これまで職場で当たり前のように付けていたフルネームの名札が、今、カスタマーハラスメント対策として大きく変わりつつある。

「銃口を向けられるのと同じ感覚」

仕事中に身に付ける名札が原因で名前を知られてしまい、トラブルに巻き込まれるケースが相次いでいる。

東京・八王子市でタクシー運転手をする村瀬沙織さんは、名札を見た客からの迷惑行為「カスタマーハラスメント」の被害を訴える。

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タクシードライバー 村瀬沙織さん:
「お前はどこの運転手なんだ、誰なんだ。乗務員証の写真撮ってさらしてやるぞ」みたいな感じで、パシャって撮られました。すごく嫌ですね。守るべき家族もいるので、さらされると(誹謗中傷として)フルネームと顔がネットに拡散されるので……。

男性客は、村瀬さんが法定速度を守って運転していたにもかかわらず、「わざとメーターが上がるように走った」と、車内の名札を見て会社にクレームを入れたという。

タクシードライバー 村瀬沙織さん:
怖いです。カメラ向けられると銃口を向けられているのと同じ感覚になります。

こうした「カスハラ」の対策として、国土交通省は、バスやタクシーに義務付けていた運転手の名札を廃止することを決定した。夏ごろにも省令を改正し、施行する方針で、今後、タクシーの車内に貼られるドライバーの証明書から、客に見える面から名前と顔写真などが削除されるという。

従業員のプライバシーを保護

名札の変化はさまざまな業界で起きている。

東京・港区にある「KEY'S CAFE -CLASSE-」の店舗では、以前は名字を漢字で表記していたが、従業員のプライバシーを保護するため、2023年4月からローマ字で表記している。

KEY'S CAFE -CLASSE- 糸瀬文江さん:
漢字でなくローマ字表記だからといって、100%安全とはいえない。今後また違う形でできればいいが、今のところこれで落ち着いています。

コーヒーチェーンのタリーズコーヒーでは、一部の店舗で、名札で名前を知られた店員への嫌がらせがあったことから、2022年5月、名札に表記する名前をイニシャルに変更した。

客の利便性か働き手のプライバシー保護か。さまざまな業界で試行錯誤のカスハラ対策が続いている。

(「イット!」6月28日放送より)

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