福岡・久留米市にある“ひとり親世帯”の支援拠点が、運営の危機に直面している。ひとり親たちの大切な「居場所」を守るため、休眠預金を活用する事業に応募するなど存続をかけた奔走が続いている。

ひとり親家庭の就労支援も

久留米市にある“ひとり親世帯”の支援拠点「じじっか」。仕事と育児の忙しさから地域で孤立しがちなひとり親世帯を支援しようとシングルマザーが集まって立ち上げた。
「実家よりも実家に近い存在になりたい」という思いを込めて名付けられた「じじっか」。子どもたちの食事支援をはじめ、ひとり親たちの大切な「居場所」になっていて、現在240世帯が利用している。

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岡稔大さん(60)は、3年前に妻を病気で亡くし、小学2年の流牙くんを1人で育てている。妻を亡くし、悲しみや育児と仕事の両立に悩むなか、岡さんも「じじっか」にSOSを求めた1人だ。岡さんがこの日「じじっか」を訪れていた理由は、新しい就職先との面談だった。

警備会社社長・平井準さん:
「じじっか」は、金・土・日じゃないですか。「じじっか」がやっていないとき、お子さんを預けるのは、大丈夫ですか

シングルファーザーの岡稔大さん:
「学童(保育)」に入ることが出来れば「学童」に預けようかなと思います。「学童」に枠があるんですよ

2022年、脳梗塞で入院し、当時の仕事を辞めざるを得なかった岡さんは、リハビリを経て新しい仕事を探していた。そこへ「じじっか」を通じて警備会社が紹介されたのだ。

シングルファーザーの岡稔大さん:
年齢的にも「ハローワーク」で仕事が見つけられなかったもので。面接に行っても、子どもが小さいから、アウトだから、今回、本当にありがたいですね

警備会社社長・平井準さん:
お子さんの話とかいろいろ聞きました。工事はいっぱいあるけど、警備員が足りなくて、業界的に人手不足なので

無事、岡さんの就職は決まった。「じじっか」では、ひとり親家庭をさまざまな面でサポートをしていて、就労支援もその一つとしている。

「じじっか」を運営する中村路子さん:
若者就業支援の企画をやってみたり、実際に仕事が決まった人とか仕事につながった人たちで言うと20人ぐらいいます。この3年ぐらいで

「じじっか」を運営する「umau.」は派遣業務も行っていて、企業側と「じじっか」を訪れる人材のマッチングをしている。なかには岡さんのように「じじっか」の食事会でお互いが知り合い、就職するケースもあるという。

「じじっか」を運営する中村路子さん:
岡さん自体が、伸び伸び、生き生きしていることが、見ていて嬉しい。こんなに早く職に復帰できると思ってなかったし

男性は、周囲からのプレッシャーやプライドなどから、悩みを言い出せない人も多いというが、「じじっか」という居場所を見つけることで仕事につながったようだ。

「じじっか」をきっかけに

この日は学校が休み。長男の琉牙くんは1人で留守番だ。

シングルファーザーの岡稔大さん:
仕事ももちろん大変ですけど、息子のこと、やっぱり家のことが気になる。「じじっか」が金、土、日だけではなく、普通の日も見てもらえるとありがたいんですけど、そういうわけにはいかないですから

琉牙君のことが気になる岡さんだが、仕事に向かう。「行ってくるねー」と声をかけ、向かったのは佐賀市の現場だ。

シングルファーザーの岡稔大さん:
朝から暑いです。ミスがないように1日が終わるようにこころがけている

この日の最高気温は33度。国道沿いの除草作業の警備に当たる岡さんの仕事ぶりに、警備会社社長の平井さんも安心した様子だ。

警備会社社長・平井準さん:
派遣先から「新人さんって聞いたけどテキパキしてすぐ対応してくれて助かりました」って言葉を頂いたので、入ってくれて助かっています

シングルファーザーの岡稔大さん:
足が痛い。特に暑かったから(笑) りゅう、ただいま

午後6時過ぎ、仕事を終えた岡さんが帰宅した。ふたり一緒に夕食を取る。この日の話題は琉牙君の誕生日についてだ。

シングルファーザーの岡稔大さん:
あした、長男が誕生日なんですよ。自転車、いままで持っていたのが小さいので、新しいのを…

息子の琉牙君:
マウンテンバイクが欲しい~

次の給料日には、琉牙君に自転車をプレゼントすることに。

シングルファーザーの岡稔大さん:
あしたの誕生日には間に合わないけど、8月に自転車を買ってやる予定です。「じじっか」がなければ、勤め先の社長とも知り合ってないし、ハローワークに行っても、どこも年齢でアウトで。「じじっか」きっかけですよね、本当

「もうきつい、運営的に…」

ひとり親家庭の「支え」となり、居場所となってきた「じじっか」。しかし、いま、大きな課題を抱えている。

「じじっか」を運営する中村路子さん:
もうきつい、運営的にきつい。今年度からマジでどうする?と思って。いま焦っている

「じじっか」では、今後の運営資金が確保できていない。大きな理由は、期限付きで受けていた日本財団などからの助成が終わるからだ。

「じじっか」を運営する中村路子さん:
休眠預金事業が3次試験まで行って、最終7月上旬に結果が発表されるんですけど、3次試験まで行ったから、受かりたい

資金確保のため、「じじっか」は休眠預金を社会課題の解決にあてる事業に応募した。今回の事業は、子どもの居場所作りを目的としていて、倉庫を改装して勉強部屋など個室を作るというもの。最終選考まで進んでいるという。しかし運営資金は、一時的に増えるが、継続的な資金にはならず、依然として課題も残る。

「じじっか」を運営する中村路子さん:
活動すればするほど、どこの足も止められないし、止めたくもない

民間レベルでひとり親を支えるシステムを作ってきた「じじっか」。本当に困っている家庭に支援を行き渡らせるため、存続をかけた奔走が続く。

(テレビ西日本)

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