鹿児島・薩摩川内市に6月、ブドウ栽培からワイン製造までを一貫して行うワイナリーがオープンした。どこか懐かしい風景の醸造室はかつて教室だった部屋が使われている。廃校となった小学校がワイナリーとして再出発した様子と、このワイナリーの目指すものを取材した。
校舎の名残感じられるワイナリー
6月5日、薩摩川内市入来町にオープンした「朝陽ワイナリー」。名前の由来となった「朝陽」は、2018年に廃校となった朝陽小学校の校舎を使用していることにちなんでいる。

地域住民ら約70人が参加した開所式では、ワイナリーの責任者で、県内で障害者支援施設を運営している中嶋志郎さんがあいさつをした。

ワイナリーの責任者・中嶋志郎さん:
鹿児島県内きってのブドウ生産地である薩摩川内市で、初のワイナリーに生まれ変わりました。ブドウの栽培からワインの生産、販売まで一貫して行い、障害のある人も関わっています

朝陽ワイナリーのコンセプトは、地域の特産品を生かし、障害者の就労支援にも貢献することだ。校舎内に作られた醸造室には、ワインを製造するための最新式のタンクや機械が並ぶ一方、壁に黒板がそのまま残されるなど、かつての教室の名残も感じられる。

訪れた地域の人たちの評判も上々だ。
地域住民A:
(学校が閉校になり)最初は心配していたが、こんなの(ワイナリー)が来てくれて良かった。これで華やかになりそうです
地域住民B:
地域が活性化し、素晴らしいのができた
学校近くの畑でブドウ栽培 障害者雇用も
この日は出荷に向けた準備作業や、製造の中心を担うスタッフの研修が行われていた。

原料のブドウは、まだ海外産のものを使っているが、年内には薩摩川内産のものを取り入れる予定になっている。

運営スタッフにワイン製造を指導・椎木稔幸さん:
瓶詰めした後、この環境でワインを造るのも初めてですし、詰めるのも初めてですから、これがこの環境の中で(出荷までに)どういうふうに成長していくのか、それを見極めたい

この廃校を活用したワイン製造は、薩摩川内市が市の事業として、施設の改修費用の半分を補助している。学校の近くにある畑では、ワインの原料となるブドウの栽培が始まった。こちらも市が所有していた耕作放棄地が無料で貸し出されている。

薩摩川内市財産マネジメント課・下薗伸一課長:
雇用も生まれている状況があり、非常に地区にとってもよいことだと考えています。にぎわいを創設し、地区の振興につなげたいということで、これからも同じような取り組みを進めていきたいと考えています

今後、ワイナリーでは就労支援の場として、障害者約20人がブドウの栽培からワイン製造に携わる予定になっている。
“地元産ワイン”8月に出荷予定
廃校となった校舎を活用し、新たな地域振興につなげようと始まった「朝陽ワイナリー」では、甘みのある赤とすっきりとした辛口の白が製造されていて、ワインは薩摩川内市内の物産館や酒店を中心に今後、販売を広げていく計画だ。

ワイナリーの責任者・中嶋志郎さん:
ブドウ栽培であったり、ゆくゆくはワインの醸造まで、障害のある方たちにやっていただきたい。たくさんの方たちに来ていただき、地域の方々と共にワイナリーを盛り上げていきたい

現在、ワインは瓶詰め後の熟成を行っていて、今後、ラベルのデザインや最終的な価格を決定して、8月に約2,200本が出荷される予定になっている。鹿児島の廃校利活用から生まれた地元産ワイン。その味を楽しめるまで、あともう少しだ。
(鹿児島テレビ)