長崎の路地を歩いて、普段は気づかない意外なもの、面白いものを探す「路上観察」を趣味とするグループがある。「不要不急の外出がしづらい」、そんな社会の目が解けて活動を再開した。
普段気づかないまちの魅力を探す
長崎のまちをゆっくり歩いて、看板や塀、門、マンホールなど、普段は気づかない意外なものを発見しておもしろがるグループがある。名づけて「長崎路上観察学会アルキメデス」。

名前の由来は、
「アル」―「歩」いてみなくちゃ、
「キ」―「気」づかない
「メ」―「目」玉が
「デ」―「出」会った
「ス」―「素」顔の長崎
と遊び心にあふれている。

1993年に発刊された「歩き目です 長崎おもしろ探偵手帳」。この本の発刊をきっかけに始まった長崎のまち歩きの先駆け「アルキメデス」。長崎のまちの路地を歩いて、普段は気づかない意外なもの、面白いものを探す「路上観察」。
毎月1回、活動を続けてきたが…。

漫画家・マルモトイヅミさん:
コロナ禍で不要不急の外出はダメだということで、外を歩くからいいのかとも思うが、バスに乗って集合したりとか、ただの物好きで歩くのは不要不急だよなっていうことで一応、休会ということにしました。ちょっと世の中自体がすごく窮屈だなって気がしました
不要不急の外出がしづらい、そんな社会の目が解けてアルキメデスは活動を再開した。2016年から「アルキメデス」の会長を務めている漫画家のマルモトイヅミさんに、まち歩きの魅力を聞いた。

アルキメデス2代目会長・マルモトイヅミさん:
乗り物に乗ってしまったら見逃すものがすごくたくさんあって、スピードの速い今だからこそ、ゆっくりと歩く速度が大切。歩いてみないとわからないまちの良さがあると思います
初代会長を務めたのは、元長崎県庁マンで今は亡き、森草一郎さんだ。当時、長崎のまちの魅力を次のように話していた。

――長崎のまちの魅力は?
アルキメデス初代会長・森草一郎さん:
古いものと新しいものが共存しているのがいい。海があり、坂もあり、斜面都市でバラエティーがある、長崎は面白いまち。今からでも新しい発見があるかもしれない
長崎のまちの魅力をこう語っていた森さんは、まち歩きを楽しみ、旅を愛し、人生を謳歌(おうか)して、2019年に83歳で亡くなった。
雨の中でも歩くのが流儀
「アルキメデス」は2022年11月に活動を再開し、この日は梅雨入り後の小雨の中、長崎市の上町や玉園町かいわいをそぞろ歩いた。

アルキメデス2代目会長 マルモトイヅミさん:
雨の中でも歩くのが私たちの流儀です。長崎は雨が似合うまち。アジサイも今咲き頃ですし
目的地は決めずに、足の向くまま、気の向くまま。そのときの気分次第で路地を歩く。

アルキメデスメンバー:
すごいわ、これ。純粋階段
純粋階段とは「無用階段」と呼ばれる。もともと階段の先に扉などがあったものが多く、設計変更などの原因で、新設当時から無用階段になってしまったものも存在する。

昔、この先に何があったのかを想像するのも面白い。普段は何気なく見過ごしてしまう場所やモノも、好奇心いっぱいに訪ね歩くと不思議な魅力がいっぱい。
30年前の風景と今の長崎を比較
活動を始めた30年前の長崎のまち。では、今はその場所はどうなっているのか。

メンバーはいま、30年前に切り取った風景と、今の長崎を対比させる写真展の準備に追われていた。
アルキメデス2代目会長 マルモトイヅミさん:
自分の中で忘れていた記憶を呼び覚ましてほしい

歩いてみなくちゃわからない長崎の不思議の魅力、アルキメデスは、これからも長崎の路地を歩いてまちの再発見に挑む。
写真展「長崎の30年いまむかし」
◆長崎・石丸文行堂 2023年6月16日~18日
◆長崎市役所 8月22日~9月4日
(テレビ長崎)