台風2号の影響で、静岡県にも記録的な大雨が降った。線状降水帯が4回発生、浜松市の山間部では土砂崩れが発生し、倒壊した住宅から男性(35)の遺体が見つかった。自然が好きで、この地域の活性化に協力しようと移住してきた男性だ。交流を深めてきた地域の人たちの落胆は大きい。
線状降水帯が4回発生

2023年6月2日から3日にかけて静岡県を襲った大雨。特に2日は午後4時から午後9時にかけて、線状降水帯が4回も発生した。4回とも県西部は対象地域に含まれていた。

警戒レベル5の「緊急安全確保」が、県西部の磐田市と袋井市、それに東部の沼津市に発令された。
県によると、県西部で時間雨量が最大だったのは浜松市北区引佐町渋川の62mmで、総雨量は467mmに達した。
行方不明直前に知人を気遣うLINE

その地区で土砂崩れが発生し住宅が土砂に押しつぶされ、この家にひとりで暮らす水野真彰さん(35)が2日の夜から行方不明となった。

水野さんは浜松市の「地域おこし協力隊」として2020年4月からこの地域で活動して知人も多く、行方不明になる直前には知人にLINEをして気遣っていた。

水野さんの知人:
2日午後8時までにLINEが来ていて、(水野さんは)「今帰った」と。向こう(水野さん)の方が、僕を心配していた。「気をつけてくださいね」と
しかし、3日午後11時半頃、倒壊した住宅1階の北側で遺体が見つかり、水野さんと確認された。
害獣駆除や田植え 地域で愛され
水野さんが務めていた浜松市の地域おこし協力隊「浜松山里いきいき応援隊」は、高齢化や人口減少が進む中山間地に、都市部などの人材を誘致し、地域の活性化につなげようという取り組みだ。任期は1年、最長3年で、住宅は市が用意する。

浜松市南区に実家がある水野さんは、2020年から「浜松山里いきいき応援隊」として、引佐地区に移住し、シカやイノシシなどの害獣駆除の他、田植えや草刈りなどを支援して、年配の住民から「同僚」「友達」として愛されていたという。
市によると、水野さんは「やりたいことが見つかったから」と地域おこし協力隊は2年間でやめたが、自分で家を見つけ引佐地区に住み続けた。

鈴木櫻子記者:
災害現場から1人が発見され一夜があけました。近くには献花台が設置され花が手向けられています
土砂崩れが襲った家には、2022年4月から住んでいた。

水野さんの知人:
すごく優しい人で、人にも気遣いできる方。お酒飲みに行く時は率先して手をあげて運転手をしてくれました。ここ(引佐地区)がいいと言っていた。水もいいし、空気もいいし、環境がすごく気に入っていたみたいでした
「息子はこの地区が好きで楽しそうだった」
その早すぎる死に、住民たちは悲しさと悔しさをにじませていた。

地元の男性:
これから頑張ってくれると思ったが、まさかこんなことになるとは思わなかったです
地元の女性:
本当に惜しい人を亡くしました。これからという時にかわいそうでした

4日現場を訪れた水野さんの家族は、「息子はこの地区が好きで移住し、毎日楽しそうに、忙しそうにしていた。まだ実感がわかない」と話していた。
前年の台風に続き堤防が決壊

今回の大雨では磐田市を流れる敷地川の堤防が再び決壊し、多くの住宅が浸水した。なぜ2022年の被害の対策工事で防げなかったのだろうか。

4日は国土交通省の派遣隊が入り二次災害の防止、早期復旧について県や市に技術指導した。

国土交通省・中部地方整備局 河川部 平野浩二建設専門官:
今回カーブをえがいているところなので、おそらく「洗掘」ということで、堤防の下が掘られた勢いで堤防が壊れた、堤防が掘られたという形になります。とり急ぎ、現堤防をなおしていく、緊急的に高さを戻すことで考えている
病院浸水で医療機器が水没

また磐田市と同じ「緊急安全確保」が発令された、静岡県沼津市の「きせがわ病院」では、近くを流れる川が氾濫し院内に浸水した。

利用者は事前に避難し無事だったが、医療機器や配電盤が水没し、電気が一部使えない状況になった。
きせがわ病院・塩田美佐代 看護・介護統括局長:
(窓やドアの)すき間からこんなに(水が)上がってきていたので、ここまで来るのにほんと数分でした。ものすごい速さです。電気が来ないと無理。(Q.復旧の見込み立たない?)まだ見込みは立っていないです(6月3日時点)
出水期になったばかりで受けた大きな被害。
線状降水帯の恐ろしさを、改めて思い知らされた。
(テレビ静岡)