岩手・奥州市にあるクラフトビール工房「315BEER(サイコービール)」は、食堂だった空き店舗をリノベーションし、販売スペースと製造工場が併設されている。オーナー兼醸造家の岩淵俊さんは、「ビールを造ってみたい」という好奇心から、勤めていた自動車メーカーを辞め、県内外の醸造所でビール造りを学んだ。ビールを通して多くの人たちが交流し、楽しめる場をつくりたいという岩淵さんを取材した。

季節やリクエストなどに合わせ製造販売

クラフトビールとは、1994年の酒税法改正以降、小規模な醸造所がこだわりを持って造るビール類のことを言い、現在、国内には650を超える醸造所があり、岩手県内にも15カ所の醸造所がある。(2022年12月時点 クラフトビア・アソシエーション調べ)

おしゃれな店内に販売スペースと製造工場が併設
おしゃれな店内に販売スペースと製造工場が併設
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奥州市のJR水沢駅から徒歩10分の国道397号沿いにあるのが、クラフトビール工房「315BEER」だ。以前は食堂だったという空き店舗をリノベーションして造られた店は、販売スペースと製造工場が併設されている。

「315BEER」のオーナー兼醸造家・岩淵俊さん
「315BEER」のオーナー兼醸造家・岩淵俊さん

この「315BEER」を醸造から販売まで1人で切り盛りしているのが、オーナー兼醸造家の岩淵俊さんだ。

岩手めんこいテレビ・高橋礼子アナウンサー:
おしゃれな店内ですけど、ビールが見当たらないんですが…

315BEER・岩淵俊さん:
量り売りの販売の仕方をしていて、直接お客さんと話しながら(ビールを)決めてもらいたいので、そういう販売方法を取っています

常に5種類のビールを製造販売
常に5種類のビールを製造販売

ビールには原材料や製法などによって、ビアスタイルという区分が100種類以上あり、「315BEER」では、季節やビールファンからのリクエストなどに合わせ、常に5種類のビールを製造販売している。

315BEER・岩淵俊さん:
それぞれ特徴があり、味も香りも強いものとか、スッキリ喉越しが良いもの、色々な種類を楽しめるように置いています

奥州市産の有機米を使用したクラフトビール「OH 農!」
奥州市産の有機米を使用したクラフトビール「OH 農!」

「315BEER」では、地元の農作物を使ったビールも造っていて、クラフトビール「OH 農!」には、地元の人たちの協力を得て育てた奥州市産の有機米が使われている。

岩手めんこいテレビ・高橋礼子アナウンサー:
色が濃いですね。香りがフルーティ、柑橘系の香りがして飲みやすいですね。苦みも後を引かない感じでシャープです

315BEER・岩淵俊さん:
スタイル(ビールの種類)だとかホップだとか、(クラフトビールは)難しいとは思うんですが、飲んでみておいしいとか、好みとか、そういう感覚が一番大事だと思います

量り売りビールに容器の貸し出しも
量り売りビールに容器の貸し出しも

ビールは全て量り売りで、容器の貸し出しも行っている。

きっかけはテレビ番組 親友も協力

岩淵さんがクラフトビール造りを目指したのは6年前で、きっかけはテレビで見た「脱サラして醸造所を始めた人」のドキュメンタリー番組だった。

315BEER・岩淵俊さん:
造れると思っていなかったもの(クラフトビール)が、造れると分かったときに、なんだそれっていう衝撃で造ってみたくなり、(テレビで見た醸造家に)聞きに行った

ビール研修を受けていた頃の岩淵さん
ビール研修を受けていた頃の岩淵さん

岩淵さんはビールを造ってみたいという好奇心から、2017年に当時勤めていた自動車メーカーを辞め、県内外の醸造所でビールづくりを学び、2020年に「315BEER」を立ち上げた。ちなみに店名は、岩淵さん自身の誕生日3月15日と「最高」「再興」「さぁ行こう」などの意味を持たせて名付けた。

315BEER・岩淵俊さん:
基本的には自由です。スタイル(ビールの種類)もあるんですけど、完全にオリジナルで新しく造っても大丈夫だし、決まりがないから、おもしろいです

親友の阿部崇彦さん(左)と岩淵俊さん(右)
親友の阿部崇彦さん(左)と岩淵俊さん(右)

岩淵さんの親友で市内で飲食店を営む阿部崇彦さんは、「315BEER」の立ち上げ前から岩淵さんの相談に乗り、ビールづくりのヒントになればと県内の酒蔵を紹介するなど応援してきた。

Kitchen ando・阿部崇彦さん:
(岩淵さんは)真っすぐで、本当にピュアで素直で、楽しいことを見つけるのが上手

ワインだるで熟成したクラフトビール「FEATHER」
ワインだるで熟成したクラフトビール「FEATHER」

ワインだるで熟成したクラフトビール「FEATHER」は、岩淵さんのひらめきで、阿部さんが用意したワインだるを使って造ったビールだ。

Kitchen ando・阿部崇彦さん:
ワインだるで熟成させたビールはなかなか聞かない。バーボンのたるだったりとかはよく聞くのですが、その発想力は岩淵さんらしいと思う

岩手めんこいテレビ・高橋礼子アナウンサー:
ビール感の強い香りですけども、ワインの味がします。ワインの香ばしさと酸味が伝わりますね。不思議な感覚です

阿部さんの店「Kitchen ando」でも5種類の「315BEER」を味わうことができる
阿部さんの店「Kitchen ando」でも5種類の「315BEER」を味わうことができる

阿部さんの店では、「FEATHER」を含む5種類の「315BEER」が楽しめる。

「つながりが広がればおもしろくなる」

岩淵さんと阿部さんは、ビールを通して多くの人が交流し、楽しめる場をつくりたいと様々なイベントを開いている。

アーティストを招いてワークショップを開催
アーティストを招いてワークショップを開催

この日も阿部さんの店に知り合いのアーティストを招いて、作品の制作過程を見ながらビールを楽しむワークショップを開いた。

315BEER・岩淵俊さん:
何か楽しいことをやっている感が良いのかな。あいつら変なことやっているぞ、楽しいことやっているというのが少しずつ広まっていけば、他のところでつながりが出来て、そういうのが広がっていけば、おもしろくなるんじゃないかな

岩手めんこいテレビ・高橋礼子アナウンサー:
岩淵さんにとってクラフトビールとは何ですか?

“最高”な笑顔を見せる岩淵さん
“最高”な笑顔を見せる岩淵さん

315BEER・岩淵俊さん:
クラフトビールは…めちゃくちゃうまいですよね

最高のビールが、最高の笑顔をつくり出している。

(岩手めんこいテレビ)

岩手めんこいテレビ
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