2023年6月2日の大雨で静岡県磐田市の川の堤防が決壊した。前年9月の台風で決壊したところと同じ場所だ。川を管理する静岡県が開いた説明会で、被災者から不満の声があがった。2回の決壊の理由をいずれも“想定外の雨”とされ、被災者は「謝罪がない」「責任を取る人がいない」と批判した。
記録的な大雨 前年と同じ場所が決壊

2023年6月2日 台風2号の北上に伴って静岡県は長時間にわたって大雨となり、線状降水帯が4回発生した。

24時間で降った雨量は山間部で400mmを超え、多い所で500mmに達した。平野部でも300mmを超え、多くの地点で24時間雨量が観測史上最多を記録した。たった1日で、平年の6月1カ月分の1.3~1.5倍の雨が降った。

この雨で磐田市の敷地川の堤防が決壊した。前年2022年9月の台風で決壊したところと同じ場所だ。

周辺の27棟が浸水し、川の近くに住む高齢男性が川に流され、遺体が河口付近の海岸で見つかった。

2年連続で浸水被害にあった住宅も多く、ようやくきれいにした家にまた土砂が流れ込み、落胆も大きかったようだ。ボランティアの支援をうけながら、土砂のかき出しや清掃作業に汗を流していた。
前回は土のう 今回は鉄板や大型ブロックも
決壊場所は川がカーブして、流れがあたりやすい所だ。

2022年の台風の後、大型土のうを積み、盛り土をした。仮復旧工事は2022年10月に完了し、2023年秋に川幅を広げコンクリートブロックで護岸を固める本格工事に着手する予定だった。

今回の決壊の原因について、国や静岡県の担当者は、「水量がすごくて土のうが沈下・滑落し、むき出しになった護岸が水に削られ決壊した」と説明する。「洗掘」という現象だそうだ。

今回は、従来の大型土のうに加え、堤防に鉄の板を2列平行に打ち込むなど、強度や耐久性を高めた応急復旧工事を6月末までに完了する予定だ。

さらに川底や川岸の洗掘を防ぐように、重さ2トンのブロックを105個敷き詰める。国が保有する復旧資材の提供をうけた。出水期の終わる2023年10月以降に川幅拡幅などの本格工事をする。

川勝知事は6月6日に現場を視察し、「三度目があってはならない」と、より強度を増した復旧工事や支援を磐田市長に約束した。
被災者「謝罪なし」「責任を取る人がいない」

静岡県は19日夜 被災者を対象にした説明会を開いた。17日に地区の自治会役員を対象にした説明会は公開だったが、被災者対象の19日は非公開だった。工事の概要などが説明されたという。
被災者 約20人が出席し、「なぜ二度目の決壊が起きたのか、去年の台風の後の応急工事は適切だったのか」という質問や、県の責任を問う声が多く上がったという。
説明会は午後7時から9時半まで2時間半に及んだ。会場を出てきた被災者に聞いた。

被災者:
1回目も「想定外の雨だった」で、今回も「想定外の雨」と言われても。1回想定外を体験したのに、それがなんで生かされなかったのかと。まずは謝ってほしい。
(Q.県から謝罪はなかったですか?)
そういう言い方はちょっと。もう少し、素直に伝わる言い方の方がいいと思うのですけど
(Q.県は二度目の決壊の責任を認めていない?)
「痛恨の極み」という表現はしていたので、(責任の認識が)ゼロではないと思う。ただ、「すみません。申し訳ありませんでした」と素直に言わない

別の被災者:
責任は誰にあるんだ、誰が責任を取ってくれるかということ。責任を取る人がいないんだよ。今の復旧工事の説明はあったが、それではなくて、二度決壊した原因を説明してくれということ。(Q.県から説明はありましたか?)
県は説明できないんだよ
(Q.被災者の皆さんの不満はどう伝えましたか?)
知事が視察にきたけど、被災者のところにあいさつがない。国交省の人が来ても、(被災者に)何も話さない。
県「前回の応急工事は適切だった」
なぜ、2022年の台風被災の時に、今回のような入念は対策工事をしなかったのか。説明会の後、会場から出てきた県の工事責任者に聞いた。

県袋井土木事務所・榊原正彦所長:
(前年の台風後の工事は)復旧した後、(本格復旧工事のために)早期に堤防の高さを戻さねばならない、堤防の厚さを確保しなければならないということで、施工性・汎用性のある大型どのうを採用した。全国の河川でしている一般的な工法です。
(Q.前回の応急工事が適切だったのか、検証はしないのですか?)
一般的な工法で、適切だと思っています

県は文書を用意して、前回の応急工事の維持管理を適切に行っていたことや、今回の被災のメカニズムを説明するそうだ。
県袋井土木事務所・榊原正彦所長:
我々としては、できることをひとつひとつ積み重ねて地元の方の信頼を得ていく、それに尽きると思っています。
(Q.被災者は謝罪を求めていますが?)
私どもは去年の対応で、しっかりやったと思っています。残念ながら二度目の被災を受けてしまいまして、それについては本当に痛恨の極みだと思っています。
(Q.それでは被災者の皆さんは納得しなくて、双方の間に溝が残ると思うのですが?)
しっかり対応して、ひとつひとつ溝を埋めていきたいと考えています

「想定外の雨」で納得してもらおうとする県と、「その一言で済まされてはやりきれない」と感じる被災者。双方の間にできたように見える溝は、埋まるのだろうか。
県が新たに用意する文書は各世帯に送付されるだけで、次の説明会の予定はない。
(テレビ静岡)