福岡・久留米市にあるひとり親世帯の支援拠点「じじっか」。立ち上げから3年あまり、ひとり親など現在240の子育て世帯が利用する団体だが、取材を進めると大きな課題に直面していることがわかった。

実家よりも近い存在「じじっか」

金曜日の夕方、ひとり親世帯の支援拠点「じじっか」では、慌ただしく夕食の準備が進められていた。

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「手を合わせてください。頂きます」食卓を囲ったのは園児から高校生まで、合わせて20人だ。「じじっか」では「親子食堂」といって食事が無料で振る舞われている。多くはひとり親世帯の子どもたちで住む地域も学校もバラバラだが、まるで大家族のようなにぎわいだ。

橋本アナウンサー:
「じじっか」は、どんな場所?

子ども:
楽しいところ

橋本アナウンサー:
何が楽しい?

子ども:
みんなで遊ぶこと

ひとり親世帯の支援拠点「じじっか」。名前の由来は実家よりも実家に近い存在でありたいと願ってのこと。だからこそ「じじっか」に来たときは「ただいま」、自宅に帰るときは「いってらっしゃい」と送り出すのがみんなのルールとなっている。

「じじっか」中村路子さん:
DVもあるし、明日の食材が買えないって。子どもが、暴力を振るうとか自殺願望があるとかネグレクト状態とか…

「じじっか」を運営するのは一般社団法人の「umau.(ウマウ)」だ。まもなく立ち上げから3年。「じじっか」にはさまざまな悩みを持った子育て世帯が訪れていて、いまでは240世帯が登録する大所帯となっている。

「じじっか」中村路子さん:
苦しいとか、困窮な状態の人たちが多いってニーズがやっぱりある。いまの時代背景を映し出しているのかなと思う

利用者と協力してお互いを支援

「じじっか」誕生のきっかけは8年前、中村さんを始めシングルマザーが集まって団体を立ち上げたことに始まる。

結成メンバーのひとり、樋口由恵さん。

「じじっか」結成メンバーのひとり・樋口由恵さん:
電気ガス止まって、携帯がつながらないとか結成メンバーは経験している。母子家庭のお母さんが「実家がないんです」って。頼るところも甘えるところもない。自分で頑張らなきゃいけないのがしんどいときがあるって

シングルマザーの居場所作りが始まりで、現在は週末の食事提供に、親が仕事につくための支援など活動領域は多岐にわたる。支援は一方的なものではなく、利用者が協力してお互いを支援するかたちをとっている。

食事もそのひとつだ。

ーーきょうは何をつくりますか?

「じじっか」田村貴美子さん:
ジャガイモを頂いたのがあったので、ジャガイモの肉そぼろとトマトのスープの素を頂いたので、お野菜を。けち料理得意なんです。自分自身が母子家庭で子どもに材料を買うお金はないけど、お腹いっぱい食べさせてやりたかったから

1回に準備する食事は80人分。「じじっか」では利用者の世帯に食事の配達もしている。食事の配達にむかう樋口さんに同行した。

橋本アナウンサー:
次行く家庭はどういうご家庭なんですか

「じじっか」結成メンバーのひとり・樋口由恵さん:
夫婦と子ども3人かな、一番下の子が小さい、生まれてまだ半年

橋本アナウンサー:
大変な時期

「じじっか」結成メンバーのひとり・樋口由恵さん:
そうなのよ

「こんにちは~」配達先にご飯が配られる。

ご飯を受け取った人:
子どもを3人育てていて、(子どもと話すばかりなので)大人と話したい欲がある。すごいありがたいですよね

多いときで配達先は約20軒にものぼる。この日、樋口さんが「じじっか」に戻ったのは午後9時を回っていた。

助成金の延長が厳しく存続の危機に

ひとり親世帯が支えあう「じじっか」だが、実はいま、大きな課題に直面している。それは、運営資金の確保だ。

「じじっか」の1年間の運営資金の中で約3分の1にあたる日本財団の補助金は「こども第三の居場所」という事業だが、3年間は助成され、4年目以降は自分で軌道に乗せることが条件になっている。そのため、延長等はないのだ。

「じじっか」中村路子さん:
補助金を取り続けるのって、めちゃくちゃきついんですよ。早く自分たちで継続して行くための稼ぎを作れるようにはならなくては…

「じじっか」では食材などはフードバンクや企業から寄付を受けているが、「困窮しているから」と一方的に支援を受けるのではなく、食事の準備や配達など「じじっか」の仕事を分担することで、お互いの生活を支え合っている。

しかし、運営費が減ると「じじっか」の仕事を担うお母さんやお父さんに人件費が払えず、活動は大幅な縮小につながってしまうのだ。

存続のために「じじっか」では今後、さらに利用者で仕事を分担することや譲り受けた服などを売却するなどして運営資金を確保しようとしている。また、企業や一般の方から寄付を募集していて、現在ウェブサイトを通じて寄付をすることが可能だ。

「じじっか」中村路子さん:
どうにかしてでも、ここをこのまま継続していきたい。日常で関わる状態をみんなで作っておかないと誰の居場所にもならない

現在、「じじっか」を利用しているのは、久留米市に住むひとり親世帯など約240世帯。活動が縮小すると貧困から脱出しようとしているひとり親に大きな影響が出るおそれもある。

(テレビ西日本)

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