ボタン1つで手軽に買える、自動販売機の多様化が止まらない。今や飲み物だけでなく、食べ物もスタンダードになっている。福岡県内で、食品の自販機が増える秘密に迫った。
増える食品自販機…変わりダネが色々 破格の“わけありセット”も
まずは、福岡市早良区を訪れた。黒色の存在感ある自販機で売られているのは…
なんとズワイガニ。カニの卸売りを行う企業が5月14日、直売所の隣に設置した。ちょっと食べたい時にうれしい1～2人前の本ズワイガニが2,500円で販売されているほか、500グラム500円という破格の「わけありカニすきセット」も期間限定で買うことができる。
自販機をセットした「TMフーズ」の 宮田雄太さんは、「営業時間外でもカニが買えるって、かなり反響をいただいています。なかなか海産物の自動販売機って珍しいと思うので、ぜひ安い価格で買っていただきたいと思います」と話す。
一方、粕屋町に登場した焼き芋の自販機には、ほかほかの温かいものだけでなく、“冷やし焼き芋”もある。
“ひえひえつめたい”と書かれたボタンを押すと、よく冷えた缶が出てきた。中に入っていたのは、食べきりサイズの焼き芋2～3本。糖度60度の甘さがある「紅はるか」をじっくり熟成させて作られている。そのお味は…
中まで蜜がたっぷりで、とろける甘さ。しっかり冷えていて、暑い季節にぴったりだ。
その他にも高級食材のフグに、なんと、食べ物を飲み込むのが難しい人でも食べやすいよう調理された、嚥下（えんげ）食まで。リゾットやポタージュなどが販売されている。
さらに福岡を代表するラーメン店「一風堂」も、博多区の店舗横に冷凍ラーメンの自販機を設置。ひと月に100食以上売れているという。
1年半で3000台以上 大ヒット自販機がブームの火付け役に
街中に増える自販機。その秘密を探るため、自販機の製造販売を行う「サンデン・リテールシステム」九州支社を訪ねた。
実はブームの火付け役となったのが、この会社が販売した冷凍・冷蔵食品専用の自販機「ど冷えもん」だ。2021年1月に販売を開始したところ、1年半で3,000台以上を売り上げ、大ヒットとなった。
サンデン・リテールシステム九州支社 加賀山英樹さん：
ここまで自動販売機が注目されたのは、正直、初めてなくらいです。ちょっとびっくりしています
これまで冷凍食品の自販機は、ほとんど決まったかたちのものしか入れることができなかったが、「ど冷えもん」は様々な形状の容器に対応。食品パックはもちろん、アイスクリームのカップなど、最大11種類の商品を販売することができ、飲食店などからの問い合わせが相次いでいるという。
サンデン・リテールシステム九州支社 加賀山英樹さん：
自動販売機は、メーカーに販売するところが主なところだったんですが、飲食店、一般の方が使えるというところが非常に大きなメリットになっている
“自販機ストリート”も登場 売り上げ好調で名物商店街になるか？
この「ど冷えもん」をはじめ、様々な自販機が密集しているエリアが福岡にある。昭和の雰囲気が残る町、福岡市博多区美野島だ。
商店街を歩いてみると…、約500メートルある通りの周辺には、ホルモンやモツ鍋など、様々な食品自販機が点在。いま美野島商店街は、「自販機ストリート」になりつつあるのだ。
商店街にある数店舗の設置に携わった、自販機の企画販売を行う自販機プロデューサー・堤真一さんは、「次世代のテイクアウト型に変えていかないといけないと相談があって導入したところが、たまたまバズった」と話す。
自販機プロデューサー・堤真一さん：
こんにちは～。調子どうかなと思って
お店の人：
調子はいいですね～
最初に導入したのは、1人前の「モツ」を販売する自販機だ。2021年4月の設置後、来店客が「モツの自販機とか初めて見た！」とSNSに投稿したところ、2.8万件の「いいね」が付き、多くの人が買いに来るようになったという。
1人前350円から販売していて、店によると、自販機による売り上げは月に15万円前後になるという。
自販機プロデューサー・堤真一さん：
この価格ですからね。これで15万って、けっこう売れていると思います。考えたら400食売っているってことですからね。飲料の自販機と同じくらい回転してますよ。そう考えるとすごいですね
この自販機の成功をきっかけに、他の店舗も導入を始め、いまでは製麺所が作るオリジナル麺やギョーザ、ペットフードなど様々な食品自販機が並ぶ通りとなった。
自販機プロデューサー・堤真一さん：
これだけ商店街で自販機が固まってるのは珍しい。本当に継続的に売り上げが立っているから、「うちも導入しよう」とこれだけ広がったんじゃないかなと思います。名物になるんじゃないですか、全国的に。自販機の名物商店街って
街に増えた変わりダネ自販機。今後もさらに広がりをみせそうだ。
（テレビ西日本）
