22日、神戸市西区で6歳の男の子の遺体が見つかった。警察は男の子の祖母を監禁しけがを負わせたとして、男の子の母親らきょうだい4人を逮捕した。住宅街の中で起きた不可解な事件。家族の中で一体何が起きたのか。この事件に関して、元大阪府警の刑事、阿路川芳弘さんに話を聞いた。
草むらに6歳児遺体 一体何が…家族の関係性は
穂坂家は6人で暮らしていたということだ。
・草むらで遺体で発見されたのが6歳の修ちゃん
・修ちゃんの母親で長女の沙喜容疑者
・次男の大地容疑者
・双子で次女の朝美容疑者、三女の朝華容疑者
・4人の母親であり修ちゃんの祖母
4人が祖母を監禁・暴行した疑いで逮捕されている。

元大阪府警刑事 阿路川芳弘さん:
30代の兄弟姉妹の生活状況、経済状態はどうなっているのか。今聞くところによると、無職であるということで、就労先などはどうなっているのか気になります
捜査関係者によると、祖母の生活保護などで生計を立てていたとみられるということだ。
4人の容疑者が祖母を監禁して、暴行した疑いが持たれているが、これは止められなかったのか?
元大阪府警刑事 阿路川芳弘さん:
姉妹と母親の女性家族で暮らしていた中に、男性が入ってきた。男性はリーダーシップ的な形になることがあり、ましてや実家であれば俺の家だという考え方を持つこともあるのではないか。これまでの話を聞いて私はそんなことを思いました。警察はまず、祖母の監禁事件を捜査しています。将来的には修ちゃんの遺棄事件を足掛かりに、場合によっては殺人を視野に入れて捜査していくかもしれないと思います。祖母の供述は必要で、一部始終を知っているかもしれません
近所の人からは「怒鳴り声が頻繁に聞こえた」「助けて」と叫ぶ声が
事件の経緯を整理する。

20日、監禁されていた修ちゃんの祖母は、4人がいなくなった隙に逃げ出した。垂水区の路上で通行人が祖母を発見、警察に通報し、保護された。 22日、修ちゃんの母親ら4人は、中央区で警察に発見された。その後、4人のうちの1人の供述から、自宅近くの草むらで修ちゃんの遺体が発見されたということだ。遺体はスーツケースに入っていて、目立った外傷はなかったということだ。
元大阪府警刑事 阿路川芳弘さん:
目立った外傷はないということで、今おそらく司法解剖をしています。目立っていない外傷とか、内に秘めた傷が発覚するかも知れません。一概には分かりませんが、解剖の結果何か分かるかもしれません。自然に寝てる時にタオルかぶせるとか、凶器を用いずに窒息させた場合に、外傷がつかないということはあります。衰弱死でも外傷がつかないと考えられます
関西テレビの取材で近所の人からは、
・怒鳴り声が頻繁に聞こえた。ベランダで鍵を閉められ、「助けて」と叫んでいた。
・夜中も大きい声を出して、「トントン」鉄パイプの音だったのでは…。
という証言があった。
修ちゃんに対して虐待はなかったのかと考えてしまうが、神戸市のこども家庭局が、23日の会見で説明している。

4月20日、修ちゃんが保育園に行った時に、保育園が修ちゃんの尻と右肩にあざを発見した。そして保育園が西区役所に連絡。 4月24日、市の職員が家庭訪問したところ、祖母と母の沙喜容疑者が「心当たりがない」と答えた。
5月1日に市の職員が再度家庭訪問すると、あざは消えていたが、右肩のみのチェックで、お尻は見ていなかったということだ。母の沙喜容疑者と祖母が、「修ちゃんは育てにくさがあるから一時保護して欲しい」と、この時職員に伝えたのですが、9日に家庭訪問をしたところ、祖母が「一時保護はいい(いらない)です」と職員に伝えたということだ。

職権を発動して「強制的な一時保護」はできなかったのか…
神戸市の会見を、関西テレビ・坂元龍斗キャスターが取材した。
坂元キャスター:
こういう状況になってしまい、本当にできることがなかったのかと、今感じています。神戸市側としては「できる限りのことをしました」と言っています。対応としまして、沙喜容疑者の妊娠中から、「育児に関して不安を抱えている」という連絡を、沙喜容疑者や家族から受けていて、出産後そして保育園に通っている最中も定期的に面談やケアを行っていたということです。6月になってから今後こちらの家庭に関してどうしていくか方針を決めるような会議、話を進めている中で、今回のことが起こってしまい、残念極まりないと話をされていました。

坂元キャスター:
「職権を発動しての強制的な一時保護はできなかったのか」と質問したのですが、一般的にそれはすごくハードルが高く、子供の人権が著しく侵害されていたりすることがはっきりしていないと難しいので、今回に関してはその要件には達していなかったようです。ですから、家族から一時保護をして欲しいという要望を受けて初めて一時保護できる状況でして、いざ保護しようとしたら家族に拒否されたのでできませんでしたという話なんですね
坂元キャスター:
子供が不幸な結果になる事件があると、毎回「今後検討するしかありません」という話に終始してしまい、具体的にどうすれば不幸な結果を防げたのか、これは分かりません。何度も起きてしまうことですが、本当に家族・親から子供を引き放すというのは相当なことですから、どのタイミングでどういうふうにするんだっていうことは、毎回課題になります

虐待が疑われる時は迷わず「189」に電話を…
関西テレビ 神崎報道デスク:
今回、神戸市としては、通報・連絡があったら結構すぐ対応していたんですけども、やはり保護できたかどうかというのは1つのポイントになってくると思うんです。例えば家族・家庭内から虐待を受けているということがあって保護要請があるとか、例えば近所の人から声が聞こえて虐待じゃないかというような形で通報があったりすれば、行政としてはある種強制的に保護に動けたと思います。今回そういうことではなかったので、強く保護するという方向には行けなかったのかと思います

近所の人が「警察が行った」という話があったが、警察は深く介入できないものなのか?
元大阪府警刑事 阿路川芳弘さん:
警察の姿を現場近くで見たと言いましても、通報によって現場に行ったのかどうかで大きく違います。巡回警ら中にたまたま近くに行っていたのを、近所の方が「警察が来ていた」と言っているのかもしれません。110番通報されて行けば、これは警察には通報という記録に必ず残ります。通報があって行ったのであれば、警察官は必ず何かしらの行動をしているはずで、そのまま帰るとかありえないです
視聴者からこんな質問が届いた。
Q.虐待の通報は匿名でもできますか?

関西テレビ 神崎報道デスク:
虐待を通報するダイヤル「189(いちはやく)」があります。そこに電話して、毎回子供の泣き声がするとか、すごく大きな物音がするとか、自分の名前は伏せてでも「どこの部屋でありますよ」っていうのは通報できますので、おかしいなと思われたら皆さん電話してほしいと思います
元大阪府警刑事 阿路川芳弘さん:
電話すると時間が掛かるとか、いろんな質問を逆にされる、名前を聞かれるというのがあるかもしれません。ですが、匿名でいいんです。私自身は通報を受ける担当になったことはありませんが、担当の部署は「名前言えへんかったら聞きません」ということは絶対ありえないので、匿名で結構なので、必ずささいなことでも電話してもらいたい。警察だけで事件を解決する時代ではなく、市民と一体となって解決する時代ですので、ささいなことでも電話してください

虐待を疑われる場合はためらわずに、児童虐待通報ダイヤル「189(いちはやく)」まで通報をお願いしたい。
(関西テレビ「newsランナー」2023年6月23日放送)