青森の夏を彩る「弘前ねぷた」。6月10日、その巨大な山車が愛媛に初上陸した。迫力のねぷたが夜の街を練り歩き、会場は詰めかけた見物客の熱気であふれかえった。
“東北の夏祭り”が愛媛に初上陸
「弘前ねぷた祭り」は青森県で毎年8月初旬に開催される。

江戸時代中期の文献に登場してから300年余りの歴史を持つ七夕の祭りで、国の重要無形民俗文化財にも指定されている。その東北の夏祭りが愛媛にやって来た。

6月9日、1台のトレーラーが今治港に到着した。運ばれてきたのは輸送用にバラバラにしたねぷたのパーツで、大型クレーンを使って、慎重に下ろされていく。手際よく組み立てられた後は、入念に動作がチェックされ、翌日の本番に備える。

弘前市観光課・大竹芳知主事:
(ねぷた祭りの)期間が近づくたびに、弘前市では「じゃわめぐ」って言うんですけれども、気持ちがたかぶって楽しみにしてる人が多い。そんな歴史ある文化だと思います。(愛媛の)みなさん楽しみにしていらっしゃると思いますので、ぜひその雰囲気を再現できたら

愛媛・今治市は姉妹都市を結ぶ群馬・太田市を仲立ちに、2022年から青森・弘前市と交流をスタート。2023年2月にはお互いの市で、それぞれ特産のかんきつとリンゴを販売するフルーツ交流を行うなど、一気に距離が縮まった。今回は今治の人たちに勇壮な祭りを楽しんでもらおうと、ねぷたの披露が実現した。
大迫力のねぷたがお目見え
そして本番当日。会場になった今治港・はーばりーには「津軽三味線」や「ねぷた囃子」が響く中、いよいよねぷたのお披露目の日。
運行の1時間以上前から大勢の見物客が集まり、早くも会場の熱気が高まる。

掛け声:
ヤーヤドー、ヤーヤドー
午後7時半になると、勇ましいかけ声とともにねぷたに明かりがともされ、会場に向けていざ出発。
今回やって来た山車は、扇形をした「扇ねぷた」と呼ばれる種類で、高さ8メートル、重さ1トンと60台余りある弘前ねぷたの中でも最大級のもの。

勇壮な武者絵を描く正面の「鏡絵」は、中国の小説・水滸伝の「花和尚奮戦の図」で、妖艶な美女を描く後ろの「見送り絵」は「静御前」だ。

交差点では、ねぷたの高さが変わったり回転したりする演出もあり、観客から歓声が起こっていた。

子どもたち:
ヤーヤドー、ヤーヤドー

新居浜から訪れた女の子:
なんかすごかったです。きれいな絵だなと思って感動しました。青森のイベントがこっちに来てくれてうれしいです
親子連れの父親:
もうすごかったですね。大きいのとぐるーって回るのがもうすごくて、にぎやかでよかったです

高齢の男性:
一生見れるか見れんか。来年もやってもろたら、また来ます
「まだ来年くるはんで、へばなー!」
土曜の夜、ねぷたは市内の大通りを約1時間かけてゆったりと練り歩き、集まった5万人の観客は、本場さながらの弘前ねぷたの熱気に酔いしれた。

弘前市・櫻田宏市長:
今治初上陸で運行できたことを感謝申し上げます。次の時代を担う子どもたちに受け継いでいく。その決意でこれからも弘前ねぷた、頑張ってまいります
今治市・徳永繁樹市長:
弘前の夜はいかがでしたか?再び弘前ねぷたが、またやってくるその日を夢見て。きょうは本当にありがとうございました
ねぷたのひき手を務めた大竹さんも、予想以上の反響に感動していた。

弘前市・大竹芳知主事:
正直言ってこんなにたくさんの方、来てくださるとは思わなかった。びっくりなところが一番ですかね。たげ楽しかったはんで、今治市にまだ来年くるはんで、へばなー!(またね!)
愛媛初上陸となった弘前ねぷた。青森の夏の風情を今治に運んでくれた。
(テレビ愛媛)