これは大分県杵築市、海の浅瀬に設置された水中カメラに映り込んだ映像です。

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泳いでるのは「クロダイ」です。そのうち一匹が、海底を掘り起こしています。

海底を掘り起こしているクロダイ
海底を掘り起こしているクロダイ

次の瞬間、何かを口にくわえました。

口にアサリをくわえている
口にアサリをくわえている

「アサリ」です。このクロダイが、この時期のレジャー定番である潮干狩りの禁止に大きく関わっているのです。

なぜ、クロダイが潮干狩りに影響?

「めざまし8」は大分県杵築市を取材しました。これは6月22日の守江湾の様子です。

大分県でも有数の潮干狩りスポットであった場所です。かつてはアサリ漁が盛んに行われ、多くの潮干狩り客で賑わいを見せていました。

しかし、現在はアサリがほとんどとれなくなっているのです。地元の漁師によると…。

地元のアサリ漁師:
潮干狩りの4月5月なんかは、3000人も4000人も来よったよ、1日にな。今はもう、アサリは全くとれないから。

現在は、潮干狩り自体が禁止されています。

統計を見ても、1985年をピークに漁獲高は下降の一途をたどり、潮干狩りが禁止になる場所が相次いでいます。

その原因の一つとされているのは、クロダイによる食害です。さらに、アカエイなどの別の生物による食害も起きているのです。

杵築市農林水産課の八田修さんに、原因について聞きました。

杵築市農林水産課 八田修さん:
地面を見てもらうと、穴が空いてるところがあるんですけど、ちっちゃい穴が。クロダイが空けた穴じゃないかと。

「そういう魚が、アサリの子どもや親を食べ尽くしてしまっている」と話す
「そういう魚が、アサリの子どもや親を食べ尽くしてしまっている」と話す

杵築市農林水産課 八田修さん: 
そういう魚が、生まれてきたアサリの小さい子供だったり、少しだけ残ってた生きてる親のアサリをどんどん食べ尽くしてしまって…。

杵築市農林水産課 八田修さん
杵築市農林水産課 八田修さん

クロダイは人気がなく市場での取引が少ないため、個体数が減りにくいという指摘もあります。この危機的状況に、地元のアサリ漁師たちは…。

地元のアサリ漁師:
生計が立たん、生活ができん。

地元のアサリ漁師:
孫にお菓子ひとつも買えん。今はいろいろ他の仕事行ったり。(Q.どういう仕事を?)タケノコの加工の仕事。

アサリが危機…このままではどんどん減少してしまう!?

なぜ、アサリ漁ができなくなるほど、クロダイやアカエイが増えてしまっているのか?熊本県立大学の堤裕昭特任教授に伺いました。

熊本県立大学 堤裕昭特任教授:
エイに関してはですね。あったかい水が好きなんですね。地球温暖化で、水温が全体的に上昇気味じゃないですか。クロダイは水温が下がってくると、深場の方に逃げる、寒いのが嫌だから。暖かい期間が、水温が高い期間が長くなると当然、岸の方に寄りついてる時間が長くなりますよね。

堤特任教授は、このまま放置すれば、アサリは全国でどんどん減っていくと警鐘を鳴らしています。

実際、全国では潮干狩りが禁止されたところも出るなど、影響は広がり始めています。

この危機的状況を回避するため、杵築市は2017年から、ネットで干潟を覆い、クロダイなどからアサリを守るという対策が行われています。

ネットで覆っている部分とネットを張っていない部分とでは、明確にアサリの生育に差がありました。

アサリはほとんどいない…
アサリはほとんどいない…

杵築市農林水産課  八田修さん:
網をかけて守ってあげれば、ある程度アサリは残るっていう。

ネットで覆った部分では、アサリは生き残っていた
ネットで覆った部分では、アサリは生き残っていた

同じ大分県内の臼杵市でも、市内の高校生や県の漁師などが協力して、アサリの稚貝を網で保護する活動が始まるなど、アサリ再生に向けた取組みが各地で広がっています。

(「めざまし8」6月23日放送)