宮城発のアパレルブランド「サムライアロハ」をご存じだろうか。すべて1点もののアロハシャツは、不要になった着物を再利用して作られている。海外からの注文も多いというサムライアロハ。その「サムライ」という名前には、震災からの復興を発信したい、そんな思いが込められている。
この記事の画像(10枚)世界に一つだけのアロハシャツ
2023年3月、仙台市中心部の商業施設にオープンした、アパレルブランド「サムライアロハ」の全国初となる常設店舗。店内には着物を仕立て直して作られた、色とりどりのアロハシャツが並ぶ。上質な絹が素材のアロハシャツは、光沢があり、しっとりとした質感で、着心地も抜群だ。
「サムライアロハ」の生地に使われているのは、主に宮城県内で買い取った着物だ。一枚の着物から作られるアロハシャツはわずか1着だけ。商品はすべて世界に一点しかない。
一番人気は留め袖で作ったシリーズだという。着物の足元の合わせの部分をシャツの前面のデザインと使っていて、着物を再利用して作られたものとは一切思えない。
客に話を聞くと「一点ものというのがいい。誰も着ていない」「海外から来る人にとっても日本らしくていい」といった声が挙がる。中には、自分で着物を持ち込んでシャツをオーダーする客もいるというほど、ブランドの認知度は高まりつつある。
2億枚「不要な着物」もう一度光を…
サムライアロハを手掛ける櫻井鉄矢さん(42)。仙台市内で古物商を営んでいる櫻井さんは、全国で2億枚あるとされている、着られていない着物に目を付けた。アロハシャツの起源が、ハワイ系の日系移民が着物から開襟シャツをつくったこと(※諸説あり)であることをヒントに、眠った着物を再利用し、アロハシャツにリメイクする事業を始めたのだという。
サムライアロハ 櫻井鉄矢 社長:
宮城県だけでも、サムライアロハで使用させていただく着物は十分集まっている状況で、だいぶ眠っていると思う。せっかくシルクのいいものなので、もう一度光を当てて日本中・世界中に販売していきたい。
買い取った着物すべてがアロハシャツになるわけではない。その中から、素材として使えそうなものを選び、一枚一枚、手作業で糸をほどき反物に戻していくことから、「サムライアロハ」作りは始まる。
仕上がりをイメージしながら作業をするのは、震災で被災した女性たちだ。自身も岩沼市の実家が津波の被害を受けた櫻井さん。近所の保育所も被災し、子供を抱え、働き先に困る知り合いに声をかけたのがきっかけに、震災復興に一役買おうと考え、被災した女性たちに働いてもらおうと考えたのだという。
サムライアロハ 櫻井鉄矢 社長:
東日本大震災で職を失ったお母さんや子供が小さくて働けないお母さんたちの内職としてできればとやっている。お母さんたちには自分たちのセンスで素敵なものを作ってもらうようにしている。
宮城で裁断された生地は、岩手と福島の工場に送られて縫製され、それぞれの土地の女性職人たちの手によって「サムライアロハ」に仕立てられるという。
サムライアロハ 櫻井鉄矢 社長:
東北・日本中の着られなくなった着物を集めて、東北のお母さんたちの手で作って、日本中・世界中で販売して、この地域を活性化したい。100年前にハワイに移り住んだ日系人が着物をシャツにしたのがアロハシャツの始まりなら、苦しい時代を乗り越えた、私たちが作るものも新しい歴史を作ることができると思う。
サムライ「不屈の精神」で復興を発信
発売から5年。1枚1万7000円ほどからおよそ3万円と決して安くはないが、宮城発の「サムライアロハ」は、インスタグラムなどのSNSを通じて世界に広がり、リピーターも増えつつある。櫻井さんのパソコンには、イギリスや香港などからも注文のメールが届いていた。
サムライアロハ 櫻井鉄矢 社長:
引き継がれていく伝統を捨てるより、作り替えて、もう一度光を当てるのも良いと思う。震災から12年は経過していますが、宮城県や東北のお母さんたちの力を集めて、サムライの不屈の精神でサムライアロハを作ったので、サムライに負けないように逆境を乗り越えていきたい。
着物の魅力と震災からの復興を世界に向けて発信するために。一人のサムライと、震災に負けない女性職人たちの挑戦は続く。
(仙台放送)