マイナンバーをめぐるトラブルが相次いでいる。静岡県でも障害者手帳とのひも付けで62件のミスが確認された。全国でミスが相次ぐ背景について、県内の市長経験者は「マイナンバーの作業で自治体職員の負担が増えている」と指摘する。
ミス相次ぎ国が「総点検本部」
この記事の画像(18枚)岸田首相:
マイナンバーについては、今週に入ってもひも付けに誤りがある事案が確認されました。全ての事案を重く受け止め、国民のマイナンバー制度に対する信頼を一日も早く回復するべく、政府・地方自治体・関係機関一丸となって全力を尽くしてください
2023年6月21日 初会合が開かれた「マイナンバー情報総点検本部」は、デジタル庁と厚生労働省、それに総務省を中心にした省庁横断型で、河野デジタル担当大臣が司令塔を務める。
ひも付けのミスなどを点検するとともに、ミスが生じない仕組み作りを進め、2024年秋のマイナ保険証移行に向けて、国民の不安を払しょくすることが狙いだ。
静岡県は障害者手帳で62件のひも付けミス
マイナンバーをめぐっては、静岡県内でも6月20日に別人の身体障害者手帳の情報とひも付けるミスが62件発覚した。
静岡県によると、身体障害者手帳管理システムに登録されている9万1568件について、マイナンバーに間違って別人の情報がひも付けされたケースが62件確認されたという。
内訳として、同姓同名の人の情報を十分に確認しないままひも付けてしまったのが47件、同一の個人番号に複数の手帳記録をひも付けてしまったのが15件だ。
県は6月20日時点で個人情報漏洩などの影響はないとしている。
県 障害者支援局・石田 雄一 局長:
マイナンバー登録の信頼性を失う形になってしまったのは、誠に申し訳ない。利用者の方もそうだし、制度の面でも申し訳ないと思っています
なぜこのようなひも付けミスが起きたのか、県の説明だ。
まず同姓同名の確認不足についてだ。
障害者の個人番号を住基システムから取得する際、県はカナ氏名と生年月日の2つの情報だけを用いて取得していた。これでは同姓同名の人は判別できない。
この場合、住所などの追加情報を確認する必要があるが、十分な確認をしていなかったため別人を登録してしまったという。
次に手帳番号の重複だ。
一度発行したAさんの手帳番号を何らかの理由で途中で取り消した場合、この手帳番号1という情報を消去しなければならないが、これを消し忘れて別の人Bさんの手帳番号を登録したため、Aさんの個人番号にBさんの手帳情報も登録されてしまったという。
ひも付け作業は、2017年度からは障害福祉課の職員1人が主に担当していたという。確認作業が十分に行われていたのだろうか。
県民も不安「病歴が悪用されたら」
トラブルが相次ぐマイナンバーに、不安を感じている人が多いようだ。
県民:
もしかしたら自分の個人情報が流出している可能性もあるので、そういったところはきちんと管理してもらわなければとは思います
県民:
保険証となると病歴が(漏えいして)もし悪用されてしまったら、すべてがばれてしまう。それって本当にいいのかな
県民:
見切り発車といういい方は変ですが、固まっていないのに始まってしまったという印象はあるので、もう少し具体的に物事を確定させてから進めてもよかったのかな
県民:
便利ですよね、たぶん。ちゃんと機能すれば、少しずつ良くなっていくんじゃないですかね
マイナカード申請窓口の自治体は負担増
国の平均を上回る約8割がマイナンバーカードの申請を終えた下田市。ひも付けミスなどの大きなトラブルは起きていない。
下田市 市民保健課・西川力さん:
申請は基本的にはインターネット等で、ご自分でやれるというのが基本なんですが、窓口では職員が必ずついて一緒にやるという格好になっていますので、大きな問題が起きないようお互いに注意、チェックしながらやっているような状況です
丁寧な対応で問題を回避している下田市だが、国の方針への迅速な対応が求められるなど負担は大きいと話す。
下田市 市民保健課・西川力さん:
(国には)迅速な情報提供をしていただければこちらも対応できますし、あとは人的、金銭的な部分も補助がいただければ。こちらもマンパワーが足りないという実情もありますので、そのあたりもしっかりやっていただいて、(国と市町村の)お互いなんですけれど、頑張っていければいいなと
県内の市長経験者は、マイナンバーカードの申請受付やひも付け作業などで、市町村の負担が増えており、国の支援が欠かせないと話す。
元牧之原市長・西原茂樹氏:
ひも付け作業をやっているのは国ではなくて市町村。入力やひも付けは人が手でやるから、当然ミスが起こる。それをチェックするには人手がいる。本当は国から予算とか人的支援がないとできない。マイナンバーはシステム自体は良いことだと思うが、その入力のところで、国がしっかり自治体を支援してほしい
国民の約8割がマイナンバーカード取得
トラブルが続くマイナンバーだが、マイナンバーカードは2023年6月11日時点で日本の人口の77.2%が申請している。
このうち健康保険証とひも付けしている人は69.3%、給付金などの受け取り口座とひも付けしている人は60.6%だ。
大勢の人がすでに申請とひも付けを済ませたが、静岡県の障害者手帳のひも付けミスなどトラブルも相次いでいる。
総務省の調査でマイナポイントの誤った付与が、131の自治体で172件確認されている。
静岡県浜松市ではマイナンバーカードの顔写真を、別の人の写真と取り違えて交付しようとするミスも発生した。
政府が21日に設置した総点検本部では、自治体との「窓口役」の職員を総務省に置き、連携を密にしていくという。国と自治体のしっかりした連携で、国民の信頼を回復する必要がある。
(テレビ静岡)