コロナ禍以降、地方移住が注目されるようになったが、会社勤めをしている人にとっては、なかなかハードルが高いのではないだろうか。広島県は実際に移住を果たした人たちを招いて東京で移住フェアを開催。取材してみると、移住にもいろいろなパターンがあり、決してハードルは高くないことがわかった。

移住の4パターンとは…

東京・千代田区で開かれた「ひろしま瀬戸内移住フェア」。

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取材してわかったのは、移住には大まかに分けて以下の4つのパターンがあるということだ。

1,移住しても今の仕事をリモートワークで続ける。
2,移住先の企業に転職。
3,移住先で個人事業主として飲食店など事業を起業。
4,農業などに携わる。

東京で各道府県の移住相談を行っているNPO法人ふるさと回帰支援センターの調査によると、移住希望者の約7割が地方都市を想定しており、農村は約2割にとどまる。
1のリモートワークはコロナ禍で、これを認める企業が増えたことで一定の広がりがあるようだ。

埼玉在住50代会社員男性:
今の会社勤めのリモートワークをしながら尾道への移住を考えている

2の移住先の企業に転職は、ちょっとハードルが高そうに思える。

広島経済同友会のブース
広島経済同友会のブース

広島県の移住フェアでは、県の経済団体や職業紹介を行う企業もブースを出し、相談に応じていた。

3の起業は手に職があるなど、特別なスキルを持った人だけかと思いきや、このイベントのセミナー登壇者らの話では、そこまでハードルは高くないことがわかった。

“ローカルの余白”を生かし夢を実現

セミナーで先輩移住者として体験を披露した長田さん。2022年に東京から福山市・鞆の浦に移住し、コミュニティー支援事業と古民家カフェを運営している。

長田涼さん:
自分の可能性を試すには、ローカルはめちゃめちゃ余白がある。いつかやってみたいとか、今持っている趣味を仕事にしたいと思っている人がいるんだったら、そういう余白の切り口でローカルを見てみるのはおすすめ

長田さんによると、カフェでも、都市ほど競争が激しくないのと、賃料などが割安なのがありがたいとのこと。時間的にも気持ち的にも、“緩い生活”ができることが、地方移住の魅力のようだ。

また、同じセミナーに登壇した松田さんは、旅行で訪れた際に尾道にほれ込み、2020年に千葉から移住。食品会社から尾道のお酢を作る会社に転職した。

松田侑樹さん:
尾道の風景と人の魅力にひかれて移住を決めた

移住には、まず行く場所を決めてからというパターンと何をやるかを決めてから場所を選ぶパターンがあるようだ。

コミュニティーへの水先案内人

広島県は人口の流出が2年連続で日本一で、移住者の呼び込みに様々な手を打っている。

兼田洋一 広島県地域力創造課長:
このような取り組みで、少しでも流入人口を増やすことにつなげていきたい。

仕組みとして興味深いのは、県がすでに移住を果たした人の中から「移住コーディネーター」を委嘱し、移住希望者の地域コミュニティーへの水先案内人の役割をしていることだ。県内の6地域に1人ずついるという移住コーディネーターは、このセミナーでは登壇者も兼ねていた。

来場者 東京在住 会社員(20代):
広島県は移住コーディネーターとかを置いて移住支援を積極的にやっているので、今後も利用して、調べていけたらと思う。きょうは一歩踏み出せた。

セミナーの登壇者が一様に強調していたのは、地域のコミュニティーに顔を出し、人と人のつながりを広げていくこと。ローカルでは人と人のつながりが財産になる。

この移住フェアを通してわかったのは、移住は、自分が何をしたいか、何ができるかを見極め、自分に合う地域、コミュニティーを探すことから、その一歩が始まるということだ。

(テレビ新広島)

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