“うどん通”の間で根強い人気がある、福岡・北九州発祥の「豊前裏打会」。一般的なフランチャイズとは一線を画した手法で県内外に40店舗以上が出店中。原材料の高騰やコロナ禍を乗り越えた独自の理念に迫る。

讃岐とも博多とも異なる…独自の流派“豊前裏打会”

北九州市小倉南区に店を構える創業25年の人気うどん店「津田屋官兵衛」。連日、昼どきには多くの客でにぎわいを見せる。

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この店の名物が「ごぼううどん」。丼ぶりから飛び出すサクサクのゴボウのかき揚げと、博多うどんとは異なる細目で、しっかりコシのある麺が特徴だ。「麺とごぼうの相性がばっちりです」「いつも並んでいるので時間がないと来れない」などなど、うどん通の間で絶大な人気を誇る。

この店で修行して、のれん分けを許された職人たちで作る集団が「豊前裏打会」。三大うどんに数えられる讃岐うどんや稲庭うどん、さらには柔らか食感の博多うどんとは一線を画す独自の流派として頭角を現している。

「津田屋官兵衛」店主・横山和弘さん:
讃岐を“表”とすれば、われわれはド素人のやり方だったので、それで“裏打ち会”という名前になったんですよね

「掟」を守り…個性的なうどんで全国へ

独自の手法で打った、のど越し良くコシのある麺は多くのファンをつかみ、「うどんの道」を志す同志の心を捉えた。

「麺屋満月」店長・岩下輝さん:
それまで食べていたうどんと全然違って、感動した

「津田屋官兵衛」からのれん分けした豊前裏打会のうどん店は福岡県内だけに留まらず、東京を含め、全国42店舗に拡大している。

のれん分けとは言っても、一般的に言われるフランチャイズのような縛りはなし。麺の製法など、根本となる「掟」を守れば、細かい部分は自由とされている。それぞれの店主に裁量を持たせた運営方針は、個性的な店作りにつながっていた。

北九州市八幡西区に2022年にオープンした「麺屋満月」。北九州発祥の人気うどん店のグループ「豊前裏打会」の一員だ。

「麺屋満月」店長・岩下輝さん:
こちらが満月です

うどん…かと思いきや、見た目はまるでラーメン。
早速食べてみると、食感の良さは抜群だ。

「麺屋満月」店長・岩下輝さん:
100%豚骨。そこに合うように麺をどんどん改良している

独特の食感やのど越しは、豊前裏打会の加盟店だけが使える独自の小麦粉から生まれる。

「麺屋満月」店長・岩下輝さん:
粉の特徴は麺の発色が良いのと、コシが強くて、ひきが強いという食感になりやすいのが特徴です

さまざまな種類をブレンドした豊前裏打会、独自の小麦粉。加盟店が共同で仕入れることで味や食感の統一を図れるだけでなく、それぞれに仕入れるより値段が安くなり、送料も半分に抑えられている。
さらに、生地の熟成に通常の4倍の24時間をかけるなど、手間暇かけた麺や材料を「切りたて、揚げたて、湯がきたて」で提供するのが豊前裏打会の根本となる「掟」なのだ。

加盟して15年になるという「麺屋満月」店長の岩下さんに、入門のきっかけを尋ねると…。

「麺屋満月」店長・岩下輝さん:
最初、うどんには興味がなくて、(自分は)うどん屋に行っても、かつ丼を食うような人間だった。師匠の店で「すごい、こんなうどんがあるんだ」と、それまで食べていたうどんとは全然違ったので感動した

のれん分けで最初に開いた店は、既に後進に譲ったという岩下さん。現在は次なる挑戦として、この店で新たな可能性を追求している。

「麺屋満月」店長・岩下輝さん:
値段の縛りもメニューの縛りもなく、みんながギラギラしてやっているのが裏打ち会の魅力だと思う

独創的な“旬のうどん”を提供する店も

福岡市中央区の「萬田うどん」。奥にはテラスもあり、一般のうどん店とは趣が異なる。

「萬田うどん」店長・立石麻弥さん:
清潔感と、女性が1人でも入りやすいような空間を提供したくて

独創的なのは内装だけではない。季節に合わせ、旬の食材を取り込んだオリジナルのうどんが評判だ。

「萬田うどん」店長・立石麻弥さん:
いま一番のおススメは、トウモロコシのかき揚げぶっかけが旬。半透明の麺で、黄金色の細麺が裏打ち会の特徴です

これまでに作り出した旬のうどんは20種類以上。どれも独創的なメニューだが、豊前裏打会の掟をきちんと守り「切りたて、揚げたて、湯がきたて」を提供している。

勢力拡大も…「縛り」を設けない理由とは

個性豊かな加盟店がそれぞれのスタイルで勢力を拡大する豊前裏打会。一般的なフランチャイズチェーンとは異なり、加盟料やメニューなどへの細かな縛りはない。

のれん分けを許した弟子たちに、なぜ「縛り」を設けないのか。

「津田屋官兵衛」店主・横山和弘さん:
うちだけが儲かっても(仕方がない)と思い、彼らが出店しやすい環境をつくろうと思った。とにかく2号店、3号店を出せるような状況、出来るだけ展開しやすい状況にしておきたいと思った

40年前、自らも会社勤めから転身し、苦労を重ねた横山さん。忙しい今も時間を作っては、のれんを分けた弟子たちの店に足を運んでいる。

「津田屋官兵衛」店主・横山和弘さん:
食べ歩いて、食べたら「俺のところよりうまい」というのが、なんぼでもあるんですよ。そのときに熟成何時間でしているのかと聞いたりしてね。うちのグループはみんな「うどんバカ」ですから、うどんの話しかしないんですよ。すごく刺激になりますよね

かつて香川の讃岐うどんが一大ブームとなったように、北九州発祥の豊前うどんが全国を席巻する日が来るかもしれない。

(テレビ西日本)

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