
繰り返しパパのゴールシーンを…。それを見るとまた勇気づけられますよね
藤田息吹選手:
またゴールを決めたいなと思わせてくれます
ダービーは「よりサポーターのために」
息子さんのために、そしてチームのために奮闘する藤田息吹選手に、7月1日に迫ったベガルタ仙台との「みちのくダービー」について聞いていく。
白田貴彦アナウンサー:
藤田選手は、昨シーズンからみちのくダービーを経験しているが、ほかの試合との違いを教えてください
藤田息吹選手:
サポーターの方々の熱量が違うと思います
白田貴彦アナウンサー:
試合に向かう選手の様子はいかがですか?

藤田息吹選手:
選手はもちろん毎試合勝利を目指していますが、ダービーは“よりサポーターのために”という思いでプレーします
白田貴彦アナウンサー:
これまでの経歴の中で、ダービーというのは経験されていますよね?
藤田息吹選手:
はい。清水エスパルスの時も、愛媛FCの時もありましたが、みちのくダービーもすごく熱量があって熱い試合だと思います
白田貴彦アナウンサー:
「勝てば同じ勝ち点3」だが、勝負事には“負けたくない相手”というのがいて、モンテディオ山形にとってはその相手がベガルタ仙台なんですよね
「次こそ勝ちたい」前回の惜敗振り返る
みちのくダービーの通算の対戦成績を見ていくと、Jリーグになってからは、モンテディオ山形の7勝15分18敗と大きく負け越している。ベガルタ仙台がJ2に降格してきた昨シーズンからは、1分2敗と勝ちがない。

今シーズンのみちのくダービー・第1戦は、5月13日の第15節・アウェーでの戦いだった。
前半32分、モンテディオ山形はパスカットされ左サイドから先制を許す。その後モンテディオ山形は藤田息吹選手が起点となってチャンスを作り、仙台ゴールに迫る。
すると後半40分、この場面も藤田息吹選手が起点となり、ボールをペナルティエリア内に入れて、小西雄大選手のクロスに藤本佳希選手のバイシクルシュートで同点に追いついた。
しかし、アディショナルタイムに勝ち越しゴールを許し、1対2と、悔しい敗戦となった。
白田貴彦アナウンサー:
このダービーを振り返ってみてどんな印象でしたか?
藤田息吹選手:
2失点目の時間帯も含めて、非常に悔しい敗戦となりました
白田貴彦アナウンサー:
モンテディオ山形も負けていないくらいチャンスは作っていましたよね
藤田息吹選手:
そうですね、本当にどちらが勝ってもおかしくないようなゲーム内容だったと思います
白田貴彦アナウンサー:
それだけ悔しい敗戦と言えますよね。試合の後、いつもは温かい声援が多い山形のサポーターから、かなり厳しい声が飛んでいました。あのサポーターの声をどうとらえましたか?
藤田息吹選手:
期待してくれているからこそと思いますし、「次こそ勝ちたい」とより思わせてくれるものでした
渡邉監督「悔しさをエネルギーに変えるだけ」
そして、モンテディオ山形は6月28日、リベンジのダービーに向けた練習を公開した。

時折雨脚が強まる中、約1時間、実戦形式で仙台戦を意識した攻守の確認をした。練習後、渡邉晋監督はダービーに向け、次のように話している。

渡邉晋監督:
前回対戦した悔しさはみんなが味わったからそれをエネルギーに変えるだけ。選手たちは自分たちがいま置かれている状況と、味わった感情をしっかりとエネルギーに変える準備をしてくれている。あとはそれを発揮するだけ
白田貴彦アナウンサー:
「前回の悔しさをバネに」と選手たちに伝えられたようですが、どうとらえていますか?
藤田息吹選手:
選手たちも本当に悔しい思いをしたので、その思いを晴らすのは、ダービーの悔しさはダービーで晴らすしかないので、次は勝てるように頑張りたいと思います
白田貴彦アナウンサー:
今のモンテディオ山形の順位、そしてJ1昇格を目指す中で、本当に大きな試合になると思います。改めて意気込みをお願いします

藤田息吹選手:
ダービーは勝利だけだと思っていますので、サポーターのみなさんと勝利を分かち合えるように頑張りたいと思います
白田貴彦アナウンサー:
ベガルタ仙台とのみちのくダービーは、7月1日の午後7時半キックオフ。ホームなので息子さんも駆けつけてくれますよね。ダービーでゴールを決めたら息子さんも喜んでくれるんじゃないですか? パパとしての意気込みも聞きたいですね
藤田息吹選手:
ダービーでもゴールを決められるように頑張ります
(さくらんぼテレビ)