三重県津市に住む兄弟が、近所の山で歴史に残る「お宝」を発掘したことが話題を集めている。コレクションが趣味という兄弟は、2020年にも大発見をして話題となっていた。
12歳と9歳の兄弟が近所の山で歴史的大発見

三重県津市に住む伊藤瑚太郎くん(12)と弟の展梧くん(9)。

兄・伊藤瑚太郎くん:
見つけられたという、「やったー」っていう喜びがありました
弟・伊藤展梧くん:
「うわ、すげえ!」みたいな感じで驚いて、「なんだこれ」っていう感じに思いました
2人は2022年1月、空手道場の先生と3人で近所の山で遊んでいたところ、歴史に残る大発見をした。

見つけたのは、平安時代後期から鎌倉時代にかけて渥美半島で作られたとみられる壺と、鉄の刀、そして菊の花などが描かれた和鏡(わきょう)だ。

津市教育委員会生涯学習課の中村光司さん:
一つのセットになって出てきたというのは、県内では初めての事例なのかなと思います。本当に大発見だったと思います
ここは平安時代後期から鎌倉時代にかけての、地域の有力者が埋葬された墓とみられている。

市は調査を進めるとともに、今回見つかった壺などの一般公開も検討している。
弟・伊藤展梧くん:
戦って負けちゃった人がここに。そういう人たちのおった場所なんだと思います
兄・伊藤瑚太郎くん:
こういうものを見つけましたという事実が自分の力にもなるので、それも自分にとって宝なのかなと思います
お宝は「記録保存」の作業中…一般公開はいつになるのか

発見から約1年半が経ち、伊藤兄弟が発見した「壺・刀・和鏡」は、三重県津市にある埋蔵文化財センターで保管されている。ここでは市の出土品の展示や研究をしている。

伊藤兄弟が発見したものが今、どうなっているのかを尋ねた。
津市教育委員会生涯学習課の中村光司さん:
この部屋は特別収蔵庫といいまして、1年中、気温は20~22℃、湿度は40%という設定で、年間で環境が変わらないように金属製品などを収めている部屋です。こちらが鏡2枚と、こちらが鉄刀です
伊藤兄弟が発見した和鏡や鉄刀などは酸化や変質を防ぐため、温度・湿度の徹底管理のもと、保管されていた。

一般公開される時期についても聞いた。
中村光司さん:
そこ(遺跡)から得られる情報、私たちの先祖がどういうものを使ってというのも、広く一般の方に分かっていただけるような報告書も作らないといけないので
中村さんによると、出土品は学術的に「記録保存」という作業が必要になるとのこと。その作業を特別に見せてもらった。
まずは、土や汚れを「洗浄」する。

続いて、発掘した日時と場所を破片1つ1つに記す「注記」という作業。

そして、割れているものを「接合」。

破片が足りないなど、不足の個所については石膏で「復元」する。

立体的にしたところで、大きさを測る「実測」となるが、この作業が特に難しいという。

中村光司さん:
100%その大きさのまま実測するのが基本ですね。模様も複雑ですし、現代のものみたいな滑らかな曲線ではなくて、凸凹とか当時の土器の特徴が出ていますので、そのあたりを丁寧に作図していくという作業です。ある程度、専門的な経験とか技術とかが必要です
一部の熟練スタッフだけができるという「実測」では、表面の模様はカメラで撮影し、専用のソフトで解析する。一見するとわかりにくい模様も、微妙な凹凸を感知し、詳細に浮かび上がらせる。

こうした一連の作業は、数カ月に及ぶこともあるとのこと。今回の出土品はどのくらいかかるのかを聞いた。
中村光司さん:
50%くらいは進んでいるかなと思います。(Q.一般公開はいつごろ?)できましたら7月くらいには見ていただけるように。子供たちも楽しみにしていますので、夏休みにかかる頃にできたらと思います
出土品については「平安時代後期から鎌倉時代にかけて渥美半島で作られたもの」というところまではわかっているが、新たな見解として、見つかった場所は「経塚(きょうづか)」の可能性も出てきたという。

「末法思想(まっぽうしそう)」といって、1052年以降仏教が衰える時代になると考えられていた。それを恐れた貴族や僧侶が、経典などを仏具類とともに地中に埋蔵して後世に残そうとしたのが「経塚」で、刀・鏡がセットで出てきたことから、そう分析されている。
コレクションが趣味の兄弟 弟は過去に希少なバッタを発見しバズる

伊藤兄弟の驚くべき発見は他にもあった。

小さいころから自然の中で遊ぶことが大好きだという2人は、コレクションが趣味になったといいう。

父:
山に入って何か見つけに行ったりもよくしているので。鹿の角なんかも
弟・伊藤展梧くん:
これとこれ、俺が見つけたやつちゃう?山行ったら「あ、落ちてる」ってなって

Q.瑚太郎くんのコレクションは?
兄・伊藤瑚太郎くん:
石とか宝石が好きで、それに関して集めているものがある
瑚太郎くんは、変わった石を集めることが好きだという。
兄・伊藤瑚太郎くん:
灰色っぽい色になっているんですけど、これは煙水晶という名前の水晶で、中もしっかり透き通っていて綺麗で。自分で採ったものだから一番嬉しいし、自分のものという感じがある

石に関心を持った理由を聞いてみた。
兄・伊藤瑚太郎くん:
石は一番身近な歴史をたくさん感じるものだし、これができるだけでもすごく長い時間がかかっているから、それが簡単に手に入れられるのはすごいことなんじゃないかなと思います

弟の展梧くんは、小さい生き物を飼って育てることが好きだといい、今はカマキリに夢中で、卵からふ化させて育てている。
弟・伊藤展梧くん:
普通にかわいいなって

展梧くんは3年前の2020年、驚きの発見をして話題になった。
弟・伊藤展梧くん:
黒いバッタ!調べてみたら珍しいやつで、「すげーやん!」ってなって
父:
新聞で取り上げていただいて、Twitterに上がっていたみたいですね

全国的にも発見されるのは稀で、何かのはずみで黒くなったと考えられているが、原因はわかっていない。
弟・伊藤展梧くん:
その時は夏で、日差しギンギンでめちゃくちゃ暑かったから、「こいつ焦げてしまったんやな…」と思って。でも「なんで生きているんだろう」って
新聞に取り上げられると、Twitterで拡散され、記事は1万を超える「いいね」がついた。
2人に将来の夢を聞いた。

兄・伊藤瑚太郎くん:
将来の夢は猟師を目指していて。お父さんが狩猟免許を取ったというのもそうなんですけど
弟・伊藤展梧くん:
生物学者になりたい。いろんな生き物のことを調べて、「こんなの知らなかった」とか「すげーな!」と言われるように、いろんなことを調べたいなと思います
2023年5月19日放送
(東海テレビ)